ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

幸福 shiawase

2009年06月04日 | ネタバレなし批評篇
タイトルとは裏腹に、この映画には不幸を背負った人間しか登場しない。会社をつぶして家族に捨てられた男(石橋凌)、家族を捨ててスナックで働く女(桜井明美)、一家心中しそこなった男(香川照之)。そんな不幸な人々が、北海道・勇払(ゆうふつ)にある場末のスナックに集まって、香川が歌う下手クソなカラオケ“心凍らせて”に耳を傾ける。絵に描いたような不幸な光景が、(あまりにもストレートすぎて)こっけいに見えてくるから不思議である。

夢遊病患者のごとくヒョコヒョコとした奇妙な歩き方をする男と女。香川のカラオケ中TVの画面を見つめるマスター(村上淳)のどんよりと濁った眼。場違いに明るい光が扉から差し込む人生の袋小路のようなスナック“あすなろ”。不幸を隠そうとして幸福を演じている(巷でよくみかける)偽装家族などには同情のかけらも感じないが、これだけ不幸をさらけ出されると「ほっといてくれ」と言われても逆にほっとけなくなってしまうのである。

北海道などに本来訪れるはずのない白夜の季節の中で、不幸のドン底で打ちひしがれる人々はどんな白昼夢を見たのだろう。同じ境遇の男と女が(道端なんぞに落ちているわけのない)虚構の幸福を手に入れたかに見えた瞬間、その“白夜の季節”も終りを告げる。しかし、不幸が染み付いた人々が元のまっとうな生活に戻れるはずもなく、再び“白夜の季節”が訪れるのだ・・・。

幸福 shiawase
監督 小林 政広(2006年)
〔オススメ度 

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