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支流からの眺め

武漢ウイルスと経済崩壊(2) デフレに日本人の心を推す

 武漢ウイルス感染症(WARS)の流行に対して、広く営業自粛の要請(ほぼ強制)が行われた。その結果、先のBlogで述べたように、消費が急激に抑制されて強力なデフレ圧力となり、経済崩壊が懸念されている。ちなみに、わが国は既に長くデフレ状態にあるとされる。そこで、今まで続いてきたデフレについてまず考えてみたい。

 デフレとは、端的には持続的な物価の低下である。物価が下がれば生産者の利益が減り、社員の賃金が下がり、給与が減るので消費が落ち込み、消費を上げようと価格を下げれば物価が下がり・・この悪循環がおこる。経済成長は止まり、失業者や生活困窮者が増える。国民は貧困に陥り、政府や自治体も財政がひっ迫する。世界規模のデフレは1929年からの大恐慌であろう。日本での2.26事件や、ドイツでのナチスの台頭は、デフレによる経済不安、貧富の差の拡大が要因のひとつであった。従って、デフレは良くないこと、克服すべき課題だとされる。

 この30年ほどわが国はデフレ状態にある。他の国はその間に経済成長した。その結果、わが国の経済規模や国力は相対的に弱くなった。GDP [総額、世界のGDPに占める割合、順位/ 一人当たりGDP、順位]でみれば、1980年で既に[250兆円、10%、2位/ 1万ドル、24位]であり、14年後の1994年には[500兆円、18%、2位/ 4万ドル、3位]まで成長した。ところが、その24年後の2018年は[560兆円、6%、3位/ 4万ドル、26位]となってしまった。アメリカに肉迫した後そこで停止してしまい、他に抜かれたのである。一人あたりのGDPが低いのは、生産性が低い、人件費が安いと読み替えられる。国を挙げてインバウンドに狂騒したが、なんのことはない、日本国民が買い叩かれていただけである。

 政治家や経済人はデフレ脱却を求めている。多くの国民もそうだろう。経済政策として、いわゆる国の借金を1200兆円まで伸ばして、金融緩和(金利の低下や貨幣の発行)や政府支出(公共事業など)を行ってきた。企業活動をやり易くして活性化するために、規制も緩和した。しかし、それでも経済成長につながらない。ただし、お金がなくなったわけではない。成長予測が悲観的なので企業は設備や投資を控え、小金持ちも老後が不安で貯金に励み、お金が淀んでいるのである。株や土地は投機的なお金が買い支えている。

 しかし、考えてみれば、経済規模が停滞していたとはいえ、わが国のGDPは世界3位にある。国内の治安はきわめて良好で、街角は清潔さを保っている。不満はあるが、政治的動乱が起こるとも思えない。デフレが30年続いたと言うが、失業率は極めて低く、物価や給与は「低下した」というより「上がらなかっただけ(安定していた)」というのが実感だろう。これは蓋し、善政だったのではなかろうか。叩きのめされた終戦の1945年からまた陽が昇った1980年までは、たったの35年である。これだけ急速に成長すれば、それが続くと思う方がおかしい。

 そもそも、経済活動が活発な社会とは何か。3分おきに世界中に飛行機を飛ばし、グルメだ珍味だと騒いで健康を害するまで過食し、すべての病気を克服して1日でも長生きしようとし、カワイイ衣服やブランド品をはしゃいで着飾り、家中を便利な品で埋め尽くし、高級外車をこれ見よがしに乗り回し、劇場やスタジアムで大声を出して熱狂し、公共財の電波を使って欲望を刺激し続ける・・そういうことなのか。確かに人の望みを叶えれば、お金を得て、感謝され尊敬すらされるだろう。しかし、果てしなく叶え続けるのか。経済活動が強制停止させられた今、疑問に思う。

 わが国は極東の島国である。人口の大きさ、国土の広さ、資源の量、地理的な位置からみて、相応というものがある。文化的にも節約・清貧が美徳であり、控えめで忍耐強い人は尊敬されてきた。経済活動とは生産活動ではなく消費活動である。節約を美徳とする社会においては、消費が浪費になれば道徳的に忌むべき行為となる。限られた国土と資源を大切に使ってきた日本人が、地球の中で適当な大きさに収まろうとすれば、この程度が妥当にみえる。この30年間のデフレは、日本人の内なる欲望が1980年のレベルで「足るを知る」に至っていたことの証明になっている。

 欲望を満たし続けるなか、多くの日本人は「これはやりすぎだ」と思っていたのではないか。今回の急ブレーキを機に、見直してみたいところである。

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