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ポジティブな私 ポジ人

PARKER

片付けは遅々として進まない。片付けながら、頭の中で「人生の大片付け」という言葉が浮かぶ。出来るうちにやっておかなければ。

子供達の使わなくなったクレヨンや彫刻刀などの学用品、趣味で始めようとした機織り機、この先も編むことの無い毛糸玉など、不用品はネットのフリーマーケットなどに掲載した。これが意外と売れる。
利益は数百円だが、書物を買う軍資金とすれば御の字だ。

ボールペン類を片付けていた時の事、ひときわ美しいフォルムのボールペンが出てきた。すでに中のインクは空で書けないけれど、ちょっと高そうなボールペンだ。眺めているうちに、ペンクリップの形に見覚えがあることに気づいた。特徴的な矢羽。あの有名な万年筆メーカーのパーカーだ。

ブランド物なら、高く売れる。ネットのフリーマーケットでは相場はいくら位だろう。
早速調べてみると、現在の矢羽クリップは私が持っている物と形が違う。私が若い頃に使っていた物だから、相当な年代物のパーカー。もしかしたら、かなり高額なのでは無いだろうかなどと、欲深な思惑はどんどん果てし無く広がり、あれこれさらにネット検索してみる。

検索しているうち、ふと父の事を思い出した。 

パーカーは父が好きな万年筆メーカーだった。

父は自分の字にコンプレックスを持っていた様だ。
40代後半位から、夕食後母がお膳の上を片付けると、万年筆と便箋を出しては毎日お手本を見ながら同じ文章を繰り返し書いていた。

日頃の父は、朝はスーツに身を包み、こってりと丹頂のポマードをつけた髪を、きっちりと七三に分けて出掛けた。しかし帰宅するやいなや、シャツとステテコ姿となり、それが父の部屋着がわりだった。
ステテコ姿の、およそブランド物と無縁の父が、唯一持っていたブランド物がパーカーの万年筆だった。

片付け中に出てきたあのパーカーのボールペン。入手経緯を思い出してみると、何かの折に父が私にくれたものではなかっただろうか。すっかり忘れていた。貰ったときも、パーカーの有り難みをあまり理解していなかったからかも知れない。

何という親不孝者。そんな大切な物を、ネットフリマにあげて売り飛ばそうとしていたとは。大反省。
結局ボールペンを掲載しようとしていたネットフリマで、ボールペンの替芯を購入するという顚末となった。

パーカーの替芯は純正品は高価なので、パーカー対応の汎用品を安くネットで購入した。5本セットで送料込300円。ものすごく安い。数日して家に届いた。

早速入れ替えて、久しぶりに使用してみた。
滑らかな書き心地。インクは純正品じゃないけどなかなか良い。ボディーのフォルムが洗練されているので、握り心地も良い。
これからは大事に使用する事にした。
替芯5本。私が死ぬまでもちそうだ。

かつて一度、ネットフリマでお金欲しさに判断を誤り、子犬のフィギュアを売ってしまって大後悔した事があった。
結局、探しに探してやっと同じ物を購入したという、苦い過去があったと言うのに。つくづく愚かな我が身を呪う。
今回は過ちを犯す前に気付いて良かった。

ネット上でいくら同じ型の物を見つけたとしても、子犬のフィギュアとはわけが違うのだ。

パーカーのボールペン。この世に同じ型がいくらあったって、父から貰ったこのボールペンは、私にとって唯一無二の物なのだから。




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