『上書きされない恋』
上書きされない
恋の残骸
あちらこちらに
散らばったまま
陽の光すら
浴びることなく
切ない程に
埃りまみれ
上書きされない
恋の残骸は
もう二度とは
訪れないかもしれない
書き換えられる時を
ただじっと待っている
翳る部屋の
片隅で
※書き下ろ詩
『僕の空』
水たまり
映る空
車椅子でさえ
跨げてしまう
そんな
とても小さな世界
もう多くは求めない
求めたくはない
今の僕には
この空でいい
この空が
ちょうどいい
※書き下ろ詩♪
『我は神鳴りの子』
別雷〈ワケイカヅチ〉は
若い元気な雷様〈ライサマ〉の事と言う
その足許で生まれ
育った私
気付けば雷に
異常な程の興味を示し
ひとたび嵐が来れば
心奪われて止まない
近頃はいくぶん
雷様の鳴り様も変わったけれど
変わらず
今日も
神鳴りの街に
神鳴りの子在り
雷様があと何度か
季節変えの太鼓を叩けば
ほんとの夏が
やって来るね
※某アプリ内に書き下ろしたもの。