青山墓地に行きたい

我が家の墓は青山墓地にある。
というと如何にも金持ちや有名人のように思われそうだが、そんなことはない。
あれは要するに都営住宅の一種なのだ。
ウチのように江戸時代から浅草に住んでいた人種には、明治の初め最も
安く墓を入手する最善の方法だっただけである。
大工の棟梁をしていた曽祖父（三代前）の話では、その母親（四代前）
に泣かれたという。
「青山なんて、あんな狸や狐のでるド田舎にどうやってお参りすりゃい
いんだい？クルマ（人力車）でも１時間はかかるのに」
たしかに当時の青山は旧江戸市中とはいえ、旗本青山家が撤退した後に
は寺しか残っておらず、人家は大山街道（今の国道246）沿いに
パラパラとしかなかった。
浅草から行くのはおおごとだったろう。
今のように地下鉄一本というのとはわけが違う。
あのバアサンが今の青山を見たら卒倒するだろう。
伊藤忠やHONDAの本社に、最近ではオラクルまでやってきた。
高価なブランド品を身につけた女性が闊歩する街。
文句を言った本人も今はそこで満足して眠っている。
もちろん土葬だ。人魂が飛んでも全然おかしくない。
そんな墓地だが、先年久々に公募があり、結果にはあきれるばかり。
２坪ほどの区画の使用料を１０００万円という条件に競争率５０００倍
だったという。
なんならウチのを譲ってあげましょうか。１００万でＯＫ。
といっても所有権ではないので、売買は絶対無理。
わずか130年前の出来事でした。
ちなみに浜崎あゆみサンが買ったのは隣りの梅窓院（旗本青山家の菩提
寺）の墓地。1000万以上は軽くかかったはず。
エイベックスも近い。
私？　墓参りなんて一度しか行ったことはありません。
もう、この、罰当たりめ。（2010年）