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支流からの眺め

WARS流行に明るい見通しーその先を

 この1年余りというもの、武漢急性呼吸器症候群(WARS)で世界中が振り回された。昨年の春先は、クルーズ船での集団発生、有名人の突然の死、逼迫する医療現場、緊急事態宣言下の静まりかえった繁華街など、国民の多くは恐怖の中に叩き落された。夏を迎えて流行はやや収まったが、その間のGOTO政策の反動か、年末年始には仕返しを受けた。しかし、流行が長引きその実態が見えてくるにつれて恐怖は薄らぎ、第4波では行政の呼びかけにも人流は余り減っていない。「それほどは怖くなさそうだ」というのが、多くの国民の実感であろう。

 著者は発生当初から、「WARSは2年くらいで終息に向かう、その後は常在感染症のひとつになる、恐怖による精神の不安定の方が危険である」などと述べてきた。医学が未開の時代でも、大流行は2年から数年で自然に消褪したのである。いわゆる集団免疫とでもいうべき状況が生み出される(多くの人が抵抗性を有する、抵抗性を有する人だけが生き残る)からである。現代においても、決定的な方法はない以上、何をしても不完全となる。従って、それまでの期間の被害を最小限にし、精神的に耐え忍んで乗り切ること、あわよくばその期間を短縮することが、政策の肝である。

 為政者は、慌てず、焦らず、諦めず、科学的に、分析的に、現実的に考えて、その時々で至適と考えた政策を打つしかない。その政策は、感染者への医療提供、感染予防策の施策と啓発、そして補助金や補償金の給付などである。あわせて、この先の見通し・予測を述べながら、苦境に耐えるよう繰り返して呼び掛けることになる。政策は臨機応変に修正されるべきであり、国民はその修正を容認しなくてはならない。見通しも間違えることが前提である。しかし、取りあえずはその方向に進むしかない。WARSはいずれ収まるのである。

 最近、終息までの期間が短くなる希望が出てきた。ワクチンの登場である。この短期間でのワクチン製造には、mRNAを利用する手法(理論はあったが現実のワクチン開発に利用されたのは初めて)が生きた。日本も出遅れたが、半年以内の遅れに留まり、今や急速に接種が進んでいる。これが、いわゆる集団免疫を達成し、この先は感染が急速に改善に向かうことが期待される。その傾向が明らかとなれば、ぎりぎりながらオリンピックの成功も現実となる。それは、まさに医学の勝利である。

 振り返れば、WARS流行は多くの脆弱性(と対策)をあぶり出した。マスクやアルコールの不足(衛生資材の供給路を確保)、医療崩壊(医療提供の効率化と流行時の統制強化)、現金給付やワクチン接種の事務的遅延(個人情報のデジタル処理)、命令指示系統の乱れ(非常事態の予行訓練、空疎な管理より現場への信託)、不安に弱い日本人(より深刻な危機への準備)、ワクチン開発の遅れ(安全保障の観点でのワクチン対策)、過度な人口の集中(テレワークや遠隔会議)、などである。

 他にも見えたことがある。まず「情報の発信者バイアス」である。医療崩壊だと言う医師会長は、診療・入院できない事態の言い訳をしていた。政策を批判する野党の政治家は、感染症の流行を政治的に利用していた。あれこれ物議を醸しだす首長は、次の選挙のため注目度を上げようとしていた。不安を煽るマスコミ報道は、視聴率を上げるために怖い演出を行っていた。もう一つは、「個人や国家の本性曝露」である。流行に際して、家族や知人の人物像がより明らかとなっただろう。お国柄もそうである。

 変異種の発生などで暗転する可能性はあるが、WARSは終息に向かいつつある。見通しが明るいことは間違いない。流行中の経験・教訓を生かし、今やPost-WARSの生き方を考える時である。

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