今年はじめての
ひぐらしの
聲
波のように
かなかなと寄せてきて
消え入るように
かなかなと引いていく
ゆらぎの調べの
美しさ
いざなわれて
夕方の裏庭へ出ると
奥の生け垣にぼんやりと白い
花
… からすうり。
ひた寄せる
ひぐらしの声に
応えて
真白のレースが
ほどけはじめている
5枚の花びらの
ふちから
たくさんの白い糸が
ほどけて
やがて降りてくる夜のなかで
まぼろしのように
白く揺れる花になる
儚く妖しく
幻想的な
一夜限りの真夜中の
ドレス
暮れていく
淡い光のなかで
波のように
ゆらぐ
からすうりの
白い糸と
ひぐらしの調べ
立ちすくんで
八雲の世界にまぎれ込みそうな
そんな気がする
かなかなかなと
ひぐらしが
心を震わせ
夕空の青を震わせ
からすうりが
一夜花の
白い
繊細なレースを広げて
闇が
降りてくる
★
PEACE TO UKRAINE
STAND WITH UKRAINE
・