雑居空間
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 先日Ultima IV をクリアしましたので、今度はゲームブック版の「ウルティマIV」(L・ブリティッシュ・原案、本橋信宏・著、JICC出版)をプレイしてみました。




「ゴータよ、おまえは戦士として放浪する運命じゃ」
不思議な迫力を持つ老婆の言葉――。
平和を取り戻したブリトニアに済む無頼漢ゴータは、
訳のわからぬ放浪の旅に出されてしまう。
ゴータの行く手に出現する町や村……
そこで、8つの徳を手に入れなければ、
再び元の地へ戻ることはできないという。
ルーン文字の刻まれた石を手に入れる度に、
ゴータの体の中の、何かが変わり始めた。


JICC出版局「ウルティマIV」裏表紙より



 モンデイン、ミナクス、エクソダスといった大いなる脅威が取り除かれ、平和を取り戻したように見えたブリタニア。しかしその実、人々の心は荒廃し、世情は必ずしもかんばしいとは言えない状況にありました。現在世界を脅かしているのは、強大な力を振るう外敵ではなく、ブリタニアに住まう人々の心の中にあったのです。主人公のゴータも、己の腕力だけを頼りに日々を無頼に過ごす、荒くれ者の一人でした。
 ある日ゴータは、金を奪い取るため、ジプシーの老婆を脅しつけます。しかし老婆は見た目によらずしたたかでした。のらりくらりとゴータの狼藉をいなすと、ゴータの前に8枚の黒いカードを提示します。老婆の迫力に負け、ゴータが選んだ1枚は、戦士のカード。ゴータには戦士として旅立つ運命が与えられたのです。
 これからの旅は、ゴータに欠けている精神性を得るための旅。わけもわからないままに、人々の規範となるべきアーバタールとなるため、ゴータの長い旅が始まったのです。



 全体的に、システムは軽めですね。記録しておかなくてはならないのは、武器・防具・所持品と、戦闘力(SF値)、所持金(GP)、体力くらいでしょうか。

 戦闘方法は簡単至極。主人公の戦闘力(SF値)と、敵の戦闘力(OP値)を比較して、多ければ勝ち、少なければ負け、同じなら体力を1減らして勝ち、というものです。SF値は所持している武器、防具、アイテムに決められている数値を合計するだけ。SF値は当然事前に算出されていますので、敵と遭遇した瞬間に、サイコロを振る必要も無く勝負は決してしまいます。

 体力は、<健康>、<軽傷>、<重傷>、<死亡>の四段階。「最大HPが3」とかでもいいのでしょうが、こっちのほうが雰囲気がありますね。

 魔法は薬を購入することによって使用できます。一部を除き、材料を調合する必要は無く、そのまま店で購入できるので便利です。
 冒頭にある「本書の読み方」には、魔法の薬は体力回復薬(Heal)、催眠薬(Sleep)、めくらまし(Blink)、ゲート(Gate)の4つしか記載されていませんが、魔法の効力を失わせる薬(Dispel)もゲーム中に登場します。Blink って原作では短距離移動の魔法だったんですけど、なぜかめくらましになっていますね。しかもゲーム中では、相手の目をくらませるのではなく、まやかしを見破ることに使われますし。
 原作では戦士はMPがゼロなので魔法を使うことはできませんでしたが、ゴータは使うことができるようです。

 そのほかに、アイテムではないのですが、「○○(人名)を知っていれば」とか、「○○(人名)に話を聞いていれば」とかいった、フラグによる分岐も存在しています。メモを取らなくても大体は覚えていられるかと思うのですが、このゲームはやたら登場人物が多いので、注意が必要かもしれません。全然重要じゃないと思っていた人の話が、思わぬところでフラグになっていたりすることもありますしね。



 で、プレイしてみた感想なんですが、驚くほど原作のUltima IV の再現に成功していると思います。多くの町を回り、いろんな人に話を聞いて情報を収集し、アイテムを見つけ出す。冒険をしながら少しずつアーバタールに近づきながらも、テキトーな行動を取っていると徳を失ってしまう。最期まで一人旅だったり、神殿での瞑想や迷宮探索がオミットされていたり、足りていない部分もありますが、話の進め方はまさにUltima IV そのものです。
 ゲームの進行もかなり原作に忠実ですが、ディテールにもこだわりがみられます。ロード・ブリティッシュやホークウインドはもちろん、セントリやロード・ロバートから市井の人々にいたるまで、原作に登場した人物が多数登場しています。雄牛に追いかけられている子供とか、宿屋に出る幽霊、迷宮から逃げてきた骸骨など、ちょっとした小ネタもかなり拾っています。原作ネタを詰め込めるだけ詰め込んだ、といった感じですね。

 ただ難点として、原作をそのまま持ってき過ぎたと言うか、ゲームブック化するときのローカライズにはかなり失敗しているんじゃないかと思います。CRPGでは問題なかったことが、ゲームブック化するときに酷い欠点になってしまっているんですね。

1) 町の間の移動が面倒

 とある町を出たとき、次にどこへ行けるのかは、選択肢によって縛られてしまいます。普通は1~3通りくらいでしょうか。ですので、どの町を出たら次にどこへ行けるのかをしっかり確認しておかないと、なかなか目的の町にたどり着くことができません。特にブリタニア城に戻るルートだけはやたらたくさんあるので、適当に彷徨っていると、「またブリタニアに戻っちゃったよ」とがっかりするはめになってしまいます。

2) なかなか町から出られないことがある

 どの町にも、石やアイテムなど、なにかしら重要アイテムが隠されているものですが、必要なものさえ入手してしまえば、その町にはもう用事がなくなります。しかし前述のような理由で、その町に用事がなくても、他の町に移動するときの通過点として、どうしても立ち寄らなくてはならないことがあります。
 用事がないのならさっさと立ち去ればいいのですが、実は「町を出る」という選択肢の無い町が、結構あるんですよね。そんなときは、誰か特定の人(特にお偉いさんとか)に話したりすると、会話終了後に町の外へ出るような展開になるので、それを利用しなくてはなりませんが、誰に話せば町から出られるのかを憶えていなくてはなりませんし、選択を間違えると無駄に時間がかかったり、下手をすると何か不利益を被ったりもしかねません。
 さっさと町から出たいのに、住人に絡んでいかないといけないというのは、かなり理不尽です。

3) まだ出たくないのに町から出てしまうことがある

 これは2) の裏返しですね。町には多くの人がいて、多くの建物があります。その人たちに話を聞きまくるというのがUltima IV の醍醐味のひとつです。しかし端から話を聞こうと思っても、特定の人物と会話した後、なぜか強制的に町を出てしまうことが多いのです。盗みを働くなど問題行動を起こしたときに逃げ出すというのならまだしも、なんで小汚い男に意味ありげなことを言われた程度のことで町を離れなければならないのか。まだ会話したい人が残っているのに!
 すぐにまた町にもどれるならまだしも、前述の理由から、一度離れた町に再度戻ってくるのも一苦労。結局、目的のアイテムを入手するためには、世界を何周も何周も何周も何周もしなくてはならないことになります。

4) お金を稼ぐのが大変

 このゲームでは、お金がかかるシーンが多いです。体力の回復や、武器、防具、魔法などの購入はもちろん、貧しい人に施しをして情報を聞いたり、船で移動するのにも運賃がかかったりします。それらはゲームをクリアするために必要なことです。
 お金を稼ぐ方法は、大きく二つあります。一つはモンスターを倒すこと。もう一つは盗みを働くことです。
 前者の方がまっとうな方法であることはお分かりでしょう。しかしモンスターを倒すためには、そもそも強い装備が必要です。そのためのお金はどうしたらいいのでしょうか? それでも倒せる敵はどこかにはいますので、そいつを集中的に狩りまくればいいのですが、前述の理由から、何度もその獲物を狩るというのはとても手間がかかります。しかもモンスターの落とすお金って、そんなに多くありませんしね。
 で、手っ取り早く稼げるのは、実は盗みの方だったりします。特に城なんかですと、かなりの大金が転がり込んできます。当然徳は失われますが、どうせ後から挽回することは可能です。まずは悪人プレイで懐を潤してから、じっくり徳を積み重ねていけばいいのです。……が、さすがにそれは推奨したくないです。ゴータ元々無頼漢なので、ある意味それっぽいかもしれませんけど、個人的にはやりたくない。ウルティマI からIII までならともかく、IV でやっちゃいけないでしょ。
 ということで、対策が無いわけでもないのですが、普通にプレイしようと思ったら、お金が無くてヒーヒー言わなくてはならないのです。

 結論。
 面倒。
 とても面倒。

 いろんな場所をしつこくしつこく探索しまくるというのは、確かに原作もそんな感じではあるのですが、CRPGでならともかくゲームブックでやるには煩雑すぎますね。何度も同じパラグラフを読まされるのは苦痛でしかありません。すぐに後戻りすることはできないけど、ぐるっと大回りすれば戻ってこられるという形を取っていますが、これは一方通行型のゲームブックと双方向移動型ゲームブックの悪いところを組み合わせたようで、ちょっと残念です。
 この構成は、「運命の森」と似ている部分もあります。しかし、基本的に1回で抜けることができ、2回目以降はダメだったときの救済措置的な意味合いが強い「運命の森」に対して、ウルティマIV は1回のプレイで何周もすることが前提となっています。何度も同じパラグラフを通らなければならない煩わしさは、桁違いです。せめて、街への出入りだけでも自由にさせてくれれば、プレイ感覚も大分違ってきたと思うんですけどね。

 私は結局、2回までは普通にプレイしましたけど、面倒くさくなって指栞を使いまくりのいい加減プレイに走ってしまいました。
 確かにオリジナルの持つ高い自由度をゲームブックで再現するのは大変でしょう。パラグラフ数に限りがある中で、選択肢をそう簡単に増やすわけにもいかないでしょう。しかしそれが足枷となって、ゲームの進行がぎこちなくなり、プレイアビリティの著しい低下を招いてしまいました。初めはバグじゃないかと疑ったくらい、話のつながりが悪い部分も散見されましたしね。こうなるのであれば、もっと原作の要素を切り落としてでも、ゲームブックとしての完成度を高めた方が良かったと思います。



 Ultima IV のゲームブック化としては、かなり原作に忠実な作りになっていると思います。原作のネタは盛りだくさんですし、にやりとできる小ネタもちりばめられていました。
 ただし、原作に忠実過ぎて、肝心のゲームブックとしての完成度がかなり低いものとなってしまったのは痛恨の極みです。原作love という気持ちはしっかりと受け止められましたが、Ultima IV とゲームブックとの間に、もう少しマシな落としどころをみつけることも、きっとできたはずです。
 しかしこのゲーム、私は原作をクリアした直後にプレイしたのでそこそこ楽しめましたけど、原作未プレイの人がやって面白いかなぁ? 物語はそれなりに面白いとは思うのですが……。

 JICC から出ているウルティマのゲームブックは、I からIV まで4作品あるのですが、私はこれでII とIV の2作品をプレイしたことになります。I とIII の原作版は既にクリア済みですし、II とIV だけプレイというのも中途半端ですので、そう遠くないうちにI とIII もプレイしたいと思います。


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