「国家機関と人事制度/任命権者」
今回、裁判所、検察、警察などに関する事案を纏めている過程で、「忖度」ということが気になったので、公務員と言われる人たちの人事、任命権者は誰なのか整理してみた。(当方が関心のあるもののみ記載)
「任命権者と任命対象者」
任命権者:任命対象者
[天皇]
天皇:内閣総理大臣、最高裁判所長官
[立法府]
衆議院:衆議院議長
参議院:参議院議長
衆議院議長・参議院議長:当該議員の議員法制局長
[行政府]
内閣:内閣官房副長官、内閣法制局長官、検事総長、次長検事、検事長、人事院総裁
内閣総理大臣:国家公安委員会委員、公安審査委員会委員長及び委員
国家公安委員会:警察庁長官、警視総監、道府県警察本部長、地方警務官
警察庁長官:警察庁職員
各省大臣:各省職員
外局の長:当該外局の職員
人事院総裁:人事院職員
[司法府]
最高裁判省・各地の高等裁判所・地方裁判所・家庭裁判所:当該裁判所の裁判官以外の職員
最高裁判所:各地の検察審査会事務官及び事務局長
各地の検察審査会事務局:各地の検察審査員(くじによる)
検察審査員:各検察審査会の会長(委員の互選による)
[地方公共団体]
警視総監:東京都警察職員
道府県警察本部長:当該道府県警察職員
(参考)
[内閣官房]:内閣の補助期間
組織:内閣総理大臣ー内閣官房長官ー内閣官房副長官ー(各組織)
*内閣官房長官ー内閣人事局長ー(内閣人事局)
*内閣官房長官は行政事務を分担管理しない国務大臣
行政機関の任命権者のトップは当然のことながら内閣総理大臣。
また、三権分立の建前から、行政府の長である内閣総理大臣、司法府の長である最高裁判所長官の任命権者は「天皇」と形式的になっている。
*最高裁長官は内閣が指名すると憲法で明記されているが、首相が現職長官の意見を聞いたうえで了承するのが慣例となっている。
ここで注目されるのは、「検察」は組織上、行政機関であり、その長である検事総長や幹部の任命権は内閣にあるということ。日本の場合、検察に起訴、不起訴の裁量が与えられており(「起訴便宜主義」)、司法の側面も担っている。
(*従って検察を行政府から切り離すか、「起訴法定主義」にしたほうが良いのではとの指摘もある。)
*起訴法定主義:
刑事司法手続において証拠が存在するときや特定の犯罪に関する事件などについては検察官の不起訴裁量を認めない原則。 検察官に公訴(刑事訴訟)の提起を義務付けることを目的としており、1877年にドイツで採用された。
また「内閣人事局」だが、これは2014年安倍内閣の時に創設されたもの。
(*これ以降、昇格を人質にとられた官僚側に政治家の顔色をうかがう傾向が出てきたとの指摘もある。)
*内閣人事局には担当大臣が置かれており、現在は河野太郎国家公務員制度担当大臣が、国家公務員の人事行政及び国の行政組織を担当している。また、内閣人事局長は内閣官房副長官を充てることとされており、栗生俊一内閣官房副長官が担当している。
「序列と階級」
[省庁]
内閣総理大臣、大臣、副大臣、大臣政務官、事務次官(国家公務員のトップ)、外局長官、官房長(大臣官房のトップ)、局長、部長/審議官、局次長、課長、課長補佐、室長、企画官/専門官、係長、主任
[検察]
検察官の階級は検察庁法3条により次のようになっている。
検事総長、次長検事、検事長、検事、副検事
検事は,司法試験合格者である必要があるが、副検事は、一定の司法・行政事務に一定期間携わった者に資格が与えられることとされており(検察庁法施行令2条)、そのほとんどが検察事務官経験者。
なお,上記とは別に検事正という官職があるが、検事正は官名ではない。
[警察]
警察の階級は警察法第62条により次のように規定されている。
警視総監、警視監、警視長、警視正、警視、警部、警部補、巡査部長、巡査
巡査: 各警察署の交番などに勤務
巡査長: 階級として正式な名称ではないが実務上存在する役職
巡査部長: 担当部署の主任格
警部補: 警察署で「係長」職に相当
警部: 警察本部の「課長代理」、警察署の「課長」職に相当
警視: 警察署の「署長」「副所長」「課長」などの役職を担当
警視正: 警察本部の「部長」「参事官」、大規模警察署の「署長」などの上級管理職
警視長: 警視庁の「部長」、警察本部の「本部長」などに就く階級
警視監: 警察庁の「次長」「局長」「官房長」、警視庁の「副総監」などに就く階級(定員は38名)
警視総監: 日本警察のトップ(椅子は1つ)
*日本警察の実際の最高位は警察庁長官だが、警察庁長官は警察の階級制度が適用されないため、階級制度上では警視総監が日本警察のトップという扱いになる。
*キャリア・準キャリアとノンキャリア:
「キャリア」:
「国家公務員総合職試験」に合格して警察官になった人。幹部候補。
階級は「警部補」からのスタート。
「準キャリア」:
「国家公務員一般職試験」に合格して警察官になった人。警察庁採用の警察官として働く。
階級は「巡査部長」からのスタート。
「ノンキャリア」:
上記以外の人たち。
(各都道府県の警察採用試験に合格し警察学校を卒業後、巡査からスタートした人たち。)
*警視正以上の階級はノンキャリアでは昇任するのが非常に難しく、警視正以上はほぼキャリアと準キャリアしかいない。
*刑事:
刑事課配属の刑事事件を担当する警察官。(「刑事」という階級名は存在しない)
刑事と呼ばれるのは「巡査」や「巡査長」の階級の警察官で、管理職はそれぞれ役職で呼ばれる。
(「巡査部長」は刑事の中では「部長刑事」と呼ばれることもある。)
「刑事」になるのに階級は関係ない。
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