宮沢賢治が入寮した自彊寮
実際には建物の名前だけが引き継がれていて
それでも歴史は古く
長男が退寮してから久しく訪れていませんでしたが
昨日盛岡に行く用事があり
どうなっているかなあと
懐かしく,行ってみました
先日センター試験を終えた学生たちは
誰もいない様子
学生たちの踏んだ黒光りした階段は健在なのか?
以前は隙間風が入る木製の窓枠が
すべてサッシに,どこか小奇麗になっていましたが
手動のドアなのに相変わらず自動ドアのシールが貼ってありました
寮には数々の儀式があります
その中からひとつご紹介します
「200X年 4月8日 寮歌練習① 長い廊下(迷走編)」
学校の応援歌練習と同期間,寮生は夕食後に寮歌練習を行う。
なれない学校生活でくたくたになって帰宅した寮生にさらに追い打ちをかける恐るべき行事なのである。
夕食を取り部屋でくつろいでいると突然明かりが消え,けたたましいベルの音
「これより寮歌練習を行う!一年生は廊下に並べ!」
寮長で先輩のSさんが叫ぶ
すぐに学ランを着,制帽をかぶり部屋を出た。
あんな対面式があったんだ。この寮歌練習もぶっ飛んだものに違いない。
しばらくして一年生7名が揃い,一列に並ぶ
真っ暗な中ぼろぼろの廊下が月明りで光っている
「本日の寮歌練習は9室にて行う。一人一人指示通りに動くように。わかったか!」
「イス!!」(このイスという言葉は「はい」という返事に当たり1年生が使う。イエスの略。ちなみに2,3年生は「イサ」と言い,イエッサーの略である。
どうやら先頭から指示を出されるらしく僕は4番目だった。少し安堵した。
「廊下を真っ直ぐ歩き突き当りを左へ,更にまっすぐ行くと9室だ。それでは先頭の者から9室へ行き扉をノックしろ」
「イス!」
Kが返事した。その声に緊張の色が混じる。しかしながらただ9室へ行くだけならいたって普通である。中に入った後に
試練が待っているのだろうか。
「行け」
一言,Sさんが指示を出した。「イス!」とKが返事をして足を進める。静まりかえった寮内に傷んだ廊下の軋む音が響く。
「戻れ!」
Kが3歩進んだところでSさんが指示を出した。
「え?」とKは困惑気味である。
「早く戻れえ!!」
「ィ,イス!!」
Kがスタート地点に戻ると再び「行け」と指示が出た。
こんどはゆっくりと,しかし,
「戻れ!!」
先ほどよりも苛立った声でSさんが叫んだ。
また「行け!!」
そのたびに急いで戻り,そして5メートルほど進むとまた「戻れ!!」
15往復したところで
「早くしやがれええええええ!!!,馬鹿野郎おおおお!!!,いい加減にしろおおお!!!」
9室からけたたましい怒声が聞こえてきた。机や壁を叩く音,ガラスを割る音も聞こえる。先輩たちが潜んでいたのである。
やはり,普通じゃなかった,,,。
Kには悪いがこのまま長引いて順番が回ってこないことを切に願うのであった。
「200X年 4月8日 寮歌練習② 長い廊下(閃き編)」
1年生は困惑していた。あまりにも理不尽な「行け」と「戻れ」そして追い打ちをかける怒声。
Kは既にこの軋む廊下を50往復はしているだろう。時間はどの位経ったのか見当もつかない。
なかなか「戻れ」の声がかからず,もう少しで9室への突き当りに届こうかというときもあったが,ダメ
先輩たちは怒声をあげて,楽しんでいるに違いない。
ギギギ,,,と廊下が軋みKに再び「戻れ!」
ずいぶん古い廊下なんだな,と改めて思う。軋む音にその歴史が垣間みられた。
待てよ,,。古い廊下,軋む,,,まさか,,
疑惑は確信に変わった。
分かってしまえば単純なのだが,つまり9室までの道のりを,1回も廊下を軋ませずに渡りきろということなのである。
Kもどうやら気づいたようで,慎重に足場を選びながら進んでいる。まるで地雷を避けながら進む兵士のようである。
もっともこちらの場合地雷の割合のほうが圧倒的に多いのだが。自分の番に備え,Kが作っていくルートを頭に焼き付ける。
中略
「200X年4月8日 寮歌練習③ 長い廊下(驚愕編)」
Kの尊い犠牲により,この理不尽な廊下渡りの法則は掴めた。あとは己の番が回ってくるのを,イメージトレーニングして待つだけである。
Kの次はTである。こいつは一体何往復でクリアできるだろうか。
「次,行け」
「イス!!!」
Tは何やら自信有り気に大きく返事をした。
3年間を共にした今だからはっきり確信できる。
Tは変人であると。
しかも時たま鋭く,時たま変に誠実で正義感をふるう変人だからたちが悪い。
まあとにかく孤高の変人たるTは,この恐怖の廊下渡りでそのポテンシャルを遺憾なく発揮するのであった。
あの時の驚愕は今でも忘れない。
Tは廊下を渡らなかった。
といっても儀式を放棄した訳ではない。そんなことをしたら先輩たちからどんな嫌がらせされるか,,,考えただけで鳥肌が立つ。
彼は2歩目の左足を廊下の安全地帯に置いた後,右足を大きく持ち上げ,なんと窓枠に登ったのである。
一生懸命に張り付いているその姿は,見習い忍者を彷彿とさせた。
Sさんも僕たち1年生も口をあんぐりと開け,Tを生暖かく見守った。
(長男のエッセイより)
と他にもいろんな儀式のある寮なので
毎週末心細そうな顔をした息子に会いに行っていたことをとても懐かしく訪れた訳です
岩手県立盛岡第一高校【応援歌練習・猛者踊り】
もうすぐ公立高校の入学試験です
努力が実を結ぶことを願っています
桜咲く2016
盛岡イオンモールにも寄ってきました
宮沢賢治の銀河鉄道の夜をイメージした内装に変わりました
ホールの床にあった宇宙の中で
ボールのように惑星をキックして遊べます
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実際には建物の名前だけが引き継がれていて
それでも歴史は古く
長男が退寮してから久しく訪れていませんでしたが
昨日盛岡に行く用事があり
どうなっているかなあと
懐かしく,行ってみました
先日センター試験を終えた学生たちは
誰もいない様子
学生たちの踏んだ黒光りした階段は健在なのか?
以前は隙間風が入る木製の窓枠が
すべてサッシに,どこか小奇麗になっていましたが
手動のドアなのに相変わらず自動ドアのシールが貼ってありました
寮には数々の儀式があります
その中からひとつご紹介します
「200X年 4月8日 寮歌練習① 長い廊下(迷走編)」
学校の応援歌練習と同期間,寮生は夕食後に寮歌練習を行う。
なれない学校生活でくたくたになって帰宅した寮生にさらに追い打ちをかける恐るべき行事なのである。
夕食を取り部屋でくつろいでいると突然明かりが消え,けたたましいベルの音
「これより寮歌練習を行う!一年生は廊下に並べ!」
寮長で先輩のSさんが叫ぶ
すぐに学ランを着,制帽をかぶり部屋を出た。
あんな対面式があったんだ。この寮歌練習もぶっ飛んだものに違いない。
しばらくして一年生7名が揃い,一列に並ぶ
真っ暗な中ぼろぼろの廊下が月明りで光っている
「本日の寮歌練習は9室にて行う。一人一人指示通りに動くように。わかったか!」
「イス!!」(このイスという言葉は「はい」という返事に当たり1年生が使う。イエスの略。ちなみに2,3年生は「イサ」と言い,イエッサーの略である。
どうやら先頭から指示を出されるらしく僕は4番目だった。少し安堵した。
「廊下を真っ直ぐ歩き突き当りを左へ,更にまっすぐ行くと9室だ。それでは先頭の者から9室へ行き扉をノックしろ」
「イス!」
Kが返事した。その声に緊張の色が混じる。しかしながらただ9室へ行くだけならいたって普通である。中に入った後に
試練が待っているのだろうか。
「行け」
一言,Sさんが指示を出した。「イス!」とKが返事をして足を進める。静まりかえった寮内に傷んだ廊下の軋む音が響く。
「戻れ!」
Kが3歩進んだところでSさんが指示を出した。
「え?」とKは困惑気味である。
「早く戻れえ!!」
「ィ,イス!!」
Kがスタート地点に戻ると再び「行け」と指示が出た。
こんどはゆっくりと,しかし,
「戻れ!!」
先ほどよりも苛立った声でSさんが叫んだ。
また「行け!!」
そのたびに急いで戻り,そして5メートルほど進むとまた「戻れ!!」
15往復したところで
「早くしやがれええええええ!!!,馬鹿野郎おおおお!!!,いい加減にしろおおお!!!」
9室からけたたましい怒声が聞こえてきた。机や壁を叩く音,ガラスを割る音も聞こえる。先輩たちが潜んでいたのである。
やはり,普通じゃなかった,,,。
Kには悪いがこのまま長引いて順番が回ってこないことを切に願うのであった。
「200X年 4月8日 寮歌練習② 長い廊下(閃き編)」
1年生は困惑していた。あまりにも理不尽な「行け」と「戻れ」そして追い打ちをかける怒声。
Kは既にこの軋む廊下を50往復はしているだろう。時間はどの位経ったのか見当もつかない。
なかなか「戻れ」の声がかからず,もう少しで9室への突き当りに届こうかというときもあったが,ダメ
先輩たちは怒声をあげて,楽しんでいるに違いない。
ギギギ,,,と廊下が軋みKに再び「戻れ!」
ずいぶん古い廊下なんだな,と改めて思う。軋む音にその歴史が垣間みられた。
待てよ,,。古い廊下,軋む,,,まさか,,
疑惑は確信に変わった。
分かってしまえば単純なのだが,つまり9室までの道のりを,1回も廊下を軋ませずに渡りきろということなのである。
Kもどうやら気づいたようで,慎重に足場を選びながら進んでいる。まるで地雷を避けながら進む兵士のようである。
もっともこちらの場合地雷の割合のほうが圧倒的に多いのだが。自分の番に備え,Kが作っていくルートを頭に焼き付ける。
中略
「200X年4月8日 寮歌練習③ 長い廊下(驚愕編)」
Kの尊い犠牲により,この理不尽な廊下渡りの法則は掴めた。あとは己の番が回ってくるのを,イメージトレーニングして待つだけである。
Kの次はTである。こいつは一体何往復でクリアできるだろうか。
「次,行け」
「イス!!!」
Tは何やら自信有り気に大きく返事をした。
3年間を共にした今だからはっきり確信できる。
Tは変人であると。
しかも時たま鋭く,時たま変に誠実で正義感をふるう変人だからたちが悪い。
まあとにかく孤高の変人たるTは,この恐怖の廊下渡りでそのポテンシャルを遺憾なく発揮するのであった。
あの時の驚愕は今でも忘れない。
Tは廊下を渡らなかった。
といっても儀式を放棄した訳ではない。そんなことをしたら先輩たちからどんな嫌がらせされるか,,,考えただけで鳥肌が立つ。
彼は2歩目の左足を廊下の安全地帯に置いた後,右足を大きく持ち上げ,なんと窓枠に登ったのである。
一生懸命に張り付いているその姿は,見習い忍者を彷彿とさせた。
Sさんも僕たち1年生も口をあんぐりと開け,Tを生暖かく見守った。
(長男のエッセイより)
と他にもいろんな儀式のある寮なので
毎週末心細そうな顔をした息子に会いに行っていたことをとても懐かしく訪れた訳です
岩手県立盛岡第一高校【応援歌練習・猛者踊り】
もうすぐ公立高校の入学試験です
努力が実を結ぶことを願っています
桜咲く2016
盛岡イオンモールにも寄ってきました
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ホールの床にあった宇宙の中で
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