武漢ウイルス感染症(WARS)の流行は悪化の一途である。これだけ大問題となれば社会が揺すぶられ、大変動が起こる。以前のBlogでは、政治家で失点したのは首相、得点を上げたのは都知事だと述べた(文末)。横浜市長選はどうか。
周知の通り、山中竹春氏(48歳)が50万票(33%)を獲得して当選し、首相の後ろ盾のあった小此木八郎氏(56歳)は32万票で次点、現職の林氏は3位で20万票であった。IR誘致では、山中、小此木両氏は反対で立場の違いはない。首相の後ろ盾は、小此木氏に有利のはずである。しかし、WARSの専門家は自分しかいないという山中氏の訴えは、不安に慄く市民、とりわけ浮動層に訴えたようである。選挙戦の終盤に伴い流行が悪化したことが山中氏には幸いし、なだれ込むような勝利であった。要するに、WARSで勝利したのである。
山中氏は、早稲田大学理工学部数学科卒のデータサイエンスの専門家で、医学部教授であるも医師ではない。米国NIHや国立がん研究センターで勤務の後、2014年に横浜市立大学医学部教授となった。同大のデータサイエンス学部の立ち上げに尽力し、学長補佐も務めていた。WARSの中和抗体がワクチン接種後も長期間存在することを日本人で証明し注目を集めた。山中伸弥京大教授と同姓なのも幸いしたかもしれない。立憲民主党に担がれ出馬し、選挙運動中もハラスメント疑惑が上がるも、それを蹴散らしての当選であった。
小此木氏は、元衆議院議員の彦三郎氏(菅首長は同氏の秘書を務めた)を父に持つ名門で、跡目を継いで1993年に衆議院議員となり、以来8期を務めるベテランである。自民党神奈川県連会長、経済産業副大臣、内閣府特命担当大臣等を歴任し、最後の職は国家公安委員会委員長である。今回の出馬に向けて、IR反対の立場を明確にした。不満の建設会社との確執も菅筋の政治力で抑えこみ、多数の自民党議員の支援も受けた。序盤戦は有利に進んだが、WARSには無力と思われたか、敗北した。政治家を引退するとも言われる。
著者は横浜市民ではないし、特定政党の支持者でもない。しかし、今は与党である自民党政権に政治を委ねているのであるから、与党の考えを質すことはあっても、反対のための反対、代案のない不平を言い立てるのは賛成しない。その点、小此木氏のほうが、与党側であって政府の意向を反映した施策が円滑に行えるであろう。ましてや、菅氏自身が横浜市議から首相に成り上がった人である。これらの事情に反して小此木氏が大差で落選したのは、それ程までに菅氏が嫌われた、その運に付き合わされたということになる。
対して山中氏は運に恵まれた。幸運と理系の脳を生かして、市長として奮闘されることを祈りたい。しかし、不安も大きい。氏には政治経験が殆どない。新進気鋭の学者でも、管理職の経験は大学の講座主任や副学長だけである。官僚はまだしも、自民・公明で過半数の市議会、曲者の黒岩知事、面白くない政府首脳部との関係をどう保つのか。肝となるWARS対策や福祉政策も、財源の裏付けはなく、データ解析だけで斬新な新機軸を打ち出せるのだろうか。むしろ、その重荷に負けてプッツンしないか、他人事ながら心配である。
この予想外の展開は、もちろんWARSが決めた。次に決めるのは首相の去就であろう。市長選の印象を訊かれた時、首相の第一声は「大変残念な結果」であった。確かに個人的には残念であろう。正直と言えばそうである。しかし、これでは横浜市民の見識を否定している。市民の信託を得た新市長の誕生をまず祝して、是々非々で協力関係を築いていきたいという程度のことが言えないものか。禍の言葉は自らに降りかかるという。いよいよご自身に「大変残念な結果」を引き寄せるのかもしれない。