これはだめだ!

自信喪失、無気力な日本に”喝!”、反日、侮日に反撃、一矢を報いる。

北朝鮮の再調査結果、予想される問題点(1) 救う会全国協議会ニュース(2014.09.01)

2014-09-03 | 朝鮮半島

 救う会・救う会東京は、8月28日、東京・文京区民センターで第81回東京連続集会を開催した。近く北朝鮮が拉致被害者に関する再調査結果を出すと約束した。集会は、予想される問題点などについて、元拉致問題担当大臣の中山恭子参議院議員(拉致議連副会長)をお迎えし、西岡力救う会会長とトーク形式で実施された。在京家族会から飯塚繁雄・家族会代表、横田滋・早紀江前代表夫妻、増元照明事務局長、本間勝さんが参加した。 

(項目)
① 北朝鮮の再調査結果、予想される問題点
② この合意では非常に危険 
③ 平壌宣言にのっとると拉致が出てこない 
④ 当時は拉致被害者が犠牲になっても国交正常化 
⑤ 日朝協議は被害者を取り戻すための犯人との交渉 
⑥ 人質解放は相手の政府まかせという戦後病 
⑦「私は家族の側ですから」
⑧ 被害者を返す決断の証があれば制裁解除も納得できるが 
⑨ 交渉継続のための制裁解除は許されない
⑩ 被害者解放の証なしで人道支援をする可能性がある
⑪ 残留孤児帰国で「人道支援」の危険性も 
⑫ 国交正常化したら被害者は帰ってこない 
⑬ 国交正常化すれば拉致情報が出てくるというのは幻想  

 概要以下の通り。数回に分けて発信します。 

北朝鮮の再調査結果、予想される問題点 

西岡 みなさんこんばんは。緊迫している中ですが、向こうが何を出してくるか分からないので何とも言えない気持ちで待っています。古屋大臣にここに来ていただいても、「言えません」とばかりおっしゃるのではないかと思って、今政府を離れて野党におられますが、第1次安倍政権の時に拉致問題担当首相補佐官をされた中山恭子先生に来ていただきました。 

 福田康夫政権の時には担当大臣、麻生政権の時には首相補佐官とずっとこの問題に関わってこられました。2002年に5人が帰ってきた時から、当時は参与という立場でしたが、私たちと一緒に、全員取り戻すことで戦ってくださった中山先生の目から見て、今の状況がどう見えるのかということを討論して、皆さんの頭の整理をして、何が出てきてもいいように、全員取り戻すためにどうすればよいかということを今日考えてみたいと思っています。 

 みなさんのお手元に3つの資料をお配りしました。まず、5月29日に日朝政府が合意した時の合意文書。そして7月1日に北朝鮮が日本政府に対して説明した「特別調査委員会」に関する説明の概要。これは政府が配ったものです。それともう一つ。メールニュースでは発信しましたが、実は合意文書が出て、2週間も経たない内に、維新の会として政府に申し入れをされました。長いものですが、一言でいうとこの合意文では危ないと読めたというものです。 

 維新の会の拉致問題対策委員会の委員長は中山先生でした。中山先生がこの合意文書を見て、「よかったですね」「期待しています」ではなくて、危ないところが多いと見られて、維新の会単独でこれだけの文書をまとめて総理に提出されたわけです。  

 その危ないのではないかという危機感は、今も変わっていないのではないかと思います。もちろんよくなってほしいし、全員取り戻したいと思っているんですが、取り戻すためには何が必要なのか、冷静に考えておくべきことを今日議論したいと思っています。
 
 
中山先生にまずお聞きしますが、5月29日の合意文書を見た時、一読されてどう感じられましたか。  

この合意では非常に危険  

中山 5月29日の夕方テレビで、「合意ができた」「多くの人たちが帰ってくるのでないか」という非常に大きな期待を持たせるような放送がありました。その直後に、どんな合意文書ができたんだろうと思って、手に入れて読み始めた途端に、「ちょっと待ってほしい。これでは被害者は誰も帰ってこれないんじゃないか」という印象が非常に強くありました。  

 読み始めた最初のところから「これはちょっと違うところがあるな」というのが第一印象です。前文、日本側が行う措置、北朝鮮側が行う措置ですが、読めば読むほど、これだけでは拉致被害者は帰ってこない可能性の方が強いという思いがあり、その問題点を慌ててまとめました。  

 実は6月1日に、茨城県の那珂市で「国民のつどい」があり、その時はみんな「よかった、よかった」という雰囲気でしたので、水を差すような形になったとは思いますが、「この合意では非常に危険がある」「懸念して対応しないといけない」と申し上げました。  

 そして維新の会として、安倍総理に、「注意してください」「これでは危ないです」という申し入れをしたのです。  

西岡 茨城県での集会での映像をニュースで見まして、大変冷静に、心配だということを前面に出しておられ、私と同じ考えだなあと思ったことを記憶しています。
 私が一番心配だったのは、「被害者の安全の確保」でしたが、まず維新の会としてどこが問題だと思ったのか。まず前文ではどこが問題だと思われましたか。 

平壌宣言にのっとると拉致が出てこない

中山 はやり最初に、「双方は、日朝平壌宣言にのっとって、不幸な過去を清算し、懸案事項を解決し、国交正常化を実現するために、真摯に協議を行った」とあります。2002年9月17日に両首脳が合意したものですが、この平壌宣言は拉致問題にまったく触れていない。「懸案事項」の中に含まれているような宣言です。 

 この宣言にのっとってということであれば、拉致問題は脇に追いやられた合意になるだろう。まず最初の1行目にこの形が出てくるのは拉致問題としては残念な話だと思いました。 

西岡 確認しますが、平壌宣言には拉致という言葉は入っていないんです。日朝間の懸案について再発防止を約束したというんです。ということは、もう既に解決したという表現にもなっているんです。  

 しかし、あの時点では5人の被害者さえ取り戻すことができていなかった。 
「8人死亡」と一方的に言われている段階で再発防止を約束した。外交文書だから表現で拉致ということを書かなかったということを百歩譲って認めたとしても、再発防止を言ってる場合じゃないだろう、と思った記憶があります。  

 もう一つ、あそこで北朝鮮は、核開発、ミサイル実験をしない、国際約束を守ると書いてあるんですが、既にあの時点でアメリカ政府は、北朝鮮がパキスタンから濃縮ウラニウムを作る技術を入手して、濃縮ウラニウムを原料とした核開発をしているという確実な証拠を持っていたんですね。 

 同盟国のアメリカからもらった情報よりも、金正日があそこで口約束したことを信じてサインしてしまったという点でも大変危険な文書だったと私も思っています。 

当時は拉致被害者が犠牲になっても国交正常化   

中山 平壌宣言では、金総書記が拉致を認めて謝罪すれば、被害者救出は全く念頭になくて、謝罪すれば日朝国交正常化をすすめるという考え方に基づいて合意がなされているわけですから、被害者救出という概念、考え方が、当時の日本政府というか日本全体と言ってもいいかもしれませんが、その考え方がなかったと言ってもいいほどでした。  

 拉致被害者が犠牲になっても国交正常化をすすめるべしというのが日本全体の考え方だったわけですから、その考え方にのっとって合意された宣言です。だから拉致被害者とか救出という単語も出てこないという平壌宣言でした。今回もそれにのっとってすすめるというのですから、心配です。  

日朝協議は被害者を取り戻すための犯人との交渉 

西岡 2002年の9月17日の段階では、中山先生はまだ政府の中におられなかった。外で見ていてくださったんですが、簡単に言いますと、9月17日に政府は確認作業もしないで家族に「死亡」と伝えたんです。 

 そして平壌から帰ってきた次の日、18日の朝、安倍官房副長官が出勤前に、家族会が泊まっているホテルまで来てくださって、「確認作業をしていなかった」ということを伝えてくださったので、まだ死亡は確認されていないことが分かったんですが、それまで日本中が「死亡」と書いていて、「遺族」と言われていました。 

 さらに確認作業をした外務省の梅本駐英大使館公使を家族に会わせないでロンドンに送ってしまおうことを外務省が決めていたんです。私たちは安倍さんが来てくれて、確認作業をしていないことが分かったので、梅本さんを探したら、「今買い物にいっていて連絡がつかない」とか色々言われて、その日の夜になってやっと会えました。

 しかし、地村さんのお父さんと浜本さんのお兄さんは梅本さんに会えなかった。 つまり、20数年ぶりに被害者に会った担当者を家族に会わせないで、少なくとも地村さん、浜本さんについては会わせないでロンドンに返してしまったんです。 

 助けようという姿勢がないまま作られたのが平壌宣言だったということを私も目撃していて、そうだなと思ったわけです。しかし、それがここにも入っている、つまり外務省は「決めた文書は大切なものだ」と言うんですね。「これを基礎にしてやらなくちゃいけない」と言うんです。 

 ここに今後の交渉を見るカギがあると思うんですが、私は今の交渉は外交交渉じゃないんだと言っています。被害者を取り戻すための犯人との交渉なんです。
相手を普通の国としてお互いに承認して、約束したことは守りあいましょうと、いくつかの譲歩をしながら仲良くするためにどうしましょうと決める交渉ではない。 

 犯人が人質をとって立て籠もっている。警察は(犯人と)連絡を取らなければならない。「(被害者に)手をかけたら許さないぞ、安全を保ちなさい、要求は何だ、全員返しなさい」と。 
 その全員ということについては、譲歩の余地がないわけですよね。でも外交交渉になってしまうと、「何人かでいいのではないか」という発想になりかねない。

 ここが一つのカギだと思うんですが、中山先生は外務省の外でずっと仕事をされていたんですが、最後に外務省の大使になられて、人質解放交渉を中央アジアでなさったんですが、その時に外務省のことについて感じたことがあると言っておられましたが、その話を少ししてください。  

人質解放は相手の政府まかせという戦後病 

中山 北朝鮮の拉致問題の重さ、大きさ、複雑さに比べれば、中央アジアでは人質になった時に情報が入ってきました。人質になった時は一刻も早く相手方と交渉して救出しないと、非常に難しい状況が出てきます。拉致問題は最初の被害者から考えると40年近く経っていますので、本当に難しいなと感じます。 

 中央アジアの場合は、99年8月24日未明に、日本人鉱山技師4名がキルギスで人質になったとの情報が入ってきました。その日から動きました。この話をすると非常に長くなりますので、「ウズベキスタンの桜」には相当詳しく書いておきましたので、もしお時間があったら読んでいただければと思います。 

 いずれにしても、戦後ずっと同じ状態であったと考えていますが、敗戦後の日本で日本国民が海外で被害にあった時日本としてどう対応するかですが、その事件が起きた国の政府にすべてをお任せする。これが戦後日本の外交です。それがずっと続いてきているわけです。嫌な思いはせずに、相手の政府に救出を頼むのが日本の戦後の外交でした。 

 それがずっと貫かれていて、この人質事件は北朝鮮政府そのものが関わっているにも関わらず、交渉する段階では北朝鮮政府にお任せをするという考え方が続いていたであろうと考えます。これでは救出なんてできっこない。 

 日本政府がまた日本全体が真剣に北朝鮮と交渉し、救出活動をしない限り、人質を救出するのは無理だと思うんですが、そういうことは戦後一切なされていません。ある意味では敗戦シンドローム、敗戦病といいのかもしれません。そういうところまでこの問題は関わってくる。また、日本の憲法そのものに関わる問題だといってもいいと思います。  

⑦「私は家族の側ですから」  

西岡 中山先生が家族担当の参与になられた日の夜私はお会いしていて、そのキルギスでの話を簡単にお聞きして、その時印象に残っている言葉は、「外務省は冷たいんですよ」ということです。  

 実はその次の日の朝、田中均局長が初めて家族の前に出てくるという日でした。

 田中均局長が中山先生を家族に紹介する段取りだと私は聞いていたので、「それはやめた方がいい」、「時間がないので端的に申し上げますが、田中均局長と私たちは立場が違う」、「確認をしないで『死んだ』と言った人たちに私たちは怒っている」ということを申し上げたら、「事情はよく分からないが外務省が冷たいということで、そういう気持ちはよく分かります」とおっしゃった。  

 そして椅子を持ってきて、「私はこちらの側ですから」と言って、家族の後ろに座られた。私や蓮池透さん、増元さんが田中さんにどなっていたんですが、こちら側に座っておられたのを覚えています。  

被害者を返す決断の証があれば制裁解除も納得できるが  

西岡 合意文書に戻りますが、1行目の「日朝平壌宣言にのっとって」というところが問題だということでしたが、それ以外に前文で問題と思われるところはどこでしょうか。  

中山恭子 そうですね、「日本が独自に取っている北朝鮮に対する措置を解除」というところがありますが、これは北朝鮮が何をしたら制裁を解除するのか。調査委員会を立ち上げた段階で日本側は制裁を解除する。どう考えてもバランスがとれていないと思いませんか。 

 「調査委員会を立ち上げました」、「ああそうですか。では解除しましょう」ということですが、解除する行動を取るのであれば、北朝鮮側もそれに対応する何らかの行動を取ってもらわなければいけない。 

 この制裁は、北朝鮮側、当時は金正日総書記、今は金正恩第一書記が被害者を解放するという決断を迫るために、決断してもらうためにかけています。解除するのであれば、「調査委員会を立ち上げました」ではなくて、北朝鮮側が何らかの形で「解放する決断をしました」という証が必要と考えていました。 

 ところが、北朝鮮側がそういう行動を何もせず、「調査委員会を立ち上げました」という連絡があっただけ。どういう人がなったかということは書いてあると思いますが、それだけで制裁解除というのはあまりにもバランスが悪い、やってはいけないのではないか。何らかの決断の証があるのでしょうね。例えば被害者のリストを政府はもう入手したと考えていいのか。そういう心配です。 

 被害者のリストがない限り制裁を解除してはならない。決断がなされたという証を確実に取って制裁を解除するというのなら納得できますと申し上げてきました。 

西岡 しかし、表向き、リストがあるとは政府は言っていませんよね。日本経済新聞はリストが来たようだという報道をしましたが、「それはない」と言っている中で制裁が解除されてしまったということですね。  

交渉継続のための制裁解除は許されない  

中山 そうですね。交渉を続けるためにこの制裁解除を使ったということが許されるのだろうかと、そんな心配もしています。私自身は、政府は何らかのリストを入手しているに違いない。そうでなければ制裁解除はしないはずだと考えているんですが、それが¥もしなかったら、何と言っていいのか分かりません。  

西岡 政府の説明は、解除した制裁は大変小さいものだと言っています。それからもう一つ。「北朝鮮が出してくる調査結果がひどいものだったらもちろん制裁をかけなおすんですよね」と言ったら、伊原局長は、「今交渉が進んでいる最中に北朝鮮が変なものを出してきた場合という仮定で話をするのはよくないと思います」と言われました。  

 安倍総理は読売新聞とのインタビューで、「当然制裁は北朝鮮が肯定的反応をするために使うので、変なことになれば制裁をかけなおすことは十分ある」と。そして、「人道支援は一度取られてしまったら帰ってこないが、制裁は解除してもまたかけなおすということで使える」とおっしゃっていまして、少しほっとしました。 

中山 私が参加したのは2002年ですが、安倍総理は家族会結成の頃から被害者に対して非常に暖かい目で対応してくださった。何としても取り戻すとの強い意思をお持ちだということは、私は側でおつかえしてよく分かって、強くそれを感じていますので安倍総理を信じています。西岡先生もそうだと思いますが、それと事務方の動きがしっくりせず、ちょっと違っているかなという心配があります。 

西岡 制裁を先に解除してしまったという部分についてですが、最初私は北朝鮮の船が入ってくることを許したこと、人道物資を持っていくことが前提で万景峰号はだめということですが、しかし人道物資ということで朝鮮総連がお米などを大量に買って北朝鮮に持っていくことが起きるのではないかと心配しました。 

 1995年のことをすぐ思い出しました。当時加藤紘一自民党幹事長が主導して、50万トンの食糧支援をしたんです。その時実は3年くらい経っている古古米を出した。倉庫代がかかるということで、日本としても経済的にプラスになるようなことを人道支援としてやりました。そして、「運送費もかからない。北朝鮮から船が来るんだ」と。 

 北朝鮮の船が日本の港に来て古古米を積んでいってしまったんです。どこの誰に配ったのはモニタリングしなかった。それで日本からの米を中国に売ったのではないかという転売疑惑が起きました。とにかく分からないわけです。 

 人道支援をする場合は、モニタリングが絶対必要なわけです。今回は貨物船が来るということで聞いてみたのですが、そういうことはしていないそうです。個人が個人に送るもの、そういう人道物資の運搬だけを許しているということでした。セーターなら何枚ということになっています、という説明を受けました。 

 ではコメは何トンならいいのかという規準について決まっていると聞いていますが、公開されていません。そういう心配なところはありますが、今の所北朝鮮の船は来ていない。つまり実際に北朝鮮に何も物は運ばれていない。これを北朝鮮がだまされたと思っているのかよく分からないのですが、解除したのに船が来ていないということは、彼らに実質的な利益はまだいっていない。 

 あとは朝鮮総連の幹部が北朝鮮に行けるようになった。9月9日(の行事のため)に許宗萬(ホ・ジョンマン)議長が行くようですが、それが唯一のプラスです。  

 万景峰号を含めて人道支援物資を認めようとした2008年の福田(康夫)政権の時よりはましとは思っていますがどうでしょうか。あの時は中にいらっしゃいましたよね。  

被害者解放の証なしで人道支援をする可能性がある

中山 今回の合意文書で、日本側の措置として7番目に、「人道的見地から、適切な時期に北朝鮮に対する人道支援を実施することを検討することとした」と。非常に回りくどい言い方ですが、「人道支援はいつでもやれますよ」と。何も拘束や制限がなく、いつでもやれる。 

 逆の説明では、「そう書いておけばやらなくていいんだ」というのもありますが、今回これが入っているということは、どこかでまた交渉を続けるに当たって、決断させるためではなく、交渉を継続させるために人道支援を行うことも使えますということを宣言しているのであろうと読めます。 

 これは、人道支援をするのであれば、北朝鮮側がきちんと拉致被害者を解放するという証をとってからしてほしいということをみんなで監視してほしいんです。 

 アメリカは人道支援をしたりしています。私たちも本当に困っているのであれば人道支援はしたいと普通に思いますが、なぜこれまで人道支援を止めたかと言えば、これは西岡先生の説明の方がいいかもしれませんが、横田めぐみさん骨といわれて差し出されたものが全く違っていた。 

 人の道に反することまでして、1200度で焼いて出してきたことがどれほどむごいことなのかということをみんなで感じて、もう人道支援は止めましょうということにした制裁措置ですので、そこはしっかりと政府の動きを見ていただきたいと思っています。 

残留孤児帰国で「人道支援」の危険性も 

西岡 今回北朝鮮がいつ報告を出してくるかまだ分からないのですが、北遺族会が15日から、墓参のため平壌を訪問することを決めました。一度、日朝合意ができたのだから墓参はしないと言っていたのですが、やることになった。そしてテレビカメラなどがたくさん付いていくようです。 

 一部流れている情報によると、残留日本人孤児が出てくるのではないかと言われています。残留孤児は、親が連れて帰ることができなくて、北朝鮮の親に育てていただいたという北朝鮮が大変人道的立場に立てる問題です。 

 拉致問題で成果がない中で、北朝鮮が人道的なことをするかもしれない。その場合、「人道的見地から、適切な時期に北朝鮮に対する人道支援を実施することを検討する」という文章をどう考えるのか。 

 先ほどの中山先生の説明を補足しますと、2004年に、5人の被害者の家族を小泉総理が取り戻した時に、25万トンの食糧支援の約束をしたんです。そして12万5千トンは実施したんです。そして、8人とそれ以外の方々の再調査の結果を待っていたんですが、その結果があまりにひどかったので、残りの12万5千トンは、約束したものさえ止めたんです。  

 約束したものさえ止めたほど北朝鮮が非人道的なことをしたというのが日本の今のスタンスですから、残留孤児の人たちが出てきて、日本に帰ることができるというのは非常にいいこと、歓迎すべきことだと思いますが、そのことで食糧支援が再開されると、国際社会は、「日本は横田めぐみさんの骨が偽物だったという主張を降ろしたのか、『ネイチャー』という雑誌で批判されたので降ろしたのか」と思われる危険性がある。  

 止めた理由が偽の死亡診断書などで偽の遺骨さえ出てきた、そこまで非人道的なことをやっているから人道支援さえできないんですよと国際社会に言っていたのに、それも約束したものさえ止めているのに、別のことで動いてしまうとそういう危険性がある。 

 この合意文書の危険性を私たちは分かっておいて、いつ政府が人道的な見地から人道支援を実施しようとするのか、拉致被害者全員が帰ってくるというめどがたつのでなければ、この第7項目を実行させてはならないということをまず確認しておきたいと思います。 

国交正常化したら被害者は帰ってこない 

中山 ちょっと話が元に戻るかもしれませんが、当時、国交正常化をするのであれば、日本という国家として、自国の国民が拉致されて監禁状態に置かれているのに、それを放置したまま国交正常化をするというのは、国家としてやってはいけないことです。 

 ただその時に、「国交正常化をすれば人の行き来が多くなるわけですから、情報も入ってくるし、拉致被害者にとってもよい結果が出る」というようなことを言われたことがあります。 

 私自身は、北朝鮮の動きを見ていて、国交正常化してしまったら日本から色んな支援が入っていく中で、拉致被害者がいましたと言ってわざわざ出してくることはありえないことだと思います。「被害者はいません」という形が作られる可能性が強いと思いましたので、国交正常化をして人の行き来が多くなれば被害者が帰ってくるというのは幻想にすぎないと考えて、被害者が救出された後に国交正常化を進めることの方が普通のことのように思いました(拍手)。 

西岡 帰国された被害者の方から話を聞いたことがあります。金丸訪朝の後、国交正常化交渉が始まった。その時大変不安だった、ということです。「国交正常化されてしまったら自分たちは平壌にいられらくなる。山奥に隔離されるだろうと思っていた」と。 

 つまり、北朝鮮に住んでいる人たちの実感からすれば、国交正常化すれば、今中山先生がおっしゃったことを感じているわけですね。 

国交正常化すれば拉致情報が出てくるというのは幻想 

中山 当時その考え方というのが、国交正常化してから拉致被害者が出てくるという考えですが、それはありえませんと言いました。当時小泉総理が「拉致問題の解決なくして国交正常化なし」とよく発言してくださいました。 

 拉致問題の解決にも色々な解決がありますので、どういう意味にとるかはそれぞれの部署によって違ったかもしれませんが、いずれにしても「拉致問題の解決なくして国交正常化なし」というフレーズを繰り返し言ってくださいました。 

 その後、この考え方はすーっと消えてしまい、安倍政権では総理は当然のこととしてお考えになっているということですから、言わずもがなという雰囲気であろうかと思いますが、私は大臣の皆様にはこれを繰り返し言ってくださいとお願いしています。  

 拉致被害者が監禁された状態に置かれているのに国交正常化するということ、国交正常化してしまえばすべてが消えてしまうという非常に危険な可能性があるということを考えれば、このフレーズを多くの皆様にも言っていただきたいと思います。  

 拉致被害者全員が救出される、帰国することが前提条件なんだということを繰り返し伝えていかなければいけないと思います。私もそのつもりですし、皆様にもそのことをお伝えいただきたい。やはり言ってないと、国交正常化を先に進めてもいいと考える方々が増えてきますので。  

 西岡 イギリスは国交正常化して、平壌に大使館があります。平壌にいるイギリス大使が時々東京に来るんですが、「平壌にいたら北朝鮮のことが分からない」と。イギリスは拉致問題に大変同情的ですから、ある時イギリス大使館が家族会・救う会を呼んでくださって、平壌駐在の大使と懇談の機会を作ってくださいました。  

 その時、「自分たちは外交の場では拉致を含む人権問題をいつも北朝鮮に提起しているが返事は全くない」と言っていました。そして、「どこに行くにも監視がついている。北朝鮮の住民の普通の生活を見ることはできない。北朝鮮の政治状況は平壌では分からない。東京の方が情報がある」と言っていました。  

 国交正常化しても、そういう日本の大使がいるということだけなのです。そういう中で情報が出てくるだろうというのは全くの幻想だと私も思います。 

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■救う会全国協議会ニュース
発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)
TEL 03-3946-5780 FAX 03-3946-5784  http://www.sukuukai.jp
担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
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