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支流からの眺め

武漢ウイルス後の世界(3) 流行で見えた国際社会

 人の本性は危機の時に明らかとなる。今回の流行を通して、各国の政治形態、医療制度、思考様式、衛生観念、潜在意識など様々な面で違いが見えた。前のBlogでは、従順で信頼を基とするわが国の国民性について述べた。これらを踏まえて、国際社会でわが国が取るべき行動指針を考えたい。なお、各国の特性に関しては、この先のBlogで順次考察することにする。

 今回の流行では、WHOの行動に象徴されるように、国際機関の空虚さが明らかになった。現代は、大局的には第二次世界大戦後の体制である。国際機関の中心たる国際連合は、日本やドイツを敵国と扱っている。それが証拠に、国連では慰安婦問題という虚偽は増幅してくれたが、拉致問題という悲惨な国家主権の侵害は無視し続けた。基本的に反日なのである。反日か否かの議論を措いても、国連は構造的に重大な利害関係の対立を解決できない。利害の対立する大国が拒否権を持っているからである。今回の感染症の流行では、利害の対立はまだ小さかった。感染症以外の危機、すなわち食料、水、石油、環境、難民、領土などを巻き込む紛争には、国際機関は全くの非力である。まずこれを肝に銘じるべきである。

 法の支配が及ばない国際社会では、覇権(力)が掟である。現代の覇権国はアメリカであり、その力は強大である。軍事力(圧倒的な戦力)、経済力(基軸通貨たるドルの力)、資源力(石油・食料の生産力)などのハードな国力だけでない。ソフトな力である科学(論文数や特許数)や文化(映画や芸術)、言語(国際共通語の英語、ITソフトの独占)などにも強さが及ぶ。他に有意な国力を有するのは、欧州各国、露国、中国、そして日本である。それ以外の国々(東南アジア、印度、中南米、中東、豪州、アフリカの諸国)は、夫々に特徴があるが、現代の世界の覇権構造には余り意味をなさない。

 有意な国力を持つ国々は、覇権国(米国)に敬意と嫉妬の混じった複雑な感情を抱いている。密かに凋落を望んでいるかもしれない。挑戦的態度をとる国もある。これは覇権国である限り宿命である。欧州各国は単独では敵わないとみてEUを形成し、ドルに対する共通通貨ユーロを創出した。しかし、加盟国にはそれぞれの歴史があり、国民の誇りも高い。離脱を決めた英国、孤高に苦しむ独など、意思の統一は困難である。露国と中国は共産主義国であり、民主主義を掲げる米国とは一線を画してきた。国民の支持を得るためにも、米国を牽制している。しかし、本気で戦えば敵わないことも承知している。

 この覇権の構図の中でも共通する価値がある。経済的利益(お金、金儲け、富)である。人権や政治に関する主義主張はもとより、人智の及ばぬ宗教や神仏、道徳や信頼などの倫理、自尊心に響く感情までも、お金を生み出せば価値がある。逆にお金を生み出さなければ、無視され時に迫害される。国は他国と共栄しようとするだけでなく、富を吸い取とる機会も窺っている。その手段には暴力もあるが、主義、宗教、倫理、感情も利用する。多国籍企業も、富のために国を破壊することを厭わない。しかし、国民の人権を守れるのは自国だけである。国という共同体がなければ、非情な国際社会では存命できない。国を失った民には悲惨な末路が待っている。
 
 わが国は、日本民族が他国を侵略して建国した国ではない。気が付いてみれば日本人が居た、いわば自然発生的に生まれてきた国である。生まれた後も、幸いに海という障壁のお蔭で海外からの襲来を撃退し、文化的侵略も消化しつつ受入れる余裕があった。だから、国土や国は所与のものと思い、国民も従順と信頼を重んじて国を奉じてきた。唯一侵略を許したのが戦後の米国による占領である。しかし、またも幸いなことに、占領国は自由と民主主義を掲げる寛容なる勝者であった。未だ基地を占領されているが、その代償として共産圏に対する抑止力を得ている。この奇跡的な幸運の反動として、国民の「国に守られている・国を守る」という意識が乏しい。

 これらの国際情勢と自分のツキを理解した上で、非情な国際社会に対する安全保障体制を構築しておくべきである。今回の感染症対策でも、自衛隊の大活躍にも拘らず政府の対策本部に防衛省は関与しなかった。ここに、甘さを感じる。軍事的な安全保障では、米国と協同する以外の選択肢はない。米国依存を脱すべく自国の戦力を高めることはあろう。経済的な安全保障も、西側諸国との共同体制が基本となる。その上で、自国内の産業保護を図り、列島内で自給できる体制作りが必要である。海外で異変がおこれば、製造ラインが止まり社員を召還することもできない。

 日本はもっと自分(自国)の幸運に思いを致し、それを生かして国益の最大化を図るべきである。その成果を国民に還元できる外交戦略は、決して難題ではない。つい隣の半島国家の悲惨な歴史と現実をみれば、その幸福度が実感できる。



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