11月1日はいい医療の日。そこで、ゲームブック「メディカルアドベンチャー 恐怖の痙攣」(石野博士・著、金芳堂)をプレイしました。
なんて感じで、何かの記念日にかこつけて、それにまつわるゲームをやるというのは私がよくやることなのですが、記念日を過ぎてしまうとなんとなく投稿しづらくなるのが難点でもあります。そこで今年のうちに、投稿し損ねた記念日ゲームの記事を投稿しておこうと思います。
◆本書の特徴◆
本書では最近よくみられるスーパーアドベンチャーゲーム風にケーススタディーを取り扱った。
1つ1つのストーリーで読者は患者に遭遇し診断し治療する。
どんな問診をするか、検査をするか、治療をするかは読者自身が選ぶことになる。
正しい選択をすれば患者は助かるが、誤れば最悪の事態へとストーリーは展開していく。
といって成書を片手に型苦しく読んでいただく必要はない。寝ころんで物語風に読む間に正しい知識が自然と身につくという、全く新しいタイプの入門書と考えていただきたい。
「メディカルアドベンチャー 恐怖の痙攣」裏表紙より
本書の初版が発行されたのは1990年。「ゲームブック」という単語は十分浸透していたと思うのですが、「スーパーアドベンチャーゲーム風」と書かれているところを見ると、著者は創元推理文庫に親しんでいたみたいですね。
主人公は西山琢磨。二十五歳。国立H大学医学部小児科の一年目の研修医。その日当直を担当していた西山は、急患の到着を告げる電話のベルにより、浅い眠りから叩き起こされるのでありました。
患者はけいれんを起こしたという6ヶ月の赤ちゃん。適切に診察をし、しかるべき処置をしなくては、最悪の事態を招くことになるかもしれません。
システム的なパラメータとしては、患者の生命ポイント、君の環境ポイント、君の医師生命ポイントの3つがあります。
患者の生命ポイントは10からスタート。これがゼロになると、患者は死亡してしまいます。
君の環境ポイントも10からスタート。これは看護士(本文では「看護婦」ですが)や検査技師、患者の両親との関係性を表し、信頼を失うようなことをすると減点され、ゼロになると治療を続けることができなくなってしまいます。
君の医師生命ポイントも10点からスタート。これは医学的なミスを犯すごとに減点されていきます。これがゼロになるということはすなわち、医師失格ということです。
で、はじめは普通にゲームブックをプレイするつもりで読んでいたのですが……。思っていたよりもガチな医学知識を要求される本でして、私にはまともにプレイすることはできませんでした。
一応、選択肢が提示される場面はいいんですよ。選択を間違えたらポイントが減点される。まあ、当たり前のことです。しかし途中から、選択肢がなく、プレイヤー自身が答えを考えなければならない問題が出てくるのです。しかもやたら難しい。
例えばこんな感じです。
さて、そこで君は神経兆候について診察を始めた。
この子はけいれんを主訴に来たのだから神経兆候についてはできるだけたくさん、十分に調べておく必要がある。
実際、君はいろいろな神経学的診察を試みようとした。
そんななかで、今のような場合に、決して診ておくのを忘れてはならず、また必ずカルテに書いておかなければならない所見は何か。
それは二つある。
■君は何だと考えるだろうか。
正解は275にある。
君の考えを決めてから275(五十二ページ)に進め。
「メディカルアドベンチャー 恐怖の痙攣」51ページより
選択肢も無く、どんな診察をするのかを答えなければならないのです。医療関係者以外で、これに答えられる人がどれだけいるのでしょうか? 私はこの問題に出くわしたところで、本書を普通にプレイすることを諦め、単に読み進めるだけに決めました。
ちなみに正解は、「大泉門の膨隆の有無」と、「髄膜刺激症状の有無」です。わかりましたでしょうか?
で、後は指を挟みながら選択肢を全部読んだのですが、読み物としてはそこそこ面白かったです。病院を舞台として、医師も患者家族も右往左往しながら、ハッピーだったりバッドだったりしますが何かしらのストーリーが展開していき、なかなかの緊張感があります。痙攣に特化していますが医学の勉強にもなりますしね。
巻末にはオプショナルアドベンチャーとして、さらに詳しい解説や、本書の内容と関連する追加問題も掲載されています。
おどろおどろしいタイトルのせいもあって、最初はもっとイロモノかと思っていたのですが、意外にも医学的にしっかりした本でした。ゲームブックとしてまともにプレイできる人はかなり限られると思いますが、そこそこ勉強になりつつ、読み物としてもそれなりに面白かったです。
このメディカルアドベンチャーのシリーズは、巻末の広告を見ると他にも、「鮮血の瀝り」、「デッド・エンド(いきどまり)」「癌の雄叫び」などがあります。「鮮血の瀝り」と「デッド・エンド(いきどまり)」は持っているので軽く読んでみましたが、やっぱり本書と同じような感じでした。ホラー映画みたいなタイトルも同様ですしね。それらもまた、そのうちに読んでみたいと思います。
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