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千の風になって~仏教随話(6)

 秋川さんの歌で有名な曲です。紅白歌合戦でも歌われたそうですね。訳詩と作曲は新井満さんです。

      千の風になって

1.私のお墓の前で 泣かないでください
 そこに私はいません 眠ってなんかいません
    千の風に 千の風になって
    あの大きな空を吹き渡っています

2.秋には光になって 畑にふりそそぐ
 冬はダイヤのように きらめく雪になる
    朝は鳥になって あなたを目覚めさせる
    夜は星になって あなたを見守る

3.私のお墓の前で 泣かないでください
 そこに私はいません 死んでなんかいません

    千の風に  千の風になって
    あの大きな空を  吹き渡っています
    千の風に  千の風になって
    あの大きな空を  吹き渡っています
    あの大きな空をーーーー 吹き渡っています

 この歌詩のもととなる詩は、アメリカでは、追悼の式典などでよく詠まれる有名なものだそうですが、作者は不明とされていました。ニューヨークの同時多発テロの一周忌追悼式でも少女により朗読されたそうです。(原作者について新たな説もあります)
 新井氏は、友人の奥様がガンで亡くなられ、その追悼文集にあるこの詩に感銘を受け、原作を調べ、訳詩して追悼の曲としたものだそうです。

 先日、このCDを御詠歌講のKさんにいただき、とても興味を持つようになりました。原作の英文は次の通りです。下に私のつたない直訳を施しました



A THOUSAND WINDS
Do not stand at my grave and weep,
私のお墓の前で、たたずみ、めそめそ泣かないで、
I am not there, I do not sleep.
私はそこにいない、眠っていない。
I am a thousand winds that blow;
私は千の風であり、吹き渡っているし、
I am the diamond glints on snow,
私は雪の上のダイヤのきらめきであるし、
I am the sunlight on ripened grain;
私は穀物を稔らせる太陽の輝きであるし、
I am the gentle autumn's rain.
私は優しい秋の雨である。
When you awake in the morning bush,
あなたが、朝の静寂の中に目覚める時、
I am the swift uplifting rush
私はすばやく目覚めさせる鳥である、
Of quiet in circled flight.
空を飛びまわる静けさとともに。
I am the soft star that shines at night.
私は夜空に輝く穏やかな星である。

Do not stand at my grave and cry.
私の墓の前で、たたずみ泣き叫ぶ事をしないで。
I am not there; I did not die.
私はそこにいない。私は死んでいない。



 はじめにこの曲を聴いたとき、「わたしはお墓にいません」「死んでいません」・・・とすると、お墓の意味は?葬儀の必要は?石材組合さんの気持ちは?・・・などと思ってしまいました(笑)。
 けれども、よくよく詩を味わってみると、間接的に墓石や葬儀の大切さも教えてくれているのです。寺や僧侶の応援歌でもあるのでしょう。

「お墓にだけ(遺骨として)眠っているわけではなく、ありとあらゆる形となって、あなたの念ずるところに吹いて存在しているんですよ」

だから、「そこで立ち止まって泣かないでください。一緒にはばたいてください」というメッセージなのですね。英文のnot standがそんなニアンスに思えますし、weepからcryに強調している語感が見事です。sleepからdieもそうですね。

仏教でいう、「不生不滅」と言ったり、「新帰元」と呼んだり、永遠の「仏の命」を説くところと同じことを詠ったものと考えることができます。禅の「見十方仏」、天台教学では「諸法実相」ともいいましょうか。なかなか味わい深い曲です。

この曲に関連する本も沢山出ています。『千の風にいやされて』(講談社)は、寄せられた感想文集ですが、感動します。

コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
A THOUSAND WINDS (kameno)
2007-02-22 08:09:53
千の風になって~は、心に染み入る詩ですね。
以前、私は次のよう訳しました。
http://219.121.16.30/blog/archives/000651.html
それこそ、千通りの千の風になっての訳・解釈があるわけで、それぞれの千の風になっての味わいを楽しむことができますね。

私のお墓の前に立って泣かないでください
私はそこに留まって眠ってはいないから 
私は千もの吹き渡たる風となる
私はふわりと地面に舞い降りる雪となる
私はそぼふる雨となる
私は豊かな収穫をもたらす畑になる
私は静まりかえった早朝に
空に弧を描く美しい鳥の群れとなる
私は満天の星となる
私は咲き乱れる花々となる
私は静かな部屋の中に
私はさえずる鳥となる
私は美しいものすべてとなる
だから、私のお墓の前に立って泣かないでください
私はそこに留まって死んではいないから 
 
 
 
こんにちは。 (hitomi)
2007-02-22 17:03:25
お久しぶりです。



先週レンタルビデオ屋さんで初めて耳にしました。



足が釘付けになる程感動しました。

詩も曲も歌手の声も全てに癒しのメッセージがあったと思います。

週末DVDを返しに行く時に買って来ようと思います。







余談ですが、南こうせつが神田川の代二段を出すそうです。

これも楽しみです。(笑)



 
 
 
→kamenoさん (tera)
2007-02-23 08:27:12
コメントとすばらしい訳詩、有難うございます。ここのところ、更新のゆとりがなく、貴ブログでも同様に取り上げていられたのですね。

貴ページのコメントにありました「りょうさん」の意見と同じく、2行目に関心があったため、原語を調べてみたくなりました。おっしゃるとおり、訳は正に千通りもになることだと思います。

死について、永遠の命について考えるきっかけをこの歌が作ってくれたように思います。
 
 
 
→hitomiさん (tera)
2007-02-23 09:58:19
こんにちは。お元気でいらっしゃいますか。

千の風、詩にもインパクトがあり、メロディーも覚えやすく、本格的な声楽の響きがいいですね。

ところで、神田川の二段ですか。
楽しみですねえ。
当寺では、今度の花祭りに本堂でミニフォークコンサートを行うことになりました。息子の友達たちによるものです。私も一曲ということで、「防人の詩」を唄おうかと思っていましたが、難しいのでこの歌にしようかと思います。
 
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