映画と渓流釣り

食堂かたつむり

 「バベットの晩餐会」のような、お腹も心も満ち足りた気分にさせてくれる事を期待して映画館に通ったのですが、腹八分にもなりませんでした。女流監督のいけないところが多く出ていて、退屈してしまう事も度々でした。

 下手なファンタジーっぽい作り方がこの映画をダメにしてます。映像をメルヘンチックにする事ではなく、お店に訪れる人々にそのお料理で奇跡を起こすようなファンタジーにすべきでした。母親との関連性もしつこ過ぎて辟易してしまいます。食堂かたつむりで頂くお料理がメインであって欲しかったので、老妾の挿話が一番見ごたえがありこちらの心も高揚いたしました。わたくし事で恐縮ですが、年間300日位厨房に立つので(料理人ではありませんが)お料理をする楽しみは分かるつもりです。丹精込めて食材を集めて、食べてくれる人の好き嫌いを想像し少しでも喜んでくれる事を祈りながら誂える時の楽しみは、毎日の事であっても心躍る時間です。老妾の挿話だけは作る人と食べる人のお互いの喜びが溢れておりました。柴崎コウ、余貴美子、満島ひかり、三浦友和、どの役者も上手いのですが、出すぎであったり引っ込みすぎであったり適材に使われていませんでした。演出の失敗がこの映画の致命的出来事でした。
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