入院したその日、大部屋ではいろんな話が聞けました。
それでは、どうぞ!
長老みたいな老人は、心臓の病気とは長く付き合っているらしく、ものすごく詳しい方でした。
3回も大きな手術をしたそうで、まだ、最先端の医療が無い頃からだったそうです。
入院も多くて、患者さんたちとのコミュニケーションも慣れていらっしゃいました。
年は70歳くらいだったでしょう。しかし、すごく若く感じられました。
サバサバとした性格で、人生の達人でした。
コンビニの経営者の方は、年は、50代前半くらいで、ビルを持っているお金持ちでした。
2,3件コンビニを経営しているそうで、性格は明るく大らかな人でした。
コンビニの経営者は、老人によく質問をしていました。
「開胸手術はどのくらい時間がかかると?」
老人は、
「2時間はかからんめーや。ほら、生身の肉体ば開いたままにしたら腐るけん、すぐに、閉めんしゃーよ。」
コンビニ経営者は、
「やっぱー、痛かっちゃろーねー。」
老人は、
「痛かたーなー、手術の終わって麻酔の切れたときたい。手術中なー全身麻酔やけん。」
「今は、心臓の医学は発達しとうけん、そえん心配なーせんで良かばい。」
と言っていました。
それを聞いてコンビニ経営者さんは、安心しているようでした。
この老人は、私達のように初めて手術するものに優しくいろんな事を教えてくれました。
私は、高額医療の払い戻しの仕方を教えてもらいました。有難かったです。
コンビニ経営者さんは、私の前の日に手術でした。
私が入院して次の日の朝、手術の準備です。
手術の為に、チン○に管を通します。看護婦さんに連れられて管を通して帰って来られた時、コンビニの経営者さんは、
「痛かったー、この世の痛みやないばい。」
と笑って帰ってきました。
老人は、
「それは、痛か。俺でっちゃー痛かばい。」
と笑って迎えました。
私も、
「それが、嫌なんですよねー。管を通すのが。」
コンビニ経営者さんは、
「俺が、医者や医学者やったら、こえん痛いとばさせんで、別な方法ば発明するばい!」
と笑いながら言っていました。私も同感です。
笑いながら話していた傍で、奥さんがひっそりと寄り添っていました。
奥さんは、神妙な面持ちで私達とは、最初は話しませんでしたが、
すかさず老人が、
「手術ばしてから、2,3日が付き添いが大変やろうばってんが、うんうん唸るけんな。」
「日頃、嫌な事やらあったとやったら、なーんもしちゃらんどきゃー良かばい。」
と笑って言いました。それを聞いて奥さんも爆笑し、部屋の中も明るくなりました。
奥さんは、
「大体、この人ったら暴飲暴食で、お酒もタバコも人の3倍くらい飲みんしゃーとですよ。」
「家族の事やら考えんで、夜通し飲み歩いたり。もーたいがい年なのに、私の言う事やら、いっちょん聞いちゃんしゃれんとですよ。」
と老人に相談し始めた頃、看護婦さん数人がベッドに来て、
「○○さん、手術の時間です。」
と呼びにきました。コンビニ経営者さんは、手術に向かいました。
老人は、
「なー○○さん、またこの部屋に戻って来なーばい。」
私は、
「○○さん、頑張ってくださいね。」
コンビニ経営者さんは、
「うんー!頑張って来るよ。退院してモツ鍋ば食わなーいかんけんねー!」
と笑いながら部屋を出て行きました。
コンビニ経営者さんが、部屋を出ていった後、老人は、
「この部屋に戻って来るとは4,5日後やろー。」
とポツリと言いました。私は
「大丈夫ですかねー?○○さんは?」
と聞くと、老人は、
「大丈夫ばい。ここの先生は凄い先生やけん。」
とハッキリと言いました。
それを聞いて、私も明日の手術に勇気が沸きました。
・・・つづく