消火器の破裂事故が相次いで発生したことにより、古い消火器を処分し新しい消火器に買い替える方が増えてきているようです。
家庭用の消火器については、使用期限を製造日から「8年」と各消火器メーカーが定めています。家庭用消火器は8年以上経つと容器の劣化が始まり、消火器の種類によっては使用時に破裂の恐れがあること、また、PL法(製造物責任法)の有効期限が近づくこと等から、8年以上経った消火器は絶対に使用しないで下さい。
また、「古くなった消火器を廃棄するため、薬剤を噴射しようとしたときに破裂した」という事故も発生しています。種類にもよりますが、古くなった消火器や容器が損傷している消火器は使用したとき(レバーを握ったとき)に破裂の恐れがあります。また、いかなる目的であっても、個人での分解などは絶対に行わないで下さい!(消火器を分解して点検・整備をするには「消防設備点検資格者第一種」、薬剤の詰め替え(放射試験)を行うには「消防設備士乙種6類」という資格が必要です。また消火器は、中身の薬剤の有無に関わらず、処分するにはリサイクル費用等が必要です。)
消火器は「なんでもかんでも破裂する…」というわけではありません。破裂する危険性があるのは「使用期限の過ぎた、あるいは期限内であっても容器の損傷が激しい消火器(ガス加圧式消火器)」であるということをまずご理解ください。
・消火器の種類
家庭用に販売されている消火器は、主に「ABC粉末型消火器」や「ABC強化液消火器」というものが多数を占めています。その中でも、「ガス加圧式(加圧式)」と「蓄圧式」に別れ、それぞれに特徴が違います。
【ガス加圧式消火器のしくみ】
まずガス加圧式消火器は、その名のとおり使用時にガスで圧力を加えるタイプのもので、消火器の中でも最も一般的なものです。比較的安価でありながら、高い消火能力を持っているのが特徴です。
この消火器は、通常は消火器本体には圧力はかかっていませんが、使用時(レバーを握った際)に瞬間的に消火器本体に高い圧力をかけ、内部の消火薬剤を噴射させるしくみになっています。消火器内部に加圧用ガス容器(二酸化炭素や窒素ガス等を圧縮したボンベ)が内蔵されており、レバーを握ることによってこの容器に穴をあけて一気にガスを出し、薬剤とともに噴射するのです。
抜群の消火能力とコストパフォーマンスを兼ね備えたこのガス加圧式消火器ですが、思わぬ落とし穴があるので注意が必要です。
使用期限(8年)が過ぎて金属が疲労していたり、期限内であっても保存状態の悪いガス加圧式タイプの消火器は、使用時に(レバーを握ったときに)かかる高い圧力に容器が耐え切れず、破裂してしまう・・・という恐れがあるのです。9月中旬に大阪市東成区で起きた破裂事故も、ガス加圧式の消火器であることが確認されており、おそらくレバーを握ったか、何かの拍子で握った状態になったことにより破裂したのではないかと考えられています。
【蓄圧式消火器のしくみ】
もう一方の蓄圧式消火器は、本体容器内に薬剤の放出源となる窒素ガスが常時蓄圧されており、レバーを握ることによって消火薬剤が放出される仕組みとなっています。蓄圧式消火器には指示圧力計(方位磁石のようなゲージ)が必ず取り付けられており、かかっている圧力の状態を常時確認することができます。一般的には加圧式消火器よりも高価で、消火能力が若干劣るとも言われていますが、容器に急激に高い圧力をかけることがないため、使用時の破裂の恐れが無いという利点があります。現在、販売されている一般的な家庭用消火器は、すべてこの蓄圧式消火器になっています。
【消火薬剤の種類】
また上記のしくみの他に、一般的に市場で販売されている家庭用消火器には、中身の薬剤の種類別に「ABC粉末タイプ」と「ABC強化液(液体)タイ
プ」があります。ここでのABCとは、Aが「普通火災」、Bが「油火災」、Cが「電気火災」にそれぞれ対応しているという意味であり、あらゆる原因の火災
が想定される住宅火災では、この二種類が最適とされています。
上記の消火器のしくみと併せて「加圧式のABC粉末消火器」とか「蓄圧式のABC強化液消火器」という表記で販売されています。
ただし、厳密に比較すると、同じ家庭用消火器でも設置する場所によって向き不向きがあります。
たとえば粉末タイプの消火器は、天ぷら油を消すために台所で使用した場合、火を消すことはできても、粉末の細かい粒子が冷蔵庫等の電化製品に入り込んで故障の原因になる・・・などという二次被害が起こることもあります。このことを考えると、台所に消火器を設置する場合は「強化液タイプのものが良い」と言えるかもしれません。(消火器を選ぶ際は、消火器販売店でご相談の上お買い求めいただくことをお勧めいたします。)
テレビ等のメディアで消火器の危険性が報道され、「古い消火器には触るのも怖い」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ご理解いただきたいことは、古い消火器の“破裂”は、たとえガス加圧式消火器であっても、使用しない限り(レバーを握らない限り)起こることはまずありません。当然ですが、置いておくだけで自然に破裂することもなく、製造から何十年経った消火器でも触ったり持ち運んだりするだけでは破裂することはありません。(但し、腐食による液漏れや、高い所から落とすなど衝撃を与えたり、急激な温度変化に耐え切れなくなったりしたことによる破裂等は起こる場合があります)
また、処分に困ったのか、消火器の不法投棄も増えているようです。不法投棄は、別の事故を誘発する大変危険な行為です。絶対にしないでください。
以上のことをご理解いただき、適切な消火器の廃棄処分にご協力いただきますよう、お願い致します。
事務局 農澤