とはいえ、無職で365日ヒマ人の私には、マイペースで出来る、丁度よいお仕事なのだ。する事が無いことの方が辛い。
不用品の売却は、捨てられる運命の物が欲しい人の元へ届けられ、友人の思い出の品は新たな持ち主の元で生き続ける。それは友人にとってもうれしい事であり、私もSDGsに少しでも貢献できたという喜びもある。それに、言うまでも無いが、ゴミになるものが金銭に変わる、言ってみれば現代の“錬金術”だ。
友人の不用品の売却件数は、既に200件を超えた。ということは、200個ほどの商品を梱包し、200人ほどの不特定多数の人と、コメントのやり取りをした事になる。
コメントはほとんどが定型文だが、時には値段の交渉をしたり、中には「お忙しい中すみません」と実際には暇な私を労ってくれたり、届いた商品を受け取って喜びを伝えてくれたりと、様々なコミュニケーションが交わされ、ささやかな喜びを感じる事も多々ある。
ほぼ毎日そんな事を繰り返すうち、少々気の緩みが生じたようだ。“発送はお手の物”などというおごりがあったのかも知れない。
思いがけずトラブルが発生してしまった。
売却した商品の評価を待っていたところ、購入者の方から「品物が破損して届いた」と言う内容のメッセージが届いた。
その文面を読んだ途端、頭に「ガーン!」ときて、心臓が「ドッキーン!」となった。まさかと思った。
購入された品物は陶製の物だった。本来なら割れる可能性を考慮して、段ボールの箱を使うべきだったのだが、この時は何故か大丈夫だろうと軽く考えて、段ボールの箱を使わなかった。でも、その分エアキャップ(ブチブチ)でしっかり包装して、周囲をボール紙などでガッチリとガードしたのだったが。それが割れるなんて…。一瞬、荷受け先のコンビニの誰かが誤ってカウンターから落っことしたのじゃないだろうか、あるいは荷物の配達員さんが落としたのかも等と考えたりもしたが、結局の所は私の施した梱包が甘かったのだ。
相手の方は、品物が壊れて届いたにも関わらず、怒ることもなく冷静に対応してくれて、コメントも穏やかで優しかった。
品物が届くことを楽しみに待って下さっていたのに、私はなんてことをしてしまったのだろう。自分の判断の甘さに後悔し、購入者の方には心から申し訳なく、時間を巻き戻したい気分だった。
結局取り引きはキャンセルし、購入者の方に金銭的な損失は生じなかったが、だからといって取引前の状態に戻ったと言う訳ではない。それは、品物が届く事を楽しみにしてくださった気持ちを、台無しにした事実に変わりはないのだから。無事に届けられなかったという事が、悔やんでも悔やみきれなかった。
そんな事があってから、あまり間を置かずに別件で、またトラブルが発生した。
珍しくビデオテープが売れたのだが、そのテープが「カビだらけだった」と購入者の方からコメントが届いたのだった。
発送前にビデオのチェックはしていた。再生できるかどうか動作確認をし、ビデオテープが見える小窓に、少し白い物が見えているなと認識はしていたのだが、それが何であるかを深く考える事もせずに、ちょっとした汚れかな?位にしか思っていなかった。それがまさかカビであったとは、夢にも思わなかったのだ。
先方の方はコメントの文面からすると、高齢の方らしく、この方もまた大変良い方だった。
私は深く考えもせずに「再生出来ましたか?」と尋ねてしまったのだが、先方の方は私に失礼に当たらないようにと前置きをした上で「貴重なビデオデッキをカビで汚染したくない」とコメントされた。ああ、確かに。
せっかくビデオの到着を楽しみになさっていたのに、私はまたしても、その期待を打ち砕いてしまったのだった。白い物の正体を、もっと深く追求するべきだった。
これも取り引きはキャンセルとなったけれど、出品前の品物のチェックは、慎重にしなければいけないと、大いに反省した。
これまでは、フリマで品物が売れると、いかに小さなサイズに梱包して、送料を抑え利益をあげようかと考えるのが常だった。しかし、今回の失敗で、その考えは大きな誤りである事に気が付いた。
今回の失敗で得た教訓
1.まともな品物を出品する事。
それには出品前の品物の仔細なチェックが重要だ。
2.無事にお届けする事。
今更だが、無事に届くのが当たり前だと思っていた。長らくやっているのに、今頃気付くなんて遅すぎた感もあるが、割れ物や繊細な品物は、先ず厳重な梱包から。サイズダウンは二の次。
取り引きは今後もまだまだ発生する事を考えると、気を付けなければいけないと心した。
利益ばかりを追求するあくどい「越後屋」から、正直婆さんの優良店へリニューアル。そんな気分だ。
二度と同じ過ちをしない事を誓う!