「女らしさ(「風の盆」を見て)」
先日、富山県八尾町の「おわら風の盆」を見てきた。
今年の状況について地元のテレビや新聞は下記報じていた。
「“おわら風の盆” 次の世代へ…哀調の響きと優美な所作 女性も感じる色気と美しさ 坂のまちに3日間で19万人」
「最終日を迎えた「おわら風の盆」は三日三晩にわたり好天に恵まれ、訪れた観光客は19万人にのぼりました。情緒あふれる踊りと哀調の音色でおわら一色に染まった坂のまち…3日間を振り返ります。」
そして次のような観客の感想を記載していた。
「女の人が綺麗だし踊りもしなやかだし、とても風情があってよかった」
「指先が、もう女性でも感じる色気が、すごい美しいなって…」
「女性の方は中学生か高校生ぐらいでしょ。踊りにものすごい色気がある」
この最後の感想は、たまたま見た踊りが中高生だったと言うことだろうが、ともかく共通しているのは女性の踊りに色気があったということ。
確かにこの「おわら風の盆」の女性の踊りには他にはない魅力があり、私もそれに引き付けられて今回見に行った訳だが、この色気とは何なのか調べてみた。
まず言えるのは腰をかがめた時の仕草。これは見返り美人の切手にも見られるが、女性特有のものだろう。そして手足の運びの柔らかさと、全体的に「しなやか」な動き。つまり女性らしい繊細かつ優美さを見事に表現したものと言える。
この究極とも言えるのが鏡町の踊りで、観光協会の説明書には「鏡町は、かつては花街として賑わった町の支部で、女踊りには芸妓踊りの名残もあって、艶と華やかさには定評があります。」と書かれている。
またNHKの番組(BSで3時間半の生中継)では鏡町の踊りの練習風景を放映し、その中で女踊りの女性リーダー(24才)は指導の際、生徒に次のように述べていた。
「(腕、指先)全部に余韻があって、ピタッと止まらない。止まっているようでちょっとづつ動いている。その方が色っぽい。」
鏡町がかつては芸者もいた花街だったとはいえ、この色っぽさというものが若い女性達にも意識され、今でも引き継がれているというのは驚きであった。
そして、鏡町の踊りで特徴的なのは男女混合踊りで、中でも「お酒を注ぐ仕草」と「月見の仕草」で、それを「そこはかとなく」表現しているのは秀逸だなと感じた。
ところでこの踊りだが、私が感じたのは「品(科・しな)を作る」ということで、辞書には次のように書かれている。
「女性が男性に対して、媚びるような艶めかしいしぐさをする。」
「女性が艶めかしい媚びを含んだ、色っぽい動作・様子を見せる。」
つまり昔花街だったこともあり、だからこのような踊りになったのだと理解できるが、さすがにテレビやパンフレットでは踊りの説明に「品を作る」という言葉は出てこず、単に「色気がある」「色っぽい」という表現に止まっている。
(追記)
私としては男踊りの方は余り興味がなかったが、実際に見てみると非常に切れが良く精悍。衣装は野良着をかたどったもので黒の法被と股引、草履も黒で地味なものだが、法被は羽二重で裏地には模様が施されており非常に凝った高価なものらしい(言わばいなせな江戸っ子の心意気の地方版といったところだろうか)。女性の艶やかな踊りと浴衣姿も印象深いが、今はむしろこちらの方が強く印象に残ってしまっている。
(参考)
「おわら風の盆」は毎年9月1日〜3日に本祭りが実施される富山市八尾町に秋の訪れを告げる行事です。編み笠を目深に被った男女が、哀調ある音色を奏でる胡弓や三味線、越中おわら節の唄に合わせて、情緒豊かに町を流します。江戸時代から300年余り踊り継がれていて、地元で「旧町(きゅうちょう)」と呼ばれる11の町(支部)が、それぞれに町流しをします。坂の多い歴史ある町をしっとりと流す姿は、叙情豊かで気品高く、哀調の中に優雅な趣を有しています。
(参考)
かつて若者が多かった頃は、踊り手が多くなりすぎて町が用意する揃いの衣装が足りなくなるということから、25歳を区切りに踊り手を引退する暗黙のルールができたそう。踊り手の引退後は、運営などの裏方に回るか、おわらの唄い手や楽器の演奏をする地方(じかた)へ。ただし、最近は若者の人数が減ってきたため、おわら人口の少ない小規模の町は踊り手を確保するのに苦労しており、30歳ごろまで踊る人もいるそうです。(現在は地元の青年団が中心となって運営している)
女性の踊る「女踊り」は、昭和初めに初代花柳吉三郎が芸者さんに振り付けた、艶やかな踊り。当時「女踊り」は花街鏡町の芸者さんが踊り、「男踊り」は「甚六会」が踊りました。現在は中学生や高校生も踊っており、10代の若い女性に艶やかな色気が出せるとは驚き。ただし、小さな子供のころから風の盆の演舞会に出場して、昼の町流しでも大人について踊り、踊り手として十分な経験を積んでいます。
(参考)
TOYAMA Net 「越中八尾 おわら風の盆 2023」
https://www.toyamashi-kankoukyoukai.jp/?tid=102515
MY PHOTO(おわら風の盆)
https://photos.app.goo.gl/nBzVnLQmnSeFQ9Nr7