オレは魔術書を手に入れた

　オレは魔術書を手に入れた。
　ページをめくる。
　呪いと復讐の呪文が載っていた。
　覚えた呪文を隣町のあいつに向けて唱えた。
　毎日唱え続けたが効き目がなかった。
　もう一度魔術書を見た。
　最後の最後に「効き目は半径1メートル以内」と小さく書かれていた。
　オレは魔術書をびりびりに引き裂いた。


　オレは魔術書を手に入れた。
　ページをめくる。
　変身の術が載っていた。
　変身とその解除の呪文を覚えて試してみた。
　試しにオレは凶暴なグリズリー（ハイイログマ）に変身した。
　満足したオレは解除の呪文と唱えようとした。
　しかし、熊の口では発音が全然できなかった。
　何度やっても「おうおうおう」としか声が出なかった。
　オレは魔術書をびりびりに引き裂いた。


　オレは魔術書を手に入れた。
　ページをめくる。
　究極の滅びの呪文が載っていた。
　その呪文を覚えたオレは、この世界の破壊神となったのだ。
　最後に「この呪文、心して用うるべし」と書かれていた。
　オレは気を集中し、心を邪悪に満たして唱えた。
　効き目があった。
　オレが滅んだのだ。
「この呪文、心して用うるべし」は覚悟しろとの事だったのだ。
　オレは魔術書をびりびりに引き裂く事もできなかった。