取り調べの可視化、いわゆる取り調べの録画をしようという民主党の法案に対し、警察側は、「そんなことじゃぁ、治安が維持できない」と反対している。しかし、本当に、世界では常識になっている取り調べの可視化を拒み、被疑者の人権を侵害してまで、治安維持を図ろうという決意があるなら、なぜ、変死体の解剖をしないで病死として取り扱う現在の状況を放置できるのだろうか?変死体をきちんと解剖しもしないで、事件をつぶしている「組織」に取り調べ可視化反対の意見をいう資格はない
医療事故情報センターの総会記念シンポジウムでの岩瀬博太郎・千葉大大学院医学研究院法医学教授の話は衝撃的だ。
同教授によると、年間15万人が変死しているが、監察医制度のない地域(東京23区、大阪市、神戸市、横浜市を除く地域)では、変死を解剖する割合は、わずか4%だというのだ。いいですか、4%ですよ。残り96%は、解剖すらされないで病死で始末されているわけだ。また、監察医制度のあるところですら、20%に過ぎない。イギリスで60%、アメリカで50%が解剖されていることと比較すると、いかに、日本で事実解明をする姿勢がないかが分かると思う。
個人的な記者経験でも、ある家族で二人がある期間をおいて死亡し、二人めで殺人が疑われたことがあったが、一人目のときにはいかにも怪しいのに、警察がそれを見過ごしていた。これなどは、一人目のときに、きちんと解剖されていたら、二人目の事件は防げたかもしれない。
岩瀬教授によると、アメリカやヨーロッパでは、死因が分からない死体はまず解剖し、事件性があるかどうかを判断する。ところが、日本では、警察がみて犯罪性の有無をまず決めてしまうのだという。本当に非科学的だ。警察は神様かい!
しかも、警察が犯罪性がないと判断した場合に行うことができる「行政解剖」(これに対し、警察が行う場合は「司法解剖」といいます)の予算が信じがたいくらい低く、千葉では400万円だという。これは、10体分の費用にしかならないらしい。
そこで、実際には、犯罪性のある変死も病死で処理されているという。たとえば、こんな感じらしい。
警察官:変死体の検案をお願いします。周囲の状況からは、犯罪性はなさそうなので、あとはよろしくお願いします。
医師:検査なしじゃ死因は分からないなぁ。腹を蹴られたり、頭をぶつけて死んでも外表に異常がないことも多いですよ。行政解剖かなにかできないんですか?
警察官:当県には東京と違って予算がないもので、いつも他の先生にはこれで書いてもらってるんですよ。病死ですよね?
医師:仕方ないなぁ。胸も痛がっていたようだし、心筋梗塞にしておきます。
このモデル会話を裏付けるようなデータも紹介されている。ある地域で検案をしている医師のリストによると、1ヶ月に25例中4例が首つりで、そのほかの21例が全部心不全としたというのだ。
また、岩瀬医師は、パロマ事件を例に挙げる。2人の男女がパロマガス器具で一酸化炭素中毒死する5ヶ月前に同じ部屋で29歳の男性が死んだケースがあった。この29歳の男性のいぞくは、一酸化炭素中毒を疑い、司法解剖をしてくれと頼んだが、風呂場で死んだ死体は犯罪とは関係がないから司法解剖はいらないということで、そのままにした。その結果、5ヶ月後に2人が死ぬはめに陥ったというのだ。
岩瀬医師は、パロマで何十人かが死んだことについて、警察のせいでもあるとはっきり指摘している。警察がしっかり動いていれば、パロマの問題が発覚していてはずだというのだ。
しかも、国立大が法人化されたために、研究業績につながらない解剖部門は削られているうえ、司法制度改革のせいで、よりわかりやすい鑑定書をより早く出せと無理な注文を出されるのだという。もはや解剖制度は崩壊するのではないかという。
この状況について、岩瀬医師は、次のように、指摘している。このことを法曹だけでなく市民全員が本気で考えないといけないように思う。
「私たち法医学者は、非常に法曹に対する不信感があります。裁判官の方も、検事の方も、弁護士の方も、個別事例ばかり見ているようで、こういうシステムがおかしいと、自分たちがいま判断している鑑定書ですとか、そういうものの信用性というものを一度も考えたことがないのではないか。それを支えるシステムを考えたことがないのではないかという、非常に不信感がありますので、ぜひ、一度、お時間があるときに、もう一回、皆さんが利用しているこういう制度がこれでいいのか考えていただきたいと思います」
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★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
★「News for the People in Japanを広めることこそ日本の民主化実現への有効な手段だ(笑)」(ヤメ蚊)
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医療事故情報センターの総会記念シンポジウムでの岩瀬博太郎・千葉大大学院医学研究院法医学教授の話は衝撃的だ。
同教授によると、年間15万人が変死しているが、監察医制度のない地域(東京23区、大阪市、神戸市、横浜市を除く地域)では、変死を解剖する割合は、わずか4%だというのだ。いいですか、4%ですよ。残り96%は、解剖すらされないで病死で始末されているわけだ。また、監察医制度のあるところですら、20%に過ぎない。イギリスで60%、アメリカで50%が解剖されていることと比較すると、いかに、日本で事実解明をする姿勢がないかが分かると思う。
個人的な記者経験でも、ある家族で二人がある期間をおいて死亡し、二人めで殺人が疑われたことがあったが、一人目のときにはいかにも怪しいのに、警察がそれを見過ごしていた。これなどは、一人目のときに、きちんと解剖されていたら、二人目の事件は防げたかもしれない。
岩瀬教授によると、アメリカやヨーロッパでは、死因が分からない死体はまず解剖し、事件性があるかどうかを判断する。ところが、日本では、警察がみて犯罪性の有無をまず決めてしまうのだという。本当に非科学的だ。警察は神様かい!
しかも、警察が犯罪性がないと判断した場合に行うことができる「行政解剖」(これに対し、警察が行う場合は「司法解剖」といいます)の予算が信じがたいくらい低く、千葉では400万円だという。これは、10体分の費用にしかならないらしい。
そこで、実際には、犯罪性のある変死も病死で処理されているという。たとえば、こんな感じらしい。
警察官:変死体の検案をお願いします。周囲の状況からは、犯罪性はなさそうなので、あとはよろしくお願いします。
医師:検査なしじゃ死因は分からないなぁ。腹を蹴られたり、頭をぶつけて死んでも外表に異常がないことも多いですよ。行政解剖かなにかできないんですか?
警察官:当県には東京と違って予算がないもので、いつも他の先生にはこれで書いてもらってるんですよ。病死ですよね?
医師:仕方ないなぁ。胸も痛がっていたようだし、心筋梗塞にしておきます。
このモデル会話を裏付けるようなデータも紹介されている。ある地域で検案をしている医師のリストによると、1ヶ月に25例中4例が首つりで、そのほかの21例が全部心不全としたというのだ。
また、岩瀬医師は、パロマ事件を例に挙げる。2人の男女がパロマガス器具で一酸化炭素中毒死する5ヶ月前に同じ部屋で29歳の男性が死んだケースがあった。この29歳の男性のいぞくは、一酸化炭素中毒を疑い、司法解剖をしてくれと頼んだが、風呂場で死んだ死体は犯罪とは関係がないから司法解剖はいらないということで、そのままにした。その結果、5ヶ月後に2人が死ぬはめに陥ったというのだ。
岩瀬医師は、パロマで何十人かが死んだことについて、警察のせいでもあるとはっきり指摘している。警察がしっかり動いていれば、パロマの問題が発覚していてはずだというのだ。
しかも、国立大が法人化されたために、研究業績につながらない解剖部門は削られているうえ、司法制度改革のせいで、よりわかりやすい鑑定書をより早く出せと無理な注文を出されるのだという。もはや解剖制度は崩壊するのではないかという。
この状況について、岩瀬医師は、次のように、指摘している。このことを法曹だけでなく市民全員が本気で考えないといけないように思う。
「私たち法医学者は、非常に法曹に対する不信感があります。裁判官の方も、検事の方も、弁護士の方も、個別事例ばかり見ているようで、こういうシステムがおかしいと、自分たちがいま判断している鑑定書ですとか、そういうものの信用性というものを一度も考えたことがないのではないか。それを支えるシステムを考えたことがないのではないかという、非常に不信感がありますので、ぜひ、一度、お時間があるときに、もう一回、皆さんが利用しているこういう制度がこれでいいのか考えていただきたいと思います」
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★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
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