民間企業のように、独立行政法人や国立大学法人においても、その業務活動状況を知りたいと思うことは、内外の利害関係者にとって当然のことです。業務活動状況を示す財務諸表としては、「損益計算書」と「行政サービス実施コスト計算書」(国大の場合、「国立大学法人等業務実施コスト計算書」(以下、「コスト計算書」と言います。))の2つがあります。いずれもも、収益と費用を計算し最終的に利益(コスト)を算出する計算書です。
では、違いは何でしょうか。ごく簡単に言うと、「損益計算書」は「費用」と「国からの運営費交付金を含む収益」の差から「利益(コスト)」を計算します。一方、「コスト計算書」は「費用」と「国からの運営費交付金を含まない収益」の差から「コスト」を計算します。
この違いは、損益計算書の場合あくまで独法(国大)を単体で見た計算書で、一方コスト計算書は独法(国大)と国を一体と見た計算書という点にあります。単体で見る損益計算書の場合、国からの運営費交付金も外部からの資金であり収入です。一方、コスト計算書は独法(国大)と国を一体とみますので運営費交付金は独法(国大)にとっては収入でも国にとっては同額の支出となり、結果的に差し引きゼロでコスト計算書には反映されません。コスト計算書が独法(国大)と国を一体とみる意味は、国民にとって独法(国大)がどの程度の費用(つまり税金)をかけて運営しているか示すことにあり、この場合運営費交付金は全く関係ないものだからです。
いずれにしても、損益計算書、コスト計算書の存在意義は、組織の効率性の程度を示すことにあります。しかしながら、特に独法の場合、運営費交付金の会計処理の関係で(業務達成基準となっても損益均衡の考え方は継続)、利益はあまり意味のないものとなっています。一方、コスト計算書のコストは意味を持ちます。例えば、そのコストを生徒数で割れば、生徒1人当りコスト(その大学は生徒1人にどれくらいの税金をかけているか、)がわかり、人口で割れば国民1人当りコスト(その大学は国民1人当りどれくらいの税金が投入されているか)がわかります。
損益計算書を今以上に役立つものとするために、今後も工夫が必要です。