古沢和宏著「痕跡本のすすめ」太田出版、2012年、1300円+税 を読んだ。
まったく、私と同じ趣味の人がこんなにいるのかとあきれた。
本を読むより、書き込み等を追跡する方が楽しいなんて、いかにも邪道だ。
でもその通りなのだから仕方がない。
詳細は本書を読んでいただくとして、私の最近のヒットを挙げよう。
斎藤忠著「イエス・キリストの謎と正体」日本文芸社、1995年、1000円
入手先はもちろんブックオフの100均コーナーである。
斎藤氏はキリスト教という「イデオロギー」にほとんど毒されていないとみえ、
古今東西のイエス論・キリスト論をあまねく公平に紹介した上で、さあどうすると読者に
問いかけるスタイル。
私のように「史的イエス」と「信仰のキリスト」は全く別物と学生時代に叩き込まれた者としては、
勉強になることは間違いないのだが、ほて本書の前所有者はどうだったか。
本を開けば、すごいの一言。
赤と緑とオレンジとピンクのボールペンで、アンダーラインと、欄外への書き込み、
難読漢字へのふりがなのオンパレード。
とにかく無傷のページなど全くない。
よく勉強したとみるか、
まあ見事に何も知らなかったと判定するか、
そこは微妙だ。
たとえば、
①地図でガラリア(ガリラヤの誤りか)をエルサレムの南方に記入している
②捏造(ねつぞう)にふりがな
③生命力に溢(あふ)れる逞(たくま)しいにふりがな
④癒(いや)すにふりがな→なおすことと注記
⑤深遠な→奥が深いと注記
⑥ドストエフスキー作の「カラマーゾフの兄弟」の中で、イエスは大審問官の唇に赦しの接吻を
するが、「ゆるし」とふりがな
⑦諦(あきら)めにふりがな
⑧躊躇に「ちゅちょ」とふりがな
⑨ドロップアウト→脱落と注記
⑩ゴスペル→黒人霊歌と注記
まだまだあるが、きりがないのでここまでにしておく。
状況を推定しよう。
教会のバイブルクラスか、大学のゼミか知らないが、とにかく若者4人で本書を回し読みした。
中で比較的内容を理解しているものがふりがなを付けたり、注記を記した。
その上で共同でレポートを書いたか発表会を開いたというイメージか。
レベルが低くて悲しい。
もっとどきっとするようなオリジナルの感想とか、鋭い指摘があればまだ赦せるのだが。
私の感想など蛇足でしかないが、一応これだけ。
はっきりしているのは、本物のイエスが現代の教会にふらっとやってきても、
ホームレスとして追い出されるのがオチということ。
虚像が膨れ上がってしまった結果、ひいきの引き倒し現象が発生したわけだ。
現代の官憲に逮捕されるとしたら、彼の罪状は
①密造酒の製造(水をワインに変えた)
②無免許医療行為(超能力的治癒)
③異性不純交友(売春婦と日常的につきあった)
くらいで十分だろう。
知らない方が、布教にがんばれるというのがどの宗教においても共通する要素である。
でも関係者にはこの本程度の知識はあってほしいもの。(2013.7.1記)
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