縁

神田駅前の鳥ぱぶ花かげのオーナーは昔の友人、
飲み屋で意気投合した飲み仲間だった。
店のオープニングも皆で行った。
その後私は銀行員から居酒屋業界に転職し、
同業者になった為自然に足が遠のいたが、
神田の駅から店が見える度、
いつか遊びに行こう！と思って28年が経ってしまった。

来週会社の同僚たちと飲み会をする事になっている。
どこにしようと考えていたら、
なんとある同僚が「行ってみたい。」とその店を指名してきた。
私は懐かしさも手伝って直接店に予約に行った。
予約の対応は店長がやってくれた。
たしか当時はオーナー兼店長だったが、
長い年月が過ぎてしまった為、
その人が友人かどうかわからなかった。
そこで私はその店長に聞いてみた。

「こちらはオープンからオーナーさんは一緒ですか？」

「ええ変わっていませんが…？」とけげんそう。

「たしか○○○さん…でしたよね？」

「ええ、私が○○○です。」

「わー！私も○○○（旧姓）です！」

その一言で私が誰か気づいてくれたようだ。
そう私とこの友人は偶然にも同じ名字だったのだ。
しかも私の旧姓は沖縄系で少しばっか珍しい。
暫く懐かしい話で盛り上がったが、
友人は少し寂しそうにこう言った。
「じつは来月で店を閉店するんです。」
ほんの数日前にそう決めたらしい。
最後に懐かしい人が来てくれたと喜んでくれたけれど、
私もまさか28年の最初と最後を見るとは思わなかった。
なにか不思議な縁を感じた少しせつない再会だった。