TPP、傍観すれば置き去り=日米同盟「たが締める」―駐米大使
【ワシントン時事】佐々江賢一郎駐米大使は27日、着任後初の記者会見を行った。環太平洋連携協定(TPP)交渉への参加問題について、大使は「日本が傍観してアジア太平洋地域の経済秩序が形成されていくことの戦略的な問題は認識すべきだ」と述べ、参加の判断が遅れれば日本は置き去りになるとの認識を示した。
また、TPP参加をめぐり日本の与野党に反対論が根強いことに関し、「日米両国が(経済的な秩序づくりに)リーダーシップを発揮していく観点から、政治的なバックアップを得たい」と強調。参加の方向で早期に意見がまとまることに期待感を表明した。
12月16日投開票の衆院選後の日米関係については、「日米同盟はいかなる政治の情勢変化によっても変わらないし、変わるべきでない」と指摘。「この何年か沖縄の問題でさざ波があったが、ここでもう一度たがを締めて前進させるように努力したい」と述べた。
[時事通信社]
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この人は日本の大使か、米国の大使わからない。アジア太平洋地域の経済秩序が米国主導で形成されていくTPPは、日本が無条件で賛成できない問題を抱えている。日米同盟は変わらない、変えてはいけないものだろうか。日米だけで世界が動いているのではない。
「沖縄の問題でさざ波」があったとらえる卑屈な人物が対等な日米同盟を構築するために動くことはないであろう。中国嫌いであっても米国に媚びることなく、米国嫌いであっても中国に媚びず日本国の特命全権大使として冷徹な目を持って米国に臨むべきである。
米国の公正を信じることが出来るか、これが問題の根本
TPPの大きな問題は、ISD条項(投資家と国家間の紛争条項)である。紛争の際、これを裁くのが世界銀行傘下の国際投資紛争解決センターとなっている。紛争の判決を下すのはセンターの仲裁人であるが、審理は非公開であり、一度下った判定に不服の申し立てはできない。世界銀行は米国政府と深い関係にある国際金融援助団体である。同行は第二次大戦後、米国のイニシアティブで誕生した。誕生以来、最も出資金の多い国は米国であり、トップの総裁人事も歴代の米国の財務省長官が任命する慣わしになっている。これまで一人の例外もなく、総裁はすべて米国人である。
オバマ政権は貿易を通じた経済再建に必死であり、TPPについてはモンサントなど米国グローバル企業の関係者がオバマ政権に入り米国企業に有利な方向な条件下で交渉をまとめるべく参画している。
仮に日本がTPPに参加し、米国企業との間に紛争が起きた場合、解決は米国政府がカネもヒトも独占している世界銀行傘下の調停機関(投資紛争解決センター)に持ち込まれ、審理は非公開のまま、「判決」が下され、一方的にそれに拘束されることになる。公平な裁定が下される保証はない。 問題の根本は、米国の“公正”を信じることが出来るかということである。
世界経済は米中の「G2」、世銀では日本より中国重視である
ブッシュ政権末期、当時のポールソン財務長官は中国政府に対して「米中経済対話」機関の設立を提唱し、米中経済“同盟”関係を築きつつ、同時に、財務省の影響下にある世界銀行においても、中国と良好な関係を樹立せんとして、ゼーリック・林体制を誕生させた。
以来、中国は世銀に対して出資を本格化し、借りる側」から「貸す側」に立場を代え、行内でその発言力を強めつつある。それに対し日本の影響力は低下しつつある。最近までは米国と並ぶ財政的影響力を誇っていた日本だが、近年は出資額も半減し、発言力は低下している。
日本が米国とのFTAを結んでいないから米国との間に紛争が発生しなかった。構造改革要望書に沿って米国の要求を受け入れてきたため、世界銀行の下部団体に問題の処理を依頼する必要がなかっただけだ。日本がTPPに参加すれば、米国企業は日本の不当な商習慣を世界銀行下の「裁判所」に訴える。ここで公平な裁定が行われる保証はない。軍事的には一応“同盟”関係にあるが、経済の分野では日本が日露戦争に勝利して以来、“敵国”関係、もしくはそれに近いに状況にあった。これが事実のすべてである。米国に提供する思いやり予算は年間、約2千億円、TPP参加によって得られる日本側の利益はどのくらいなのか。これが日米同盟の実態は、このようなものだ。醒めた見方が必要である。
(参照)防衛予算案 自国の予算を削減し、米軍経費の肩代わりを借金財政で賄う狂気、これが主権国家の国防予算か! 2011-12-29 21:33:21
米国の狙いは、日本の囲い込み、対中包囲網の構築か
2011年11月11日、野田首相がTPP交渉参加の記者会見をしたが、その時間帯にキッシンジャーが首相官邸に来ていた。野田首相から交渉参加を伝えられたキッシンジャーは「米国は日本の交渉参加を求めていた。喜ばしいことだ」と評価した。
首相との会談の席にはフジテレビの日枝久、長島明久が加わっていた。日枝とデイビット・ロックフェラーとは盟友である。キッシンジャーは老齢のロックフェラーの名代として来日したことがわかる。このつきの8日にはリチャード・アミテージやジョセフ・ナイ、マイケル・グリーンら米戦略国際問題研究所(CSIS)の対日震災復興タスクフォースのメンバーが来日し日経主催のシンポジウムに参加している。
11月11日、野田首相は民主党の山田正彦議員や自民党議員からTPPに関する無知を指摘され、追い詰められていた。閣議がごたごたしていた。キッシンジャーはい午後6時過ぎに一度やってきて、官邸内をうろつき歩いて閣僚にロックフェラー家の名代であることを見せつけていた。そして記者会見後の午後8時45分、再度、官邸に訪れ上記の会話をかわした。
この時期、ヨーロッパでは、ユーロ経済が危機的状況に陥っていた。米国も11月23日までには超党派の委員会が連邦債務削減の方針を決めなければ、軍事予算を含める予算の2013年からの一律カットにおいこまれていくという状況にあった。
これに先立つ10月17日、キッシンジャーは米中関係全国委員会設立45周年晩餐会で「世界経済が落ち込み、米国経済も回復力を欠く中、米中はさらなる協力を深め、相互信頼を強化し、難局をともに克服すべきだ」(2011年10月20日14時19分(「新華網」)と述べている。
キッシンジャーは世界経済が不透明を深める中、米中の連携が重要であるからと、中国による米国債の買いによる欧州経済へのてこ入れを期待した。しかし中国は欧州支援に同意しなかった。そこで、キッシンジャーは欧州や米国からの経済危機の発生による景気悪化に対応するため日本や東南アジアを経済ブロックに取り込むことをはじめた。それがTPPの持つ一面である。日本がTPPに加盟すれば米国企業の輸出や商売相手を増やし、日本政府に米国債を買わせるための圧力を加えることが可能になる。
2012年11月29日(木曜日)読売新聞朝刊4面
また、リチャード・アミテージやジョセフ・ナイ、マイケル・グリーンらは、キッシンジャーとは中国に対する考え方が違い、中国を包囲する一環としてTPPを位置づけている。前原誠司や長島昭久らかれらの走狗となって動いている。ヒラリーがミャンマーを訪問し、政府関係者やスーチー女史と会った。米国の戦略はミヤンマーをインドと東南アジア各国の橋渡しとして育て、中国包囲網を構築することである。
TPPは日本が中国との対立を深める路となる側面を持っている。要は「日本は中国と一緒にやるのか、米国と一緒にやるのか」である。マスコミも経済界もTPP参加を煽っている。