お巡りさんと私
私は言わずとも知れた善良な一般市民です。けれど、対お巡りさんで特殊な体験をしています。何かの参考になるかも知れないので紹介します。
ツェルマットとグリンデルワルトのお巡りさん
スイスでガイドをしている折、幾つかのトラブルでツェルマトとグリンデルワルトのお巡りさんにお世話になった。
両署のお巡りさんともガタイの良いナイスガイのお巡りさんだった。谷川警備隊の馬場隊長や伊藤隊長と同じ雰囲気だった。山岳ポリスは、環境や心構えを同じくする為人格が似てくるのであろう。
F署捜査一課強行犯係
同行していた人が登山中に遭難し不幸にも亡くなってしまった。20年前に同様な不幸な事件があり、豊科警察にお世話になった。この時は登山愛好者の刑事さんだったため、多分に共感的に捜査してくれた。今回の事故担当は、F警察捜査一課強行犯係だった。最初の一声が『あなたは、この人に生命保険とかかけましたか?』だった。明らかに犯人扱いだった。『これはヤバイ!迂闊な事は言えない。』刑事は、自分たちが組み立てたストーリに私の供述を導こうとしていた。この日の取り調べを終え、宿に戻った私は一晩寝ずに「供述調書」を図入りで書き上げ提出した。私の調書を検討した刑事軍団は、道場へ私を導いて『ザイル操作他の一切を再現して下さい。』と言った。押収した私の装備と、警察署の50m,11mmの固い長いロープを寄越した。ロープの繋ぎ、操作、技術の一切を実演した。刑事軍団は写真を撮りまくる。『何も過失は無いし、送検はされないだろう。』と呼んだが、刑事軍団はジワジワ攻めには参った。『土屋さんに過失は無いと判断しました。』の連絡が刑事さんからくるまで毎日「あなたの夢をあきらめないで」聞いていた。
ぶっ殺す!
1980年後半、前橋市で「教研集会」があった。日本右翼団体が色めき立つ集会である。彼らは50超の街宣車を繰り出して、会場周辺を『ぶっ殺す!』と大音量で回る。教研集会の本部から『土屋さん警備をおねがいします。』と言われた。何も考えず、機動隊最前線の横に並んだ。私服の指揮官が言った。『貴方達はなんですか。』『警備担当です。』『貴方がいてもどうしょうも無いんで、後ろに下がって下さい。』『俺はアントニオ猪木と分ける男だぞ。』と心では叫びながら尻尾を巻いて一段後ろに下がった。ぶっ殺されずに家に帰った。
G県警書類送検
県警から登山条例違反で送検されたが不起訴になった顛末です。三月の快晴に気が緩み、谷川岳東尾根抜け口の雪庇下で休憩をしてしまった。雪庇が崩れ同行①の渓のポパイは雪塊に直撃されS字まで飛ばされた。同行②古着屋さんは、湿雪に胸下まで埋まり身動きとれない。事件処理後、登山届未提出が発覚。沼田警察で調書を取られ、検察に送られた。さすがの検察も登山条例一本で起訴は出来ない。不起訴となった。沼田警察の取り調べは中々本格的だった。聞くと大変暇のなので、取り調べの練習をしたとの事だった。ここでもお巡りさんは、自分たちの組み立てたストーリで調書を作成仕様とした。意に添わぬ供述をした同行②古着屋さんは、口実もう一度呼び出された。
警視庁SPに並ぶ
2010年代に群馬で始めて野党共闘が成り、大物国会議員が高崎に来た。駅前で演説をするにつけ『土屋さん警備ね。』と来た。『はいよ。』と行って見ると、配置は街宣車前面に二人並ぶSPの横だった。SPは、オールバック、目や頬はナイフで削いだ様に精悍だった。当たり前だが、1mmの愛想も無い。女性SPもいた。急となれば、角田夏美ばりの高速タックルで敵を倒すであろう。
ふざけんな!
これで公安警察からマークが入ったのであろう。集会に行く度、公安が付けて来た。曲がり角で待ち伏せ『ふざけんな!善良な市民を付け回してどうすんだ。上司呼んで来い。』と息巻いた。『付けてません。偶然です。』そんな事件もありました。
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