映画と渓流釣り

阪急電車

 有川浩の作品はどこか漫画チックで、ベタ甘な恋愛模様が衒い無く描かれるところが若い人達に人気なのだとか。
わたくしもいいオッサンではありますが、彼女の描く不器用でありながらも真摯に思いやる恋人達にぞっこんであります。
「図書館戦争シリーズ」「自衛隊シリーズ」等のガテン制服系は、その辺のところが真正面に描かれますので、キュンキュンしながら読んでおります。

 「阪急電車」は系列からすると若干離れています。有川浩の新境地を思わせる構成の複雑さが魅力的な佳作です。ベタ甘な恋愛は、関西学院大学生の軍オタと田舎少女くらいなもので、馬鹿社会人と関学に憧れる女子高生はちょっと違う感じですし、暴力男に見切りを付ける女の子や寝取られた腹いせに結婚式に出席するOL、そりの合わない奥様集団の中で戸惑う主婦、いじめを強く受け止める小学生そしてなにより、孫と連添う初老のおばあちゃんなんか今までの有川作品で中心的な役割を負う事はありませんでした。

 映画は複雑な人間模様と時系列に苦労してました。原作を読んでないと分かり辛かったのではないでしょうか。
映画ならではの良さが発揮出来ていなかったのは悔やまれるところです。寝取られOLといじめられ小学生の会話部分や軍オタが電車から見上げるヘリに映像ならではの優位性が見られましたが、全体的に原作をなぞる事で精一杯な感じでした。
先週観た「八日目の蝉」が、原作に忠実でありながら焦点がオリジナルになっていて楽しめたのとは対照的でした。
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