雑居空間
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 社会思想社・現代教養文庫、イアン・リビングストン著のゲームブック、「トカゲ王の島」をプレイ開始。

 これ以降、「トカゲ王の島」のネタばれを含んでいます。ご注意ください。



 あたし、レイン・デシンセイ。19歳のか弱い女の子、兼、凄腕の剣士をやってます。
 旧友のマンゴに会うために立ち寄った小さな漁村・オイスターベイ。しかしその村は、近くにある火山島に住むトカゲ男の脅威に晒されていたのです。
 単身トカゲ男に立ち向かおうとするマンゴ。しかしそれを黙って見送るレインさんじゃありません。マンゴとがっちり強力タッグを組んで、島に巣くうトカゲどもを蹴散らしてやりますよ。
 首を洗って待ってろよ、トカゲ王!



<現在の状況>

技術(9):9
体力(21):21
運(12):12

金貨:
宝石:
飲み薬:力の薬
食料:10

装備:剣、革の鎧、ザック



 しばらく会わない間に、マンゴはすっかり海の男になっていた。彼が慣れた手つきで帆を操ると、小船は海の上をすいすいと進んでいく。船のことはマンゴに任せて、あたしは甲板にのんびりと横になった。
 マンゴはマンゴで、ひっきりなしにくだらないおしゃべりを続けている。あたしもそれに答えながら、共に過ごした昔のことを思い出している。食事中はシリアスな話ばかりだったけれど、もともと陽気な性質だったこともあって、マンゴの口からは次から次へと言葉が流れ出てきて退屈させてくれない。
 彼のお父さんがファングの「死のワナの地下迷宮」で命を落としたという話を聞き終わり、さあ次の話題に移ろうかというとき、マンゴは飛び上がりながら大声で叫んだ。
「おーい、島が見えたぞ!」
 彼の示す先に目を凝らすと、確かに島影が見える。周辺部には緑が茂っているが、島の中央には鋭く尖った火山が不気味に突き出している。その頂上からは噴煙が吹き上がり、まるで今にも噴火してしまうのではないかと思わせる。

 マンゴは器用に船を操り、島の東端にある入り江に船をつけた。そこには大きくせり出した岩があり、うまいこと船を隠してくれそうだ。
 あたしとマンゴはいかだを降り、火山島に上陸した。ここからが冒険の本番だ。
 あたし達はまず、左手にある岩を攀じ登り、砂浜に出ることにした。
 そこは黄金色に輝く美しい砂で覆われた砂浜で、とても地獄の島とは思えないほどだった。
 砂浜の向こうに、屋根の崩れた白い石造りの小屋が見えた。あたしはマンゴに目配せをして、その小屋を調べてみることにした。

 小屋へ向かうために浜を歩いていると、突然目の前の砂が大きく盛り上がった。そしてその中から、とげのある無数の足が伸びてくる。
 砂が流れ落ちると、中から現れたのは巨大な蟹だ。こんなにデカい蟹を見るのは初めてだ。
 あたしが驚いて目を丸くしていると、蟹はまずマンゴにその魔の手を伸ばした。
「ぐあぁ……」
 あたしが助ける間もなく、マンゴは蟹のはさみに捕まってしまった。はさみはよほど強力らしく、マンゴは身動き一つとることが出来ない。

 なんとかマンゴを救出しないと。あたしは剣を引き抜き、蟹に突進した。

 ボカ、スカ。

 つ、強い……。
 なかなか巧みなはさみ捌きなのに加えて、巨体だけにかなりタフなのだ。
 あたしは苦戦しながらも、どうにか蟹を切り倒した。
「マンゴ!」
 あたしは彼を蟹のはさみから解放してやるが、その傷は思いのほか深い。あたしには一目で、マンゴは助からないだろうということがわかってしまった。
 しかしマンゴはそんな状態なのに笑みを浮かべ、ささやくようにあたしにこう告げた。
「さて、古くからの親友よ、そろそろ俺の運命も尽きてしまったみたいだな。おれなりに人様の役に立った人生だった。さあ、このおれのためにも、トカゲ王をやっつけてくれ。きっとだぞ」
 それきり彼は動かなくなってしまった。あたしは彼の両目を閉じさせ、頭をたれてしばしの間黙祷を捧げる。そして海岸端に穴を掘って彼を埋葬し、彼の剣を墓標の代わりにつきたてた。
 わが友、マンゴ。あなたの想いは、確かにあたしが受け継いだ。きっとトカゲ王を倒し、オイスターベイに平和を取り戻すことを誓おう。

 涙は流さない。
 あたしはマンゴの想いを胸に抱いて、白い小屋を目指して歩き出した。



 小屋の中へ入ってみると、そこは表からの見てくれどおり、酷い荒れようだった。家具だの壺だのカーペットだの、いろんなものが壊れ、散乱している。
 何かないかと捜してみると、汚れた敷物の下に跳ね上げ蓋見つけた。他に目ぼしいものもなさそうなので、あたしはその蓋をあけてみることにした。
 蓋を開けてみると中は小さな空間になっていて、木の箱がひとつ置かれていた。箱を取り出してみると蝋で封印がされている。なにか曰くがあるのかもしれない。
 しかし魔法だの罠だのといったものは仕掛けられておらず、その箱は思いのほか簡単にあけることが出来た。中に入っていたのは、小さな小瓶とメモ書きだ。小瓶はひとまず置いておいて、あたしはメモに目を通した。

 それはどうやら、以前にこの島を訪れた人が残したもののようだった。その人はのんびりとした生活を求めてこの島に渡ってきたものの、すでにトカゲに支配されてしまっていたのでまた本土へと帰ったようだ。そしてもう一つ、この島には毒を持った植物が多い。しかし小瓶に入った薬を飲めば、毒にやられることはないという。
 手紙は、これを読む見知らぬ誰かの健闘を祈る言葉で締められている。それを読み終わり、あたしは箱に入っていた小瓶に目をやる。
 この手紙の内容が本当ならば、ありがたい話だ。しかし、万が一罠ならば、あっという間に命を落としてもおかしくはない。

 しばらく考えて、あたしはその小瓶を手にとり、コルク栓を抜いて一気に飲み干した。
 ……。
 苦い、けど、特にどうという事もないみたい。ということは、手紙の内容は本当だった可能性が高いだろう。
 食事をとって少し休憩してから、あたしはその小屋を後にした。



 小屋の後ろに、がけっぷちへと続いている狭いケモノ道があったので、あたしはそこを登っていくことにした。あることと小一時間。頂上についた頃にはかなりの疲労がたまってしまった。そこであたしは、ここで一休みしていくことにした。
 西を見ると、島の主といった風情を湛える火山が見えた。トカゲ王が居を構えるとすれば、やはりあの辺りになるのだろうか。トカゲだけに、暖かいところが好きかもしれない。
 そうこうしているうちに、日が翳ってきた。仕方がない、今日はここで野宿をすることにしよう。



 翌朝、日の出と共にあたしは西へ、森の中へと入っていった。
 森の中には様々な怪しい植物が生い茂っている。これらの植物は、やっぱり毒を持つものも多いのだろうか。あの薬、本当に効き目があれば嬉しいんだけど……。

 それらの植物を剣でなぎ払いながら進んでいくと、どうも誰かに見られているような感覚に襲われた。あたしは足を止めると、周囲に視線を走らせた。
 !
 あたしは藪の中に半裸の男が3人いるのを見つけた。そいつらは棒と長槍で武装している。身に付けているのは腰布のみ、って……、そいつらの腰にはなんと、ちぢんだ人間の首がぶら下がっているじゃない! こいつら、首狩り族だ。やばいよ、やばいよ。
 やつら、なにやら相談しているかと思ったら、その中の一人があたしの前に出てきた。どうやら1対1でやろうってことみたい。
 いいの? 全員でかかってきた方がいいんじゃないの? ま、あたしにとっては1対1の方が好都合だけどね。
 あたしは剣を構えて、首狩り族に斬りかかった。

 ボカ、スカ。
 ボカ、スカ。
 ボカ、スカ。

 ちょっと傷ついちゃったけど、ご丁寧に一人ずつかかってきてくれたおかげで難なく撃破。だから一斉にかかってきた方がいいよって言ったのに。
 首狩り族は大したものは持っていないけど、バナナやココナッツを持っていたので、それをもらってちょっと休憩しよう。

 さて一休みしたところで、今後の予定を立てるために周辺の様子を探ろうと木に登って見ることにしましょうか。
 きょろきょろと周辺を見ると、まず南西の方角に煙が立ち昇っているのが見える。その辺りには村があるのかな。がけの上から見たときとは火山は少し方角を変えて、今は北西に見える。

 うーん。ちょっと指針を決定するには材料が足りないかなぁ。とりあえずこのまま、西の方角へ進んでいくことにしよう。


(つづく)



<現在の状況>

技術(9):9
体力(21):14
運(12):12

金貨:
宝石:
飲み薬:力の薬
食料:8

装備:剣、革の鎧、ザック



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