篠田博之月刊『創』編集長
7/21(金) 16:15
最初に彼の手記なども掲載した書籍『開けられたパンドラの箱』を刊行した際、彼の障害者観が反映されたイラストの掲載を見合わせたところ、傷害のある方から批判されたこともあった。彼の差別性が反映された表現であっても、事件について分析するために必要であれば、自主規制してはいけないのではないか、載せ方の工夫をすればよいのだ、という意見だった。これは正論なのだが、実際にはなかなか難しい。
例えばこれは最近、『創6月号に掲載したマンガだが、よく読み解くと、植松死刑囚の考え方が反映されていることがわかる。あまり露骨に彼の差別性が反映されたものはもちろん『創』でも公開されないことを理解しているので、彼もそこは判断して公開可能ではないかと思われる表現を送ってくるのだが、それにしても彼の人間性や考え方を分析するためと言ってもそのまま公開して良いかどうかは検討しなければならない。
例えばこのマンガも何気ない表現だが、右上に描かれた刺青を入れて大麻を吸っているのは植松死刑囚本人と思われる。自分のイメージをこんなふうに彼は投影しているわけだ。
このマンガの「不幸な人、幸せな人とはなんだろう」というセリフも、植松死刑囚が考えているテーマを反映したものだろう。
衝撃だったイラスト「世界は美しい!!」
ある意味で衝撃だったのが、以前もヤフーニュースに紹介したが、彼が最近、突然、前後の脈絡もなくノートに描いてきたこのイラストだ。世間が抱いている植松死刑囚のイメージとあまりにもかけ離れているゆえに衝撃なのだ。いったい本人はどういう思いでこのイラストを描いたのだろうか。
ちなみに彼はこうしたマンガをどんなふうにして編集部に届けているかというと、上のイラストのもとになった彼の獄中ノート現物が、この記事の冒頭に掲げたものだ。絵の部分とセリフの部分をノートの左右ページに描き分け、それを合体させ、セリフは手書き文字でなくパソコンで打ち直して掲載しているのだ。
同様に以前ヤフーニュースでも紹介した刑務官を描いたマンガは、ノートではこう描かれている。
植松死刑囚はこうしたマンガについて不許可にしようとした拘置所側と争って懲罰房扱いにされたらしいのだが、それはこのマンガではないかというのが私の推論だ。
彼は死刑が確定する前から、イラストや文章など、獄中で大学ノートに書いたものをかなりの分量で送ってきていた。そのまま発表できないものも含めて、植松死刑囚について分析する、あるいは彼がなぜあのような考えに至って凄惨な事件を引き起こしたのか考える素材となり得るものだ。編集部には未公開の彼の記述や表現がまだたくさん保管されている。
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