女性差別撤廃委の除外撤回を
国連機関からの勧告が気に入らないからと拠出金を使わせないよう求める―。トランプ米大統領を思わせるようなやり方は、日本政府の人権意識の遅れを国際社会にさらすものです。
外務省は1月末、日本が国連人権高等弁務官事務所に任意で拠出している資金を国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)には支出しないよう求めるとともに、同委員会メンバーの訪日プログラムの中止を国連に通知しました。
昨年10月、同委員会が、皇位継承を「男系男子」に限っている日本の皇室典範の改正を勧告したことに対する抗議だとしています。
■当然な内容の勧告
日本も批准している女性差別撤廃条約は、「女性に対するあらゆる形態の差別を撤廃する」ことを目的としています。同委員会は日本だけでなく、皇位継承に女性への差別にあたる問題を抱える国には同様の勧告をしています。
スペインでは女性にも王位継承が認められていますが男性が優先されるため、勧告がだされています。勧告が気に入らないからと取り消しを求めたり、拠出金の使途を制限するなどした国はほかにありません。
憲法は天皇について「日本国の象徴」「日本国民統合の象徴」と規定しています。日本国民は女性、男性、多様な性をもつ人々で構成されています。「国民統合の象徴」が男系男子に限られるべき合理的理由はありません。日本のジェンダー平等の推進にとっても重要な課題であり、同委員会の勧告は当然の内容です。
■建設的対話進めよ
さらに、日本政府の見解が同委員会と違ったとしても、それを理由に報復的措置をとるなどあってはならないことを厳しく指摘しなければなりません。
同委員会の審査は「建設的対話」と呼ばれます。各国政府と、市民社会からの報告を受け止めた委員会が平等を前進させるために対話し肯定的側面を評価しつつ勧告を行う仕組みです。
日本共産党の田村智子委員長は会見で「見解の違いがあっても対話で認識を深めていくべきだ。対話を拒否して、いきなりお金は出さないなどと通告する。情けない姿勢で許されない」と撤回を求めました。
皇位継承問題は勧告のごく一部です。勧告は、選択的夫婦別姓の導入や選択議定書批准、女性の政治参加の拡大など重要な指摘をしています。日本政府の措置は、女性の人権課題全体に対し“聞く耳をもたない”という姿勢を示したとみられかねません。
日本は勧告直後に同委員会に抗議しています。日本の拠出金も、少なくとも2005年以降、同委員会には使われていないと外務省自身認めています。にもかかわらず、あえて「見せしめ」的に拠出金で圧力をかけること自体、国際的な人権の取り組みへの軽視を示すものです。
女性差別撤廃条約の実現に向けてとりくむ女性団体・市民団体は、即日外務省に抗議し、経緯の説明と撤回を求めました。「日本政府は女性差別撤廃委員会に真摯(しんし)に向き合ってください!」とするオンライン署名も広がっています。
国際的信頼を取り戻すためにも政府は一刻も早くこの措置を撤回すべきです。
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