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ある少女の1日   『動物園の巻』     by空豆

2005-11-15 | 空豆
黙ったまま、二人は駅を降りた。電車には10分も乗っていなかっただろう、改札を出ると、森があり広場なのだろう、水の出ていない噴水がある。小便小僧も不景気のあおりを食らっているのか、白い肌も所々くすみ、シミが出て来ていて子供というより、小柄な老人の様にも見える。それでも、彼は仕事をしているようだ。あの彼の役を、果たしていないあのスタイルは虚しく写っている・・・・
そして二人は、手をつなぎながらズンズン歩いていく。さり気なく遠くの方から、コーネリアスの『MOON WALK』(砂原良徳バージョン)がさり気なく聞こえてくる。
そこには、懐かしくもあるが昔は良かったと誰もが語ってしまうような動物園の入り口だ。

動物園の入り口、白のスーツを着た笑顔がばっちり決まっている、伊勢丹の案内の所に居るデパガーかと思うような格好した、少し浮き気味の女性にチケットを渡し、渡されたパンフレットを広げながら、何かを目指しだした。そしてCibo Matto Sugar water』が寂しく聞こえてくる。
園の中には、順路を示した矢印もあったが、二人は渡された地図を見ながら目的の動物を目指している。二人に園の案内標識などは、なんの道しるべにもなっていない。大事なのは何を目指すかということだ。
二人はサイの檻の前だ。彼は、サイが好きらしい。
彼女は彼の手を握ったまま、隣の猿山を眺めている様にも何かを探している様にも見えるが、手をつないだままキョロキョロしている。まるで、迷子になるの感じさせている子供の様だ。目をつむりサイを感じようとしている。何かを彼はサイに送っているようだ。だが思いはサイに通じない、通じるはずもないのだが。
サイは、不満をつのらせている様にも、窮屈そうにも、諦めの顔なのだろうか?サイから色々思いの表情が伺える。まあ、お互いが通じ合っていたら、もっとサイにとっていい環境いい友達になれているだろうしね。
彼はサイに何を伝えたいのか、サイの鎧は角はどんな時に使っているのか?攻撃する為に鎧を身にまとっている訳ではなく、守る為にある鎧なのではないか、あの優しい目から何を見ているのだろう、この檻の中からどんな事を感じ、想像しているのだろう似ても似つかない2人なのに・・・ かすかに流れて来た、Fantastic Plastic Machine『There Must Be An Angel (Playing with My Heart)』

まるで動物園の檻の様に、自分達に檻を造り孤立するしかないのか、安全は確保されないという事なのか。
人類は、時々残酷だ。力があり、攻撃に対応していて準備のいい人間は狙わない。弱く、準備の出来ないもしくは、出来なくなってしまった瞬間を、ハイエナのように、仲間を連れ添って、中途半端に生半可に・・・。その結果が、安易に信じる事や助け合う事にためらいが生まれる寂しい人類になってしまった。


またしても、標識なんておかまいなしに進みだした。
お次ぎはゾウだ。4頭の像は、アジア象とインド象の2種類2頭ずつ1つの檻にいて2頭ずつ隣り合わせの、檻に入れられている。象はなんとも窮屈そうだ、象は、あまり動かない。
アジア象のモモとインド象の花子は、お互いの仕切られた柵の隙間から、長い鼻をのばし絡め合いながら言葉?鳴き声をはしている。何かを訴えているようにも見え、寂しげで明らかに何かに満足という鳴き声ではなく不満や恐怖を感じさせるものだ。二人も、その檻の前に手を繋いだまま、しばらく立ちつくしている。会話は無いというより、必要としていないと言った方が良さそうだ。


モモと花子の鳴き声は寂しく、響きわたる。周りに他に人も居ないので余計だ。
そこに立ち尽くしたままつなぐ手を、ぎゅっと繋ぎなおしていた。
彼女の頭をがさつに髪を撫で、顔から安堵の雰囲気が漂う。目から涙が、軽く流れていた。
その姿は、象と彼女の気持ちがシンクロしているようにも見える。彼は何も言わず、ただ彼女の心支えるように、彼女の体を支えていた。崩れないように、踏んばっている。
『やっと逢えたね』と彼女、『本当だね・・・』