ぼくはぼくはと主張の強い若者を前に、クモは劇場という得手の場が手伝った、唐突に、
「それにふりすててゆこうとは、やりゃしませんぬぞ、手にかけて。殺しておいてゆかせんな」
とでてやった。しかし何のこともなさそうな若者で、それはクモの姪とよく釣りあっていたのかも知れない。とそんな思いを抱いているうち、クモはどうやら日ごろの憂さや気難しさが薄らいだ。劇場、そのロビーには雰囲気的なクモの生態にかかわる何かが漂うらしい。が若者はさらに熱っぽく装っていった。
(つづく)
「それにふりすててゆこうとは、やりゃしませんぬぞ、手にかけて。殺しておいてゆかせんな」
とでてやった。しかし何のこともなさそうな若者で、それはクモの姪とよく釣りあっていたのかも知れない。とそんな思いを抱いているうち、クモはどうやら日ごろの憂さや気難しさが薄らいだ。劇場、そのロビーには雰囲気的なクモの生態にかかわる何かが漂うらしい。が若者はさらに熱っぽく装っていった。
(つづく)