オジサマ専科 Vol.2 Memories母の手帳の設定を超改変してあります。なのでネタバレも含まれております。BOYSLOVEテイストにしてお届けなので、実際の商品とは一切何も関係ありません。もぐ菜は古川透CV:中田譲治しゃん推しなのでよろ。それと古川透氏は黒髪サラサラ和装で物静かな優しいアーカード様をイメージしてねんVv。
gentleman's&boy(5)
タクシーの中で会話をしてたが、藤宮はぐっすりと寝入ってしまった。金曜日の深夜ではなく、日付が変わり土曜の早朝へとなりつつある。古川はタクシーの窓から、深い闇に覆われた空を見つめ思う。
夜が嫌いではなく、何もかもを我が物顔で覆う闇が嫌いなだけだ。私は皆と同じ様に生活して居るが自分は気づくと独(ひと)り小舟に乗せられあてどもなく、薄らぼんやりとした闇を進み出す。
他者からの疎外感(そがいかん)ではなく自分と言う小さな世界の殻(から)に、閉じこもって居るだけなのかも知れない。
何処(どこ)へ流されて徃(い)くのだろうか?? それとも殻(から)を打ち破る気力さえもなく────────── このまま……… 自分と言う小さな世界で、薄らぼんやりとした闇の中で一生を終えてしまうのだろうと。
あの日に、私は独(ひと)り薄らぼんやりとした闇に取り残されたままで。
「お客さん、ご自宅に着きました。お連れさんは、大丈夫ですか??」
「ああ、眠ってしまっただけだ。すまぬが、支払いを。」
古川は支払いを済まし、藤宮を抱き寄せてタクシーを降りた。運転手は安全確認をし、古川に一礼してタクシーは走り出した。
古川は苦笑いをした生まれて初めての午前様をし、年若い男子を自宅に連れて帰って来るとは。
親とは同居してないが、古川にとって大冒険的な行動である。日中は邸宅にはお手伝いさん、庭師が来て邸宅を護ってくれて居るので安心である。
藤宮が起きて居れば、ひと風呂でも浴びせたいが寝た子を起こすのも何とも不憫(ふびん)だ。門構えは時代劇並の邸宅だっが、最先端なセキュリティシステムを備えて居る。
まずは門を開けるのに鍵で小さい扉を明けから生体認証の機械に触れて解除してから、続いてセキュリティ解除のコードを入力する。手にした別の鍵で最後にやっと門が開く。
門は閉じるとオートロックで、鍵で確認の施錠をする。門から邸宅の正面玄関は遠い、ふうっと古川は息をした。
玄関のセキュリティ解除と鍵を開けるのが、少々てこずったが抱きかかえて藤宮を連れて行く。
抱きかかえた藤宮が余りにも体重が軽いので古川は驚く。 顔つきや体格は健康的に見えるが、体重がふんわりとし過ぎる。
おおよそ、成人男子を抱きかかえて居るとは思えない。一人暮らしで食生活が、きっと不規則なのかと考えてしまう古川だった。
客室が幾つかあるので、一階の客室へ藤宮を抱きかかえて連れて行く事にした。洋室なので、ベッドである。
ベッドカバーと羽毛布団を器用に捲(まく)り上げ藤宮を寝かせた。
いくら寝入って居ると言うがそのままで、寝かせるのは凌(しの)ぎない。濃紺色のスーツ姿を着て居るので、スーツの上着を脱がせる。
ネクタイをしゅるりっと外し、ネクタイピンを取る。ワイシャツの第一ボタンを外した。これなら、寝やすいはずと。後、黒のビジネスソックスを脱がした。
衣服を脱がされても起きない、藤宮の無防備な寝顔と姿を見て居ると、不安になってしまう古川だった。
そして、自分と異なる匂いがした。お香を焚(た)くが、それとも違う匂い。さわやかな香り、それは新緑の息吹に似た薫(かお)り。生い茂る小葉(このは)の合間からの陽射しを仰ぎ見る青い空を想像させる。
藤宮に羽毛布団を掛けた。
それともこう寝込むのが慣れて居るのか?? 古川は藤宮の愛くるしい寝顔を悩(なや)ましい表情で見つめた。
クローゼットへ歩く。
クローゼットを開けてスーツの上着とネクタイをハンガーに掛けて、消臭除菌スプレーを吹きかける。ビジネスソックスは別のハンガーに掛けて、同じく消臭除菌スプレーを吹きかけた。
名前を呼ばれ振り返ると藤宮は眠って居る。
クローゼットを閉めてベッドへ。
藤宮は夢を見て居るらしく寝言を、ゴニョゴニョと言っており古川は笑う。
愛(いと)おしい─────────────
藤宮の柔らかい鼻先にそっと唇(くちびる)を寄せた。唇(くち)びるを乞(こう)い求め合うのが唇(くち)づけならば、それはまさに一瞬の感情を求める接吻(せっぷん)で心せつなくほろ苦い。
gentleman&boy(6)