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映画と渓流釣り

villageは国家の縮図なのか



わたくしの郷里にある八ッ場ダムのことを考えた
半世紀前からの課題に決着が付いたのは呆気なかった。子供の熱病のように短期間で冷めた政権交代によって半世紀近くペンディングになっていたダムは時を経ず水を満々とし、線路も道路も立派に整備され今になれば一体誰が反対していたんだろうと思う
幼少の頃に見た、今や湖底に沈んだ街道沿いに掲げられていた「ダム建設反対!」のアジ看板は何処に行ったのか
反対していた人々は今どうしているのだろう

さて、映画について
作品毎に違った題材を扱い、標準以上の作品を作っているのは凄いこと
藤井監督まだ三十代、これから深みを増して是枝監督のような異才を放つ様になれるか、それとも森田監督のように職人監督のまま終わってしまうのか
次々と作品が公開されるというのは需要があるわけで喜ばしいのだけど、器用にまとまってソコソコの満足感をもたらすような作家になる恐れもあるということ。今回の作品も良く出来ていて褒めたいのだけれど、もっと薄ら寒さを感じられる映画になって欲しかったと高望みする気持ちもある

出世作「新聞記者」も、みてくれは社会派作品のようだった。でも、望月記者本人のドキュメンタリー映画の方が断然面白かったし、劇映画であるなら熊井啓監督作品のような暗さと遣る瀬無さを観せないと単なる作り物でしかない。ヤクザを主題にした映画も余命10年を描いた作品も、結局上っ面の物語に感心しただけで心の奥底に刺さるものはなかった

残念ながら今作も上っ面の面白さだけで終わっている(その面白さだけで充分なのかもしれないが)
手垢のついた主題を軸に小さな村社会の人間関係の軋轢が描かれた。ゴミ処理場、不法投棄、政治や行政との癒着、知っている。大昔からある臭い物に蓋をする社会、昔のことは水に流して清算するコミュニティー。知っているんだよそんなこと
だから映画作家の貴方は(ボンクラな人じゃないと思うから)映画にも印象的に映された真っ黒なあの穴、ゴミ処理場の真っ只中に空いたあの穴の中を観せて欲しかったのだ

否定的な文面になってしまったが、面白い映画であることはちゃんと伝えておこう
横浜流星のダークさも嫌味じゃなかったし、黒木華の受け身演技はいつもながら感服した

そう言いながらもう一つ
村にはあんなに若い人は居ない
若い人って、村社会の感覚だと40代。下手すると50代でも若手だったりするし
20代の人なんていないのだよ。主な住人の老人達はお迎えが来るまでどう生きていくかが大切で、孫子の世代に残るであろう負の遺産に構っていられるほど余裕はない。田舎に生まれ育った還暦過ぎたジジイが言うのだから、都会暮ししか知らない若き世代に反論の余地はないだろう

そうやって村(village)も国家も上辺をうまくすくい取りながら転がっている
わたくしもその中で同じ方向に速度を合わせて転がっている







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