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『オッペンハイマー』

2024-04-16 22:31:00 | 映画鑑賞
鑑賞日時:4/13(日)8時40分~
鑑賞場所:TOHOシネマズ新宿

 クリストファー・ノーラン監督は『ダンケルク』で「陸・海・空」と3つの時間軸の物語を並行させて描いたように、今回もロバート・オッペンハイマー(キリアン・マーフィー)とルイス・ストローズ(ロバート・ダウニーJr)と2つの物語を並行させつつ、カラーとモノクロを使い分けて(監督デビュー作は全編モノクロ)爽快な疾走感を持って表現し、180分間をあっという間の感覚で楽しませてくれた。

ストーリーのおさらいとしておおまかに示すと

・オッペンハイマー(科学者)原因(仮説)→結果(計算、予測)原爆開発の科学的達成と倫理的呵責
・ストローズ(政治側)原因(オッペンハイマーとアインシュタインの会話を誤解)→結果(聴聞会を画策)

 つまりは、この2人の緊張関係の描き方は、伝記映画として実在の物理学者の事績を起承転結で迫っていくような単純とはせずに、時間と因果関係の映像的操作を駆使して独特な世界観を表現しようとするこれまで踏襲されてきたクリストファー・ノーランのいつもの主観的手法なのである。

 ここでひとつの疑問が思い浮かぶ。ストローズが画策した聴聞会によって結果オッペンハイマーは共産主義者との繋がり、さらにはスパイのレッテルを貼られて公職から追放される流れを主題として映像は進んでゆく。しかしロスアラモスでの原爆実験から1ヶ月も経たないうちに広島に投下された大量殺戮の惨状はオッペンハイマーの目を背ける振る舞いだったり、幻視だったりと映像外に追いやられてしまっている。後半は関わった科学者達だけでなく妻までもが続々と証言し、オッペンハイマーへの裁きの茶番にボルテージを上げていくのだ。そうなるとクリストファー・ノーラン監督がこの映画を作る動機となるはずの※「核の脅威をもっと知ってほしい」という思いはいったいなんだったのか?原爆投下を正当化した民主党政権のトルーマン大統領や史実として過去にマンハッタン計画実現のきっかけとなるアクションを起こしたアインシュタインの姿もあったのに…いやオッペンハイマー(=クリストファー・ノーラン)が示した「世界の終末」の確率的な可能性を描くには充分だったと言われれば、それは確かにそうなのだけど…

 「クリストファー・ノーラン監督単独インタビュー」


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