◆過去26年間の都立高校一般入試についてまとめた
まずは下のグラフをご覧いただきたい。
紫色が平成31年2/7(木)に発表された応募倍率。
都立高校入試が現在の単独選抜制になってからの26年間で、なんと最低の1.40倍となってしまった。
その原因はもちろん、「私立高校 授業料無償化」と「2016年度開始の新入試制度」である。
この件は以前書いたので、そちらをお読みいただきたい。
私立大学難化もあり、都立に行くより私立の大学付属校へ行く方がいいと気付いた保護者も少なくない。
中学校の都合を中学生に押し付けた結果、高校受験生が都立を見限ったのである。「私立高校 授業料無償化」で授業料の問題は解決したのだから。
2020年度、つまり今の中2が高校受験するときもこの傾向は止まるまい。
難しくなるのは都心にある上位校だけ。並以下の都立高校、イナカの都立高校へはラクに入れるようになる。
八王子東は近いうちに1.1倍くらいになるんじゃないだろうか。ほぼ全入だ。
◆同じ学費なら「私立の方がいい」のか?
都立高校か私立高校か。選択する最大の理由は「学費」だろう。
都立高校なら入学金と初年度授業料で12万円程度。私立は施設費等も発生するので80~90万円かかる。
その差は非常に小さくなった。くどいが「私立高校 授業料無償化」の結果だ。
それでも都立より私立の方が色々とオカネはかかる。私立高校に行く理由はみつからない。
私立高校は、学校ごとに教育方針を掲げ生徒を集めてきたのだ。
「自立した女性を育てますよ」とか「キリスト教の教えに則り、人を敬える子に育てますよ」とか。
だが近年は大学進学率が向上し、「高校卒業後は大学へ」がマジョリティとなった。
東京都は大学進学率が70%を超えており、都内の高校は大学進学率や大学進学実績を見て選択されるようになっている。教育方針で高校を選ぶケースは少なくなっていった。
そんなお客様のニーズに合わせ、私立高校は合格実績(進学実績ではない)を上げるため、生徒の成績を上げることに躍起になっている。
そして同じ学年でも学力でクラスを分け、成績のいい子には難関大学に合格させようとしている。
例えば私立駒込高校は
特Sコース
Sコース
理系先進コース
国際教養コース
Sコース
理系先進コース
国際教養コース
の4コースがある。入学時に成績ごとにコースを振り分ける。
同じ学年でも学力上流階級と学力下級階級が存在するのだ。
ちなみに、以前はスーパーアドバンスコース、アドバンスコースとかいう名称だった。
ころころコース名が変わるので覚えていられない。
この上流階級の高3が、合格実績の多くをたたき出す。
感覚的には「上位2割の生徒が、上位8割の合格実績を出している」といったところ。
本来ならそんな高校に行かないようなお利口さんを、「特待制度あるで!授業料も入学金もタダでええ!せやからウチの高校で3年後に合格実績バンバン出してや!」と言いくるめてかき集めている。
まぁ入る方も学費タダだし、いい気分でいい先生の授業を受けさせてもらえるのだからwin-winだ。
かわいそうなのは、そんな生徒の出した合格実績(進学実績ではない)につられてほいほいやってくる、学力下級階級の受験生。キミたちのオカネで私立高校はやっていけてますよ。いいお客さんです。
賢い保護者はそんなことを見抜くので「進学実績を教えてもらえますか」と高校に質問する。
教えてくれる高校は良心的。
「そのデータはありません」や「個人情報なのでそれはお答えしかねます」、「分かりませんな、ナハハハハ」という回答なら、その時点で限りなく黒に近いグレー。
受かった生徒名を聞いているわけではないので、個人情報じゃない。
高2、高3で文系・理系にコースが分かれるのはいい。
入学時から学力別に〇〇コースとか分けて集めている高校にはポリシーはない。
志願者の多い高校はたいてい1学年1コースしかない。
開成も早稲田実業も渋谷教育学園幕張もコースを分けて生徒募集などしない。
◆実質倍率は上がっているわけ
青色が都立入試を実際に受験した人数から出た”実質倍率”
私立・国立(こくりつ)の高校に合格したため、都立高校を受験しない生徒もいる。
よって、実質倍率は応募倍率以下になる。欠席ゼロなら実質倍率=応募倍率 だ。
90年代は実質倍率が1.2倍程度だった。
都立北園と日大鶴ヶ丘に受かったら、10人中9人は後者に進学する。そのくらい都立高校は凋落していた。
しかし2008年頃から都立が徐々に盛り返してきたのだ。
「都立が第一志望」という受験生が増えており、それはここ数年続いていた。
が、2019年度入試を境に実質倍率も下がり始めると私は見ている。
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