
大造じいさんとガン 3の場面の3つめの課題
ただの鳥に対している気がしない理由
T:この前の授業で、国語の授業において大事なことを発見したよね。
S:登場人物の言動の理由は、その直前にちゃんと書いてある。
S:思い込みで読まずに、直前の文章の中の大事な言葉から、証拠を見つけていく。
T:今日の目当ては?
S:ただの鳥に対しているような気がしなかった理由....
S:あれっ、課題を作ったときには気づかなかったけれど、答えがすぐ前にあるよ!!
強く心を打たれて、ただの鳥に対しているような気がしませんでした。
S:強く心を打たれたからだ!!
S:新しい目当てがみつかったね。
T:本当の今日の目当てだね!!
S:「なぜ、強く心を打たれたのか!!」
S:心を打たれるってどういうこと?
S:強く=激しく
S:心を打たれる=心を強く動かす
S:すると今日の目当ては、「なぜ心を激しく動かされたのか!」となるね!!
S:きっと、ちょっと前をさがせば答えがある!
T:答えを予想してみよう。
S:ちょっと待って。考えがまとまらない。
62段落に「手をのばしました。」ってあるでしょ。その理由が分かると、その前が答えなのか、後ろが答えなのかが分かるんだけど...ぼくはその理由が分からないんだ!!
T:では、今日の問題を解く前に、小さな問題を解決する必要が出てきたね。
S:大造じいさんが、手をのばした理由は?
1 感動した
2 つかまえるため
3 たすけてあげるため
4 その他
S:捕まえるためでしょ。
S:それはそうだけど、ただ捕まえるとはちがうよ。
S:その直前に、鳥とはいえ堂々たる態度って褒めているから、捕まえるはないよ。
S:にらんだってあるから、ゆっくりじゃないと手が伸びないよ。
S:助けるため?
S:感動したんじゃない?
T:じゃあ、言葉だけで分からないようなので、演じてみたら?
S:片手じゃあないよね。
S:両手で..
S:捕まえるんならこうだけど、もっとこう....ふわっと..
S:大事に大事に...
S:じゃあ、感動した気持ちで捕まえたって事だね。
T:では、いよいよ今日の目当ての予想だね。
1 おとりのガンをたすけてくれたから
2 せめて頭領としての威厳を傷つけまいと努力していたから
3 ただの鳥ではないから
4 頭領らしく堂々とにらみつけてきたから
5 感動したから
多数決の結果、「4 頭領らしく堂々とにらみつけてきたから」
T:では、どの段落を調べたらいいの?
S:61段落
それは/鳥とは/いえ/いかにも/頭領/らしい/堂々たる/態度のようで/ありました。
S:それはってあるじゃない。前に繋がっているから、その前も調べる必要があるよ!!
T:では、60段落の...
S:3つめの文
そして/じいさんを/正面から/にらみ/つけました。
S:にらみ....う~ん。
S:あれっ、ここには証拠がない?
S:やっぱり61段落だ。
それは/鳥とは/いえ/いかにも/頭領/らしい/堂々たる/態度のようで/ありました。
S:でも、それは/鳥とは/いえ/いかにも/頭領/らしい/堂々たる/態度のようで/ありました。のどこで「心を打たれたんだろう?」
T:新しい課題ができたね。
S:「どこで心が打たれたか?」
それは/鳥とは/いえ/いかにも/頭領/らしい/堂々たる/態度のようで/ありました。
S:あれっ。ここで、確かに感動しているけれど、心が打たれてはいない。
S:すごいなあ、と思ったけど、心が打たれたのはもっと後だ。
S:先生、62段落を分けてよ!
T:62のどこなの?
S:後半
最後の/時を/感じて/せめて/頭領と/しての/いげんを/きずつけまい/と/努力している/ようでも/ありました。
全員一致で「努力」
S:もう死にそうなのに、必死で努力しているから、心が打たれたんだ。
S:紅ってあるから、すごい血が出てる。
S:普通なら立てないぐらいなのに、首をもちあげて、必死に気を付けをしている。
S:精神力だね。
S:努力を調べたんだけどね、一生懸命、精一杯やること。
S:精一杯威厳をたもったんだ。
S:威厳を調べたんだけどね、立派で近寄りがたい。
S:大統領みたい!!
S:死にそうなのに、大統領みたいに振る舞った!!
S:心が打たれた瞬間だね!!
T:では、今日の答えは分かったみたいだね。
S:(全員一致で)2 せめて頭領としての威厳を傷つけまいと努力していたから
77回 | 11月18日 | 土 | 9:00 | 12:00 | 天竜壬生ホール | 第1会議室 |
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78回 | 12月16日 | 土 | 9:00 | 12:00 | 天竜壬生ホール | 第1会議室 |
それから、今年は、私自身の「変な思い込み」をやめました。私の解釈に子供たちを導こうとも思わなくなったし(子どものレベルで話合って納得すれば良い)、いちいち「うん、うん、へ~」って形を求めることもやめました。1時間で絶対解決させようもやめ、1時間で解決できなければ「つづく」にして次回板書を復活させてそこから始めています。
渡辺先生が教えてくださった、「小説的な授業」の考え方に近いやり方をしています。「事前に教師は教材を研究するが、山頂やルートは決定しない。もしかしたら、山頂に到達しなくても途中の山登りの過程を十分楽しむ。」という考え方です。
もちろん、深い読みをするためには、全員が同じ土俵に乗る必要があるので、段落を絞る、文を切ることはシビアに行っています。最終的に言葉にこだわらせるので、子供たちは、おそらく1時間にそれぞら10個ぐらいは勝手に調べたい言葉を辞書でひっきりなしに調べています。
疑問が出るとそれを問題にして、必ず「答えを予想しましょう」と問いかけ、複数の答えを出してから、選択させています。
でも、本時の問題の答えが、結果的に私の解釈まで到達しなくてもよいと考えています。子供たちが、自分たちで作った課題を、自分たち全員の力で「解けた」という高揚感を大事にしています。
その結果、「今の国語、楽しい。」と言い出しました。きっかけは、ある男の子が「この国語って、おもしろい。謎解きだから。名探偵コナンみたい。」と、ポロッと言ったことです。この子は、おそらく発達障害があり、普通の国語で行われている「ここで、主人公はどう思いましたか?」という問いの答えは、全く分からなかったのだろうと思います。空気を読めないからです。でも、今の国語は、答えの根拠になる言葉を探せばいいので、見えている中から(漠然とした見え方の中から)宝石の原石を探していけばいいので、分かるのです。
子供たちが、まとめに「感想」を書くようになりました。どの子も、満足して授業を終えた様子がわかり、私としても手応えを感じています。
授業研究の会で教えて頂いたことをベースにしていますが、偉大な先生方のような授業はできないので、今年はそのまねはやめました。私流、我流で楽しく進めたいと考えています。