2020年のオリンピックに向け都が整備に着手している施設の内、3競技会場の抜本的見直しが話題になっています。3競技会場とは、ボート、カヌー・スプリント会場「海の森水上競技場」(東京湾中央防波堤)、水泳会場「オリンピックアクアティクスセンター」(江東区)、バレーボール会場の「有明アリーナ」(江東区)です。
小池百合子東京都知事は「ランニングコストも考えた上での報告書で、重く受け止めたい。負の遺産を都民に押し付けるわけにはいかない」と述べています。この小池知事の発言のキーワードは「負の遺産」です。一方、オリンピック憲章では、この遺産という言葉に関して次のように記載されています。
14. オリンピック競技大会の有益な遺産を、 開催国と開催都市が引き継ぐよう奨励する。(14. to promote a positive legacy from the Olympic Games to the host cities and host countries;)
(オリンピック憲章 第2章オリンピックムーブメント 2 IOCの使命と役割 14)
つまり、競技会場を整備すべきかどうかは、当該施設が「有益な遺産」(positive legacy)か「負の遺産」(negative legacy)かにかかっています。この判断で重要となるのが、施設の有効性と効率性の検証です。まず、施設の有効性とは、施設建設の成果が十分に発現されているかという視点で、具体的には住民満足度や年間観客数、稼働率で測ることができます。次に、施設の効率性とは、その成果に対して最少の経費・労力で施設が維持されているかという視点で、具体的には来場者1人当たりコストなどで測ります。スポーツ施設などの大規模施設は、建設費だけではなく、毎年度莫大な維持管理コストがかかります。したがって、当該施設は毎年度十分な成果が期待できるか、またある程度の成果は期待できるがそれがコストに見合ったものであるかについて十分な検討が必要なのです。
「有益な遺産」(positive legacy)か「負の遺産」(negative legacy)の判断は、慎重に行う必要があります。