2025/01/15 wed
前回の章
インターネットカジノ『牙狼GARO』の人気メニューのオムライス。
ルパン三世のようなもみあげをしたキャッチ真野は、新規客を連れてくる度に「死ぬ前に、ここのオムライスを食べられれば杭はない」と豪語する。
客を紹介し終わったら、いつまでもダラダラしていないで、とっとと帰れやと思うので、そんな風に言われてもまったく嬉しくない。
半熟卵タイプのオムライスは、俺の好みではないので通常のオムライスを提供している。
「岩上さんなら、何か凄いオムライス作れそうですよね」
「オムライスに凄いもクソもないでしょ」
「今日比較的暇だし、ちょっと違ったオムライスをやってみて下さいよ」
谷田川がしつこいので究極オムライスを考案してみた。
濃厚なトマトソースを作ってみる。
ソースだけでなく中のチキンライスもいつもの材料よりはチーズなどを加え、若干豪華目に作ってみた。
「どう? 一応こんなの作ってみたけど」
「いやー、いいですよ! これをうちの店のオムライスにしましょうよ」
「絶対に嫌だ」
「何でですか?」
「トマトソースを事前に俺が大量に作るようでしょ? これ以上面倒な仕事を増やしたくない」
話していて喉に違和感があった。
昨夜喉が痛くて扁桃腺腫れているのに、朝方まで飲んでしまう。
そのせいか、今日は喉がパンパンに腫れ上がり、水を飲むのも一苦労……。
だから新宿に着いてから薬局行き、喉の薬を買った。
『ルル スプラッシュ』と『ペラックT錠』の二つ。
喉にシュッシュってやったら、随分楽になった。
数年前伊佐沼クリニックで喉を切ってから、しばらく大丈夫だったんだけどな……。
少し時間を置いては喉に薬を振り掛ける。
まあ帰ってゆっくり睡眠を取れば、その内よくなるだろ。
数日前から原因不明の扁桃腺が腫れ。
今ではほとんど喉が塞がったような感じだ。
浅草ビューホテル時代、仮眠室で寝ていて腫れ上がった喉。
俺は若い頃これで二度入院している。
あの時は抗生物質の点滴を打って治した。
しかし年に一度くらいのペースで喉は腫れ、病院へ行きその都度点滴を打って凌いだ。
巣鴨警察にパクられて釈放されてすぐ、似た現象が起きた。
その時は伊佐沼クリニックへ行き、時田先生が喉をレーザーメスで切ってくれ一気に良くなった。
二千五年だからもう六年以上前になる。
あれ以来、喉も普通だったのにな……。
この状態の何が苦しいかといえば、まず飲み物はおろか、唾液すら飲み込む事が困難である事。
腫れた喉に触れるだけで、何とも言えない激痛が走り、その喉の奥へ水分や食べ物を送り込むのをやめたほうがいいと、本能的に思ってしまうほどの痛み。
声もほとんど出なくなり、客相手に話をするのも困難。
二十四時間、食事も水一杯すら胃袋に入れない生活。
先日休んだはかりの俺。
従業員のシフトの都合もあり、仕事は休めない。
熱もあり、三十八度を記録する体温計。
栄養不足、気だるさ。
意識が朦朧としてきた。
ホールを歩きながら、その場で倒れてしまう。
「岩上さん! 大丈夫ですか?」
渡辺が肩を貸してくれ、奥の椅子に座る。
「…、ぁ…、ぁり……」
駄目だ、声がうまく出ない。
俺はメモ用紙に『ありがとう、ちょっと休んでいれば大丈夫』と殴り書き、渡辺へ見せた。
双子のゆかが近くへ駆け寄ってくる。
「ねえ、パパ! 大丈夫なの? さっき倒れていたよね?」
俺は先ほど書いた紙を見せる。
「ねえ、返事してよ!」
「……」
声が出ないからしょうがない。
手で自分の席へ戻れとジェスチャーするのがやっとだった。
猪狩が近付いてくる。
「岩上さん、具合悪いのは分かりますが、ティッシュ配りの交代時間です。申し訳ないですが、外へ行ってもらえますか?」
この言葉に従業員は顔を見合わせて驚いている。
凄いな、さすがグレート猪狩。
この状態の俺に対し、外へテイッシュ配り行けか……。
渡辺が猪狩に文句を言おうとするのが見えた。
俺は何とか立ち上がり、肩に手を掛けて止める。
そしてそのまま店を出た。
寒いなあ……。
壁に手をつき、何とか身体を支える。
ちょっとヤバいかも……。
いやいや…、レスラーは何をやられても壊れちゃいけないんだっけ。
そうですよね、鶴田師匠。
エレベーターで一階まで降り、谷田川とティッシュ配りを交代する。
谷田川は心配そうな顔で「岩上さん、やめたほうがいいですって。顔色が悪過ぎますって」と気遣ってくれるが、俺にも意地はあった。
メモ用紙に『心配するな。頑張るよ』とだけ書き、それを見せる。
「俺が代わりにやるから上で休んでていいですよ」
谷田川の背中を押す。
気遣いなど無用。
彼を強引に上へ行かせると、意識が朦朧としてきた。
駄目だ、立っていられそうもない。
俺は地面に座り込み、寒さから身を守るように身体を丸める。
症状は日々悪化していくばかりだった。
今日をしのげば連休だ。
頑張らなきゃ……。
前田が交代の時間になって声を掛けられるまで、半分意識を失っていた感じだった。
店へ戻り、業務をやろうとするも、腫れ上がり過ぎた喉が常に吐き気すら覚え、強引に吐こうとトイレへ駆け込む。
胃袋の中には何も入っていない為、出るのは胃液のみ……。
「……っ!」
ピシッという感覚を吐きながら感じると、ドロッとした赤茶色の液体が透明な胃液と一緒に体内から流れ出てきた。
まさか血?
いや、それにしては少し色合いが違うような……。
その赤茶色の液体は、すべての毒素を含んだような腐敗臭を漂わせ、それを少しずつ吐くだけでも、その臭いにうんざりするような感じである。
…がしかしどうだろう。
あれほど苦しんだ症状が一気に良くなっていくのが分かった。
俺は一度ホールへ戻り、右手人差し指の爪の先端を尖らせるように切る。
再びトイレへ戻り、喉の奥へ手を入れて爪の先端で切った。
大量に出る血と膿のようなもの。
血のようなものを強引に吐き出す事によって、一番の原因となっていた毒素まで吐き出せたのだろう。
一時間もしない内に声も出るようになってきた。
ふむ…、明日明後日と休みであるが、最悪医者行かなきゃと思っていたけど、もう大丈夫だな……。
我が肉体は医学すら超越したのかもしれない。
蘇った肉体。
うん、普通に身体が動く。
もう怠さも吐き気も無い。
猪狩はしれっとキャッシャーに座っている。
仕事が終わり、着替えを済ませると「おまえ、ほんとどうしょうもねえ奴だな」と猪狩に向かって口を開く。
「え…、どういう意味ですか?」
「自分のした事が自覚できないなら、おまえはそれでいいよ、このボケが」
仕事関連じゃなかったら、とっくにぶっ飛ばしているだろう。
帰り道、渡辺が駅まで付き添うと言って着いてくる。
「もう大丈夫だって」
「いや、今は少し良くなったみたいですが、今日の岩上さん死にそうな顔していましたよ。猪狩さんもあんな状態なのに寒空の中ティッシュ行けって、頭おかしいのかと思いましたよ」
「俺が弱っているなんて珍しいから、強気で自分の存在をアピールしたかったんでしょ」
「あの時岩上さんがとめなかったら、自分怒鳴りつけているところでした」
「ありがとう。その気持ちだけで十分嬉しいよ」
二日間の連休は、病み明けというのもあり、部屋で大人しく過ごす。
もう喉の異変は無い。
またなったとしても、この指で喉をちょろっと切ればいいのだから、そう問題は無いだろう。
思わず猪狩へ怒鳴ってしまったが、あの店へ残留する形になったのはやはり間違いだったんじゃないだろうか?
ミクシィでこの心境を記事にしてみる。
矛と盾と書いて『矛盾』……。
そもそもの語源は中国戦国時代の法家である韓非の著書『韓非子』(かんぴし)の一篇「難」に基づく故事成語。
「どんな盾も突き抜く矛」と「どんな矛も防ぐ盾」を売っていた楚の男が、客に「その矛でその盾を突いたらどうなる」と問われ答えられなかったという話からきている。
仮にどちらかのものが勝った場合「どんな盾も突き抜く矛」と「どんな矛も防ぐ盾」の理屈が成り立たなくなってしまう。
故に話の辻褄が合わない事を『矛盾』と呼ぶようになった。
何故そんな事を急に記事にしたかと言うと、四十歳になった自身がふと思った件と、先日感情的になってしまった自分がいた事を改めて考えてみたかったから。
当時二十歳ぐらいの若造だった俺が、たまプラーザにあった全日本プロレスの合宿所へ行った時、今は亡きジャンボ鶴田師匠と初めて出会った。
その時自身が感じたものは、何て器が大きな人なんだろうという感謝だった。
四十になって、何故俺はあの時「器が大きいと感じたのだろうか?」とふと考えるようになった。
あの当時自暴自棄になっていた俺に対し、鶴田師匠は一人の人間として普通に親切に接してくれた。
その一件で、器が大きい…、と感じたわけであるが、思い返すと力も何もない自分を暖かく向かい入れてくれたという優しさが自身の心を打ったからなのだろう。
あらゆる事柄を笑顔で受け入れる姿勢。
そこに俺は器が大きいと素直に感じられた事実。
今…、そこへ気付けたなら…、俺自身があの姿を羨ましいと思えたならば、どうして現状の自分が見習えなかったのだろう。
そんな後悔もあった。
鶴田師匠と自分は全然違う。
そう思って今まで生きてきたが、いい加減いい方向で自分を変えてもいい時期なんじゃないかと、ちょっとした心境の変化があった。
もういい年だと言われるぐらいまで生きてきたのだ。
少しずつでもあらゆる物事を受け入れられるような心の広さを持とう。
だが、現状で生きている自分はまったく違った。
ちょっとした事でストレスを感じ、イライラを覚え、感情を爆発させぬよう我慢をしていたが、結局のところとある一件でそれが爆発し、感情を吐き出してしまう始末。
一度流れ出した感情は熱を持ち、なかなかその熱は下がる事がない。
理想といたい自身の姿と、今の自分の姿が非常に反比例している。
だが、今の自分の姿もある意味自身の理想系でもある。
最強の剣でいたい自分と、最強の盾でいたい自分……。
常にそこには『矛盾』というものが発生している。
仕事終え部屋でゆっくり寝たら、声が普通に出るようになった。
猪狩を除く遅番の従業員たちには本当に感謝をしている。
弱った時の優しい気遣い。
それにしても俺の肉体が強靭でなかったら、あの時外で下手したら死んでいてもおかしくなかっただろう。
猪狩は何故あそこまでボンクラなのだ?
頭がおかしいだけでは、あのような命令などできないはず。
奴なりのプライドから、あんな馬鹿な指示を飛ばしたのか?
仕事中、あまり気にしないようにしていたが、やはり猪狩の下で働いていくのは無理かもしれない。
病み上がりというのもあり、家でのんびり過ごす。
世間ではクリスマスイブ。
岩上整体の時、百合子と別れた日でもある。
始めて間もない頃だから、二千六年。
今が二千十一年だから、もうあれから五年の月日が流れたのか……。
あの時の百合子の気性を思い出すと、今でもげんなりする。
トラウマになっているのかもな。
そういえば喉の一件でほとんど胃袋に食料を入れていない。
一階へ降りて、台所で料理を始める。
写真を撮りながら、あとでミクシィの記事として載せようと思った。
途中叔母さんであるピーちゃんが降りてきて「私が使うからどけ」と横暴な事を言ってきたが、無視して料理を続ける。
この手の人間は話をしても無駄だから、相手にしないのがいい。
耳元で怒鳴ってくるので、蝿でも払うよう手で払う。
何を言われても気にするな。
弟だった貴彦を内緒で養子縁組までして何かしらを企んでいる人間。
そんな者に対して理解などしようとしては、こちらの頭がおかしくなる。
俺はこの家の長男。
それは川越の誰がどう見てもそうなのだ。
嫁にも行かず、ただ家の三階エリアを一人で使って住んでいるピーちゃん。
もはや狂人のレベルである。
しつこく耳元で大きな声を出しているが、気にしてはいけない。
料理をすべて作り終えて、大きな弁当箱の容器に飾り付ける。
使い終わったフライパンなどを洗わずそのまま放置して「これ、洗っとけ」と言い残し階段を上がった。
背後から怒鳴り声が聞こえたが、無視して部屋へ行く。
さて、食べる前にミクシィで記事を書くか。
二千十一年十二月二十四日
お献立
■オムライス
■焼きそば
■味卵&焼豚
■チーズ&ハム
■シナチク
純粋に料理だけのシンプルな記事。
俺は胃袋に作った料理を詰め込む。
夜になると、携帯ゲーム機のニンテンドーDSを持って風呂場へ行く。
もう湯船の風呂栓を隠す加藤皐月もいない。
バスタブに熱いお湯を張っている間、剃刀で髭を整える。
ほんの数カ所白髪になっているところがあった。
俺は髭の部分に部分染めを塗り、ゲームをしながら湯船に浸かる。
あー、のぼせてしまう……。
ゲーム機を持ったまま、風呂場の椅子に腰掛けてゲーム。
身体が冷えると再び湯船に入る行為を何回も続けた。
気付けば何時間か経っている。
染めた部分を洗い流そうとすると、まるで取れない……。
ヤバいだろ、これ……。
俺はミクシィでこの事を記事に書き、みんなの意見を求めた。
おはよーございます。
えーとですね…、実は夜中の三時頃からお風呂入ってて、ニンテンドーDSをしていたんですね。
…で、湯に浸かり出て、身体が冷えたら入ってを繰り返しながらDSをしていたんですが、途中で髭の部分を染めてみたんです。
部分染めってやつなんですが、液体を塗って放置しながらDSやっていたら、二時間ほど経っていて、そろそろ汚れを落とそうじゃないかと思ったら、顔の皮膚についた黒い汚れが落ちないんです!
もちろん色々試してみました。
・アカスリでゴシゴシ擦っても駄目
・石鹸で何回洗っても駄目
・ビオレを使っても駄目
・リンスでならとやってみても駄目
・軽石でゴシゴシ擦っていたら、皮膚からちょっと血が出てしまい、それなのに汚れがあまり落ちていない
・汚れは落ちないけど、肌はいつもよりツルツルになりました
…とこんな凄惨な状況が続いていたんですが、未だ顔についた黒い汚れは落ちていないので、外に出られません。
誰か、この汚れを落とす方法を教えて下さい。
お願いします。
様々な意見は届いたものの、染み込んた肌がよくなる事は無かった。
結論としてはクレンジングオイルなどを塗り、徐々に落とす。
肌に繊維が染み込んでしまったらしいので、肌の新陳代謝で何とか再生を待つしか方法はないみたいだ。
朝になり、ミートソースを作り始める。
昨日の夜使ったフライパンなどはそのままになったいたので、仕方なく自分で洗う。
「智一郎、おまえは朝から何をしてるんだ」
「あ、おじいちゃんおはよう。ミートソース作ってるの。食べる?」
「いや、ワシはいいよ」
早速料理に取り掛かる。
玉ねぎの微塵切りから入り、フライパンにオリーブオイルを引いて豚挽き肉と玉ねぎを炒めた。
トマトホルダーの缶詰を入れ、調味料で味を調整。
大き目の鍋に湯を張り、そこへパスタを茹でる。
ソースの基本はトマトと挽肉、そしてブイヨン、調味料の組み合わせ次第。
幼少の頃から通っているジミードーナツのミートソースのように。
麺はアルデンデ状態で取り出す。
フライパンでオリーブオイルと絡め軽く炒めた。
ミートソースの完成。
ソースはタッパに入れて、明日店へ持っていこう。
従業員たちに分けてやろう。
昼になり同級生のゴリから連絡が入る。
政治結社の朋香と別れたゴリは孤独なクリスマスを送っていたようで、昼飯を一緒にどうかと誘う。
多分飯野君も暇したいるだろうと連絡。
中学時代の同級生の男三人で、クリスマスのランチは近所のプージャにてインドカレーを食べに行く。
大きなナンやサフランライスはお代わり自由。
これで千円しないのだから、とても良心的な店である。
万代書店 川越店 - ワクワク!ドキドキ!ネットじゃできないリアルエンターテイメント!リサイクルストア万代書店
その後車で、国道二五四線沿いにある万代書店へ向かう。
クリスマスだというのに独り寂しく無料ゲームに没頭しているゴリの隠し撮りに成功。
違う角度からも一枚欲しいな。
「岩上、テメー何をこっそり人の写真撮ってんだよ!」
ベストショットを撮ろうとして、ゴリに見つかってしまう。
先日お騒がせした毛染め事件。
かなり染まった肌は色が取れた。
落ちない汚れを軽石でゴシゴシ擦ってしまった時の傷になった部分が残る程度になる。
帰り道、先輩の櫻井さんが営む櫻井商店で大粒の美味い苺をもらう。
ここの苺、本当に大きくて旨いんだよな。
岩上整体時代、今となっては去ってしまったみゆきがこの苺を好きで、よくあいつのマンションへ持っていってやったっけ……。
クリスマス明けの翌日、俺は作っておいたミートソースを持って出勤。
従業員たちはそれを見て歓喜の声をあげた。
大量に作ったので数日分は持つだろう。
二日目だがミートソース、そしてチーズ入りコンソメロールキャベツを作る。
ついでにロールキャベツと過程は変わらないので、ミートソース掛けチーズハンバーグも作った。
キャベツを予め茹でておくと、肉を包む際楽にできる。
ハンバーグもロールキャベツも中の素材はほぼ同じ。
豚挽き肉に小麦粉、パン粉、卵に様々な調味料を入れ捏ねるだけ。
練れば練るほど旨味が増す。
喉の時みんなに迷惑掛けちゃったからな……。
真心込めて捏ねた。
野菜やベーコンを入れて、コンソメスープを作る。
キャベツの葉に包む際、挽肉の中にチーズを入れてみた。
あとはコンソメスープと一緒に煮込むだけ。
蓋にして弱火でじっくり煮込む。
ハンバーグはフライパンで焼くだけ。
表面を焼いたらアルミホイルに置いてチーズを乗せる。
ミートソースを上に掛け、あとはアルミホイルで包み込むだけ。
形を崩さないようその点だけ気をつける。
うまく包んだら、オーブンで焼く。
隙間を無くせばある程度時間、オーブンで焼いても焦げ付かない。
三十分ほど蒸し焼きする。
当然猪狩の分は作っていないが、谷田川、渡辺、前田へハンバーグの包み焼きを出す。
そしてロールキャベツのコンソメスープもつける。
みんな、歓喜の声をあげて喜んだ。
こんなクソのような店で俺が何とか続けて働いているのは、彼らが俺に対して懐き、料理を絶賛してくれるからだろう。
こんな日常と仕事を過ごしながら、俺は二千十一年を終えた。