啓はもう調子づいて、あの曲の続いている錯覚に任せながら・・・ 2016-05-21 07:37:06 | 小説 啓はもう調子づいて、あの曲の続いている錯覚に任せながら、「きっと春には御堂筋で和子さんに、げんげの花冠を贈ろう」と無邪気にも口走った。だが和子はげんげの花冠よりはどうやら初めて呼ばれた名の方に、感激していた。なぜならそのすぐ後、和子はこだわりがない調子で、「げんげ、て何の花?」と言うものだった。 (「南幻想曲」つづく)