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『コンテンツの秘密』 (川上量生著、NHK出版新書、2015年)

2015年06月10日 | 書評
サブタイトルは「ぼくがジブリで考えたこと」。
著者の川上量生氏はジブリでプロデューサー見習いをやられてるのですね。

(1) コンテンツの本質

現実世界を特徴だけでなく特徴だけで単純化してコピーした脳のなかのイメージの再現。

私の補足を入れると、「現実世界」は心象世界も含んでますよね。

(2) クリエーターとは?

コンテンツ、つまり脳のなかのイメージの再現する人のわけだけど、すべて過去の経験をいったん自分の中に取り込んで、それをヴィジョンとして脳の中に再現したものを表現する人。

で、「オリジナリティ」なんですが、一般的には付加価値のように「プラス」のイメージで捉えられる場合が多いと思います。
が、川上氏は、クリエーターがヴィジョンを表現するとき、能力的な問題で正確に再現できないため、オリジナリティが生まれているように見えるだけだと考えているのは、とても新鮮な視点だと思います。
「オリジナリティなんてそんなご大層なもんじゃねぇんだよ」と、私がこう書くと気分を害されるクリエーター・アーティストさんもおられるかもしれませんが(そんなことは私も百も承知です・・)、こういう相対的な視座も必要と私は考えます。
そこで「プロデューサーとは?」となるわけです。

(3) プロデューサーの重要な役割は?

クリエーターほどコンテンツに思い入れのない観客(ユーザー)に対して、普通の観客の目線に引き戻すこと。(鈴木敏夫氏)

これって、クリエーションの世界だけでなく、一般のビジネスの世界でも重要じゃないかと私は思います。
ディレクターもですけど、プロデューサーが。
プロデューサーって、予算や時間・タスクの管理だけをする人じゃないんですね。

故 佐久間正英氏(音楽プロデューサー)もほぼ同じ思想であられたと思います。
作品を「マスに受け容れられるよう商品化する」。
オリジナリティにいかにポピュラリティーをまぶせる、といった感じでしょうか?

(4) その他諸々

・主観的情報量と客観的情報量は、本書を通底する重要なキーワードです。

・物事を記号化して少ない情報量で表現したものが「本質」の本質。脳は単純な情報しか扱えない。

「おそらく人間の脳には、対象物の法則性を認識し、複雑なものを簡単な要素に分解できたときにうれしくなる回路が存在していて。それがコンテンツを「いい」と思ったり「美しい」と思ったりする根源なのではないでしょうか?」(川上氏、123ページ)

・UGIサイトでユーザーが無料でたくさんコンテンツを創るから、競争の質は上がるし、多様性もあるというのは嘘で、競争を行えば行うほど多様性は減っていく。ソーシャルゲームがそのいい例。

⇒ コンテンツの多様性を守るためには激しい競争をしてはいけない。

・クリエーターは、パターン化されやすくパターン数も少ない「ストーリー」より、「表現」にこだわる傾向が強い。映像に合わせてストーリーをつくる宮崎駿氏は、いいシーンが描けなければストーリーを削ってしまうことさえある。

・ハリウッドの映画監督の優先順位は、キャラクター→ストーリー→世界観。あるいはストーリー→キャラクター→世界観。対して押井守監督の場合は、世界観→キャラクター→ストーリー。

・『となりのトトロ』のヒットの理由は、昭和の原風景とか、現代人の自然回帰欲求などの難しいことではなく、トトロのお腹がフワフワしていて、なんだか触るとへこんだりして気持ちよさそうだったから。(鈴木敏夫氏)

コンテンツの秘密 ぼくがジブリで考えたこと (NHK出版新書)
川上 量生
NHK出版


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