榊(さかき)を詠んだ歌
万葉の時代も、「賢木(さかき)」と呼ばれています。
万葉集/巻3-0379 作者/大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいらつめ)
ひさかたの 天(あめ)の原より 生(あ)れ来(き)たる 神の命(みこと) 奥山の 賢木(さかき)の枝に しらか付く 木綿(ゆう)取り付けて 斎瓮(いわいへ)を 斎(いわ)ひほりすゑ 竹玉(たかたま)を しじに貫(ぬ)き垂(た)れ 鹿(しし)じもの 膝(ひざ)折り伏して たわやめの おすひ取りかけ かくだにも 我(あれ)は祈(こ)ひなむ 君に逢はじかも
【意味】高天の原の昔から 生まれ継がれた神々よ
山の奥から伐り出した 榊の枝に木綿(ゆう)つけて
土に穴掘りお供えの 聖なる甕(かめ)を据(す)えつけて
竹玉いっぱい緒に垂らし 鹿のようにひざまづき
神事の衣装身にまとい これほどまでに祈っても
私は愛しいあの人に まだまだ逢えないのでしょうか
※枕詞:ひさかたの、しらか付く
※「木綿」楮(こうぞ)の皮の繊維で作った糸。
幣帛(へいはく)として榊などにかける。
※「斎瓮」神に供える酒を入れる器。
※「竹玉」細い竹を輪切りにして緒に通した小玉。
※「たわやめ」しなやかな女性。
※「おすひ」上代の神事の衣服。
※写真は、「榊」/無料(フリー)写真素材を使用。
万葉集には、植物を詠んだ歌が約千五百首もあるんだそうです。
万葉に読まれた植物と歌を少しですが、紹介したいと思っています。