話の種

新聞やテレビ、雑誌などで、興味深かった記事や内容についての備忘録、感想、考察

「国家」(成立要件と現況)

2023-09-24 14:02:05 | 話の種

「国家」(成立要件と現況)

(成立要件)

「台湾は中国の領土だった?」のところでも触れたが、一般的に国家の成立要件の3要素は「領域」「国民」「主権」と言われている。(ドイツの法学者イェリネックが提唱)

「領域」:領土、領海、領空が明確にあること。
「国民」:国家を構成する人々が存在すること。
「主権」:国家が持つ最高の権力(=統治権)のことで、対外的には他国からの干渉や制約を受けず、独自の意思決定を行う権利(=独立)のことで、対内的には国土や国民など国家を治める権利のこと。(主権をもつ者(国家を支配する者)を主権者といい、主権をもつ国を主権国家という。)

*主権に含まれる対外能力(外交能力)を「政府」として別途記載し、4要件とすることもある(モンテビデオ条約)。

*以前は「国家承認」(既存の他国からの承認)も要件に含まれるとされていたこともあったが、今は含まれないとされているようである。

(現況)

〇「世界の国家の数」:196ケ国
(日本が承認している195ケ国に日本を加えた数)(2023.3.20現在)

〇「国連の加盟国数」:193ケ国
(日本が承認している195ケ国に日本・北朝鮮を加え、未加盟国を引いたもの)

〇「国連の未加盟国」:4ケ国
(バチカン、コソボ、クック諸島、ニウエ)

(参考)

〇「日本が承認していない国」(8ケ国)

[何らかの外交関係を有する国]
・台湾(中華民国)
・北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)(国連加盟国で日本が唯一の未承認国)
・パレスチナ自治政府(パレスチナ国)

[外交関係を一切有しない国]
・サハラ・アラブ民主共和国(西サハラ、モロッコが実効支配している)(国連加盟国のうち45ケ国が承認)
・北キプロス・トルコ共和国(キプロス北部のトルコ系実行支配地域)(国連加盟国のうちトルコのみ承認)
・アブハジア共和国(ジョージア国アブハジア地域)(国連加盟国のうち4ケ国が承認)
・南オセチア共和国(ジョージア国南オセチア地域)(国連加盟国のうち4ケ国が承認)

[外交関係を一切有しない主権実体]
・マルタ騎士団(1522年マルタ島を領土とする。1798年領土失墜。)

(注)イスラエル(国家承認はしているが、エルサレムが首都であることは承認していない)


(参考)

〇「ロシアによるグルジア紛争とウクライナ戦争」

2008年のグルジア(ジョージア)紛争で、ロシアはアブハジア(アブハジア自治共和国)と南オセチア(南オセチア自治共和国)の独立を一方的に承認した。(今でもロシア軍が駐留している)

ウクライナのドネツク州(ドネツク人民共和国)、ルハンシク州(ルハンシク人民共和国)は2014年に一方的に独立宣言を行い、ウクライナ政府との間で内戦になっていたが、ロシアは2022年のウクライナ侵攻の直前(2日前)に独立を承認。更にウクライナのザポリージャ州、ヘルソン州も併合し、4州の併合、独立を一方的に宣言、承認している。
もちろん国際社会の大多数の国はこれを認めていない。

(ロシアがクリミア半島を併合した翌月の2014年4月7日、ドネツク州で政府の建物を占拠した親ロシア派勢力が「ドネツク人民共和国」の建国を宣言。同年5月11日には、ルガンスク州でも親ロシア派勢力が「ルガンスク人民共和国」の独立を宣言した。)
(2つの「人民共和国」があるドンバス地域は、ドネツ炭田の周辺に広がるウクライナ屈指の重工業地帯。旧ソ連時代に多くの労働者が移住してきた関係で、ウクライナでも特にロシア系の住民が多い。)

*アブハジア共和国と南オセチア共和国を承認しているのはロシア、ニカラグア、ベネズエラ、ナウルの4カ国
*ドネツク人民共和国とルハンシク人民共和国を承認しているのはロシア、シリア、北朝鮮の3ケ国

〇「沿ドニエストル共和国」

モルドバ共和国の東部の沿ドニエストル地域は(沿ドニエストル共和国)は親ロシア派勢力の支配地域で、1990年代前半にモルドバと内戦状態になり、ロシア軍の支援を受けて「独立」を宣言し、モルドバ共和国から離れた。ロシア人、ウクライナ人、モルドバ人の3民族が共存している。
一方的に独立を宣言したものの、国際的な国家承認は受けていない。

〇その他

・ソマリランド(ソマリランド共和国)
(ソマリア北西部の旧英領ソマリランド地域、ソマリアから分離、独立宣言したものの国家承認した国はなし)

・ナゴルノ・カラバフ紛争(アゼルバイジャン)
(アルメニア共和国とアゼルバイジャン共和国のナゴルノ・カラバフ自治州を巡る争い。この戦争でナゴルノ・カラバフの大部分に加え、周辺のアゼルバイジャン領土もアルメニアに占領されたが、2020年の第二次戦争の停戦協定により占領地域の3分の2がアゼルバイジャンに返還され、残りの3分の1はアルメニア(アルツァフ共和国)により占領されている。)
*(アルメニアはロシア、アゼルバイジャンはトルコと同盟関係にある)

(追記)*「ナゴルノ停戦合意 アゼルバイジャン「勝利」」(朝日新聞2023.09.21)

「アゼルバイジャン領ナゴルノ・カラバフのアルメニア系住民の実効支配地域をアゼルバイジャンが攻撃した問題で、アゼルバイジャン国防省と現地のアルメニア系住民組織は20日、現地時間同日午後1時に戦闘を停止することで合意した。
アルメニア側は停戦条件の武装解除を受け入れており、30年以上続いた紛争は、(僅か1日で)アゼルバイジャンの「勝利」で決着に向かうことになった。」

 

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台湾は中国の領土だった?

2023-09-24 13:41:36 | 話の種

台湾は中国の領土だった?

先日テレビのワイドショーでデーブ・スペクター氏が「台湾が中国(中華人民共和国)の領土だったことはなく統一というのはおかしい」と言っていた。

確かに台湾を領土としていたのは清朝及びそれに続く中華民国であり、中華人民共和国が台湾を領土としたことは一度もない。従って台湾を自分たちのものと言うのは語弊がある。
(統一という言葉は使ってもよいと思うが。)

まず台湾の歴史だが、簡単に表記すると次のようになる。

~1624   原住民の社会 
1624~1661 オランダの支配(一部の地域はスペインの支配)
1661~1683 鄭成功の支配(明の武将だった鄭成功がオランダを退ける)
1683~1895 清の支配(清が鄭成功を降伏させる)
1894~1895 日清戦争
1895~1945 日本の植民地(日本が清に勝利し下関条約により台湾は日本に割譲される)
1945.10.25 日本の敗戦により台湾は中華民国に返還される(中華民国台湾省となる)
1945~   中華民国の統治(1945~1949は国共内戦)

1945 中華民国は国連の安全保障理事会の常任理事国に名を連ねる
1971 国連総会での決議により中華民国は国連の「中国」の代表権を失う(国連を脱退する)
1975 蒋介石死去
1988 李登輝政権(初めての本省人による総統)が誕生し大胆な民主化が推進される
1990 初めての直接選挙による総統選挙で李登輝が再任される
2000 李登輝退任後の選挙で民進党の陳水扁が当選し、台湾で初めて国民党以外の政党が政権につく

*(李登輝は中国共産党との内戦状態に終結宣言を行い、共産党が大陸を支配するのを容認し、大陸と台湾という「2つの中国」の並立を認めた。) 

一方中国は清朝以降の歴史は次のようになる。

1616~  清(清国)
1911.10 辛亥革命(孫文が指導する)
1912.01 孫文により中華民国が建国される(首都は南京、孫文は臨時大統領となる)
1912.02 宣統帝が退位し清朝が滅亡する
1912.03 孫文はその地位を袁世凱に譲る(袁世凱はその後独裁政治を行う)
1916.06 袁世凱病死、その後中国は軍閥が割拠し分裂状態となる
1919.10 孫文により中国国民党が作られる
1921.07 中国共産党結党(当時の名前はコミンテルン(国際共産主義組織)中国支部、党員57名、結党大会参加者13名、毛沢東も参加)
1924.01 第一次国共合作
1925.03 孫文死去、蒋介石が広州国民政府の国民革命軍の総司令官となる
1927.04 蒋介石が共産党勢力を排除し南京に国民政府を樹立
1927.07 第一次国共分裂
1928.06 蒋介石が北伐を完了し全国を統一
1931.09 満州事変起る(柳条溝事件)
1931.11 中国共産党が瑞金に中華ソビエト共和国臨時政府樹立(主席は毛沢東)(1934.10事実上消滅)
1932.01 上海事件起る
1932.03 日本による満州国建国宣言
1937.07 日中戦争起る(盧溝橋事件)
1937.09 第二次国共合作
1945.08 第二次世界大戦終戦
1945.10 第二次国共内戦(本格的には1946.06~)
1946.10 蒋介石が国民政府の首席となる
1949.10 中華人民共和国樹立(首都は北京、中国共産党の毛沢東が首席)
1949.12 内戦に敗れ蒋介石の国民政府は台湾に移る(中華民国はそのまま存続、大陸の領土は中国共産党に占拠されているが、あくまでも中華民国のものという考え)

ここで問題となるのは国家とは何かということ。

一般的に国家の成立要件の3要素は「領域」「国民」「主権」と言われている。(ドイツの法学者イェリネックが提唱)

「領域」:領土、領海、領空が明確にあること。
「国民」:国家を構成する人々が存在すること。
「主権」:国家が持つ最高の権力(=統治権)のことで、対外的には他国からの干渉や制約を受けず、独自の意思決定を行う権利(=独立)のことで、対内的には国土や国民など国家を治める権利のこと。(主権をもつ者(国家を支配する者)を主権者といい、主権をもつ国を主権国家という。)

*主権に含まれる対外能力(外交能力)を「政府」として別途記載し、4要件とすることもある(モンテビデオ条約)。

*以前は「国家承認」(既存の他国からの承認)も要件に含まれるとされていたこともあったが、今は含まれないとされているようである。

中華民国(台湾)は国家としての要件を十分に満たしているが、現在(2023年3月現在)台湾との国交締結国(「中華民国」承認国)は13カ国しかない。
*(日本は1972年に中華人民共和国を承認し国交を樹立、同時に台湾を非承認国としている。ちなみに米国は1972年に中国との間で事実上の相互承認をしているが、最終的には1979年に国交正常化を行っている。)
*(現在、中華民国(台湾)を承認している主な国は、ツバル、マーシャル諸島、パラオ、ナウル、バチカン、グアテマラ、ハイチ、パラグアイ、ベリーズなど)

つまり、「国家承認」は国家としての要件ではないとしても、やはり国際社会で認められるための重要な要素であることは間違いない。
これが理屈では割り切れない、力関係がものをいう国際政治の難しいところだろう。

話を元に戻すと、ともかく中国(中華人民共和国)が台湾を自国の領土だというのは、その歴史を見れば全く理不尽なものと言わざるを得ない。(今の中国というのはそのような国であることは確かだが。)

*ついでに言うならば、中国(中華人民共和国)は9月3日を「抗日戦争勝利記念日」として記念行事を行っているが、日本に勝ったのは米国であり、一歩譲って中国も連合国の一員だったからとしても、この時の中国は蒋介石の国民党政府で、中華人民共和国が成立したのは戦後のことでこの時はまだ存在しておらず、全く事実と相容れないものである。(毛沢東の中国共産党は存在しており日本と戦っていたと言いたいのだろうが。)

中国は日本に対して事あるごとに歴史を忘れるな、直視せよというが、歴史を直視する必要があるのはどちらだろうか。

 

 

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