「国家」(成立要件と現況)
(成立要件)
「台湾は中国の領土だった?」のところでも触れたが、一般的に国家の成立要件の3要素は「領域」「国民」「主権」と言われている。(ドイツの法学者イェリネックが提唱)
「領域」:領土、領海、領空が明確にあること。
「国民」:国家を構成する人々が存在すること。
「主権」:国家が持つ最高の権力(=統治権)のことで、対外的には他国からの干渉や制約を受けず、独自の意思決定を行う権利(=独立)のことで、対内的には国土や国民など国家を治める権利のこと。(主権をもつ者(国家を支配する者)を主権者といい、主権をもつ国を主権国家という。)
*主権に含まれる対外能力(外交能力)を「政府」として別途記載し、4要件とすることもある(モンテビデオ条約)。
*以前は「国家承認」(既存の他国からの承認)も要件に含まれるとされていたこともあったが、今は含まれないとされているようである。
(現況)
〇「世界の国家の数」:196ケ国
(日本が承認している195ケ国に日本を加えた数)(2023.3.20現在)
〇「国連の加盟国数」:193ケ国
(日本が承認している195ケ国に日本・北朝鮮を加え、未加盟国を引いたもの)
〇「国連の未加盟国」:4ケ国
(バチカン、コソボ、クック諸島、ニウエ)
(参考)
〇「日本が承認していない国」(8ケ国)
[何らかの外交関係を有する国]
・台湾(中華民国)
・北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)(国連加盟国で日本が唯一の未承認国)
・パレスチナ自治政府(パレスチナ国)
[外交関係を一切有しない国]
・サハラ・アラブ民主共和国(西サハラ、モロッコが実効支配している)(国連加盟国のうち45ケ国が承認)
・北キプロス・トルコ共和国(キプロス北部のトルコ系実行支配地域)(国連加盟国のうちトルコのみ承認)
・アブハジア共和国(ジョージア国アブハジア地域)(国連加盟国のうち4ケ国が承認)
・南オセチア共和国(ジョージア国南オセチア地域)(国連加盟国のうち4ケ国が承認)
[外交関係を一切有しない主権実体]
・マルタ騎士団(1522年マルタ島を領土とする。1798年領土失墜。)
(注)イスラエル(国家承認はしているが、エルサレムが首都であることは承認していない)
(参考)
〇「ロシアによるグルジア紛争とウクライナ戦争」
2008年のグルジア(ジョージア)紛争で、ロシアはアブハジア(アブハジア自治共和国)と南オセチア(南オセチア自治共和国)の独立を一方的に承認した。(今でもロシア軍が駐留している)
ウクライナのドネツク州(ドネツク人民共和国)、ルハンシク州(ルハンシク人民共和国)は2014年に一方的に独立宣言を行い、ウクライナ政府との間で内戦になっていたが、ロシアは2022年のウクライナ侵攻の直前(2日前)に独立を承認。更にウクライナのザポリージャ州、ヘルソン州も併合し、4州の併合、独立を一方的に宣言、承認している。
もちろん国際社会の大多数の国はこれを認めていない。
(ロシアがクリミア半島を併合した翌月の2014年4月7日、ドネツク州で政府の建物を占拠した親ロシア派勢力が「ドネツク人民共和国」の建国を宣言。同年5月11日には、ルガンスク州でも親ロシア派勢力が「ルガンスク人民共和国」の独立を宣言した。)
(2つの「人民共和国」があるドンバス地域は、ドネツ炭田の周辺に広がるウクライナ屈指の重工業地帯。旧ソ連時代に多くの労働者が移住してきた関係で、ウクライナでも特にロシア系の住民が多い。)
*アブハジア共和国と南オセチア共和国を承認しているのはロシア、ニカラグア、ベネズエラ、ナウルの4カ国
*ドネツク人民共和国とルハンシク人民共和国を承認しているのはロシア、シリア、北朝鮮の3ケ国
〇「沿ドニエストル共和国」
モルドバ共和国の東部の沿ドニエストル地域は(沿ドニエストル共和国)は親ロシア派勢力の支配地域で、1990年代前半にモルドバと内戦状態になり、ロシア軍の支援を受けて「独立」を宣言し、モルドバ共和国から離れた。ロシア人、ウクライナ人、モルドバ人の3民族が共存している。
一方的に独立を宣言したものの、国際的な国家承認は受けていない。
〇その他
・ソマリランド(ソマリランド共和国)
(ソマリア北西部の旧英領ソマリランド地域、ソマリアから分離、独立宣言したものの国家承認した国はなし)
・ナゴルノ・カラバフ紛争(アゼルバイジャン)
(アルメニア共和国とアゼルバイジャン共和国のナゴルノ・カラバフ自治州を巡る争い。この戦争でナゴルノ・カラバフの大部分に加え、周辺のアゼルバイジャン領土もアルメニアに占領されたが、2020年の第二次戦争の停戦協定により占領地域の3分の2がアゼルバイジャンに返還され、残りの3分の1はアルメニア(アルツァフ共和国)により占領されている。)
*(アルメニアはロシア、アゼルバイジャンはトルコと同盟関係にある)
(追記)*「ナゴルノ停戦合意 アゼルバイジャン「勝利」」(朝日新聞2023.09.21)
「アゼルバイジャン領ナゴルノ・カラバフのアルメニア系住民の実効支配地域をアゼルバイジャンが攻撃した問題で、アゼルバイジャン国防省と現地のアルメニア系住民組織は20日、現地時間同日午後1時に戦闘を停止することで合意した。
アルメニア側は停戦条件の武装解除を受け入れており、30年以上続いた紛争は、(僅か1日で)アゼルバイジャンの「勝利」で決着に向かうことになった。」