年末に縁あって飯坂温泉に行ってきた。といっても泊まりではない。ただの日帰り。
JR福島駅から私鉄の福島交通飯坂線の電車で23分。わずかの距離で温泉の中心部に。
行ってみて、その寂れように驚いた。
私の勝手なイメージでは、見番(けんばん・これも死語?)があって、着飾った芸者衆が小走りに次のお座敷を
目指しているという感じだったが、駅に出迎えの宿の番頭さんに聞いたら笑われた。
「そりゃ50年前の話ですわ。今は派遣会社からコンパニオンを呼ぶだけ」
旅行会社の知人に聞いても、「あそこにはスーパーコンパニオンはいないよ」
みなさん、意味はわかりますね。
地震と津波のせいで、現実には半数近い宿が廃業または営業休止の憂き目に。
そこここに廃墟と化した残骸が無残な姿をさらしているだけ。
それでも駅前の観光案内所で資料をもらい、そぞろ歩きを開始した。
最初は共同浴場を攻めよう。最も近い「波来湯」(はこゆ・300円)は満員で入れなかった。
やむなく5分ほど歩いて「鯖湖湯」(さばこゆ・200円)へ。受付で入浴料を払って入場。
ところが熱くて入れない。源泉のまま47度の設定で、シャワーもない、カランもない。
とにかく埋める水がないのだ。浸かるだけならなんとかなるが、ここで体を洗うのは無茶。
移動と決定。外へ出ると、松尾芭蕉が入浴したのはここだとの表示が。
まあ、300年前に今風の本格的な温泉宿があるわけもなし。
使った風呂がたまたま沸かしでなく温泉だった程度と理解しよう。
今度の移動先は温泉旅館「花乃湯」(入浴料500円)。
「フロントは4階なので、階段で1階に降りて下さい」大浴場というよりは中浴場という趣。
でもここは落ち着く。開かれた窓の向こうは川で、開放感が一杯。
シャワーもカランも当たり前についた普通の風呂場だ。サウナまではないが。
無色透明無臭の単純泉。ペーハー8.3とアルカリ度が高いのが特徴。
お湯は文句なし、朝9時から入れるのも良い。
今日は泊まりは満員とのことだが、ふだんの日は7000~10000円くらいで一泊二食にありつける。
十分お奨めできる家庭的な宿だ。
そろそろ昼時なので、何かつまむかとなった。案内所に戻り、開いてる食べもの屋を教えてもらう。
①ラーメンの万来 ②カツ丼屋 が営業中とのこと。
「たしか『そばや』もありましたね」
「あそこは組合に入ってないので、ご紹介はできないけど開いてるのは確か」
酒を飲むのが目的なので、そばやに入ることにした。同行者はビール大ビン600円。
私は「なめこざる」1000円と燗酒400円。銘柄は「花春」だった。
会津若松の花春酒造。器が古いガラス瓶。これが渋い、今じゃどこにも売ってない?
そば屋を後に、駅前の橋の上に。
対岸に見える木造の廃墟は、おお、あれこそ「千と千尋の神隠し」に出てくる
温泉宿のイメージにぴったり。「ゆーばあ」が出てきそう。
ささやかな小旅行はこうして終わった。(2012.2.16記)
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