スラブ軌道は全国で採用されているメジャーな軌道ですが、分岐器の採用例は限られます。なぜなら番数や線形により専用の軌道スラブを設置する必要があり、軌道狂いが生じたときの保守が大変といった要因があるからです。そのため後年は合成まくらぎ直結軌道を用いるケースが多くなりました。
というわけで全国各地のスラブ軌道分岐器を集めてみました。今回は在来線と私鉄に絞ります。
まずは北海道の千歳線千歳から
片開き分岐多数と両渡り線が駅の前後に設置されています。
札幌もスラブ軌道ですが、分岐器は合成まくらぎ直結軌道が採用されています。
ここから一気に南下して湖西線の近江舞子で発見。合計4台を確認しました。
まず敦賀方の分岐で2台を確認。内側の副本線は駅構内がバラスト軌道になっています。
上のスラブ分岐を横から。分岐部の両脇に並ぶ箱は温風式電気融雪機と思われます。
3台目は4番のりばを出発してすぐにありますが、分岐側のレールが撤去されています。
軌道スラブを撤去するのは大変なため上物だけで済ませているのでしょうね。
同じく湖西線の大津京にもありました。こちらは敦賀方の2台のみでした。
近江舞子とは反対で主本線が内側2線のため、外側の副本線がバラスト軌道になっています。
湖西線に乗ってみるといかに高規格な路線であるかを実感しますね。
大津京まで南下すると降雪が少ないのか、融雪器は設置されていませんでした。
嵯峨野線京都-丹波口間では、貨物用の山陰連絡線との合流地点に片渡り線が設置されています。
元々シーサスが設置されていたようですが、嵯峨野線の複線化に伴い片方が撤去されました。
また、先日オープンした京都鉄道博物館の最寄駅をこの付近に設置することが決定しており、今年度から工事を着工する予定です。山陰連絡線は今年の2月末に廃止済みなのでこの分岐器も見納めと思われます。
2017年、ついに渡り線としての機能が失われてしまいました。
連絡線の軌道も撤去工事が進んでおり、京都からデルタ線の一部が消滅することになります。
私鉄でスラブ軌道分岐器を採用している会社は今のところ阪神電鉄しか確認しておりません。
ひょっとしたら地下鉄なんかでも採用実績があるのかもしれませんが、確認出来ないので…
尼崎センタープール前に片開き分岐器が合計6台設置されていました。
元町方にはシングルクロスが備わります。さすがに複分岐ではありませんでした。
通常は軌道センターにある円形突起を両脇に並べ、軌道スラブを横向きに固定している点が他の場所と異なります。また通常の区間は締結装置の取り付け部が盛り上がった軌道スラブを用いているのに対し、分岐器周辺の軌道スラブは締結装置周りがフラットになっている点も注目。
最近になって播但線にもスラブ分岐器があることを発見しました。
播但線の姫路~野里間は姫路駅の高架化よりずっと古い1984年に高架化されています。
姫路を出発して左へカーブしていくと弾性枕木直結軌道から合成まくらぎ直結軌道、バラスト軌道を経てスラブ軌道になります。このバラスト軌道と合成まくらぎ直結軌道の区間が敷設時期の異なる高架橋の接続部になります。
京口の分岐器は尼崎センタープール前と同様に円形突起を横にして支持するタイプです。
加えて他の線区にはないY字分岐器(両開き)です。寺前方もスラブ分岐器でした。
隣の野里にもY字スラブ分岐が採用されています。
単線高架区間でスラブ軌道分岐器が採用されているとは思わず、昨年になって発見した次第です。
軌道スラブの幅は6種類あり締結装置の位置を変えることで対応しています。
突起は路盤コンクリートに成型されているため、片開きに改造するのは大変そうです。
横向きタイプは九州の姪浜にもありました。武骨なシーサスが3台並ぶ構内は圧巻の一言です。
真ん中の2線は福岡市地下鉄の姪浜車両基地へ向かう線路になります。
尼崎センタープール前と同じ円形突起が横に並ぶタイプですが軌間が異なるので専用品でしょう
中央部にある突起は2枚の軌道スラブの固定を兼ねているため径が大きくなっています。
福岡空港方には安全側線も確認できます。千歳や湖西線、山陰連絡線、播但線がそうであるように、1970年~80年代前後に高架化した区間で採用例が多いようです。
最後に鉄道総研の日野土木実験所にあるスラブ軌道分岐器の試験軌道を紹介します。
この分岐器は50Nレールの12番分岐器で1969年に敷設されました。
また手動転轍機のスラブ軌道分岐器は恐らくここだけでしょう。
営業線の分岐器と異なり、リードレール以外の軌道スラブが縦割りになっている点が特徴的です。
ここ以外では縦割りタイプを見たことありませんので試験要素が高そうです。恐らく軌道狂いが生じた際に修正しやすいよう分割したものと思いますが、そもそも分割しない方が狂いにくいような気もします。
近くにはバラストレス軌道と思われる分岐器も設置されていました。バラストレス軌道はバラスト軌道の周囲に型枠を作り、その中に急硬性のモルタルを流し込んでプレパックドコンクリート道床とするものです。
スラブ軌道と同じく省力化を売りにしており、バラスト軌道の置き換えが期待されています。
まくらぎがはみ出しているのも何か実験的な理由がありそうです。
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2017/11/12 加筆修正 (近江舞子、大津京、京都-丹波口の写真追加)
高架橋の距離は約440mで途中約300mがスラブ軌道。(ヤフー地図の距離計測を使用)
高架化時期は1980年頃と推定。
理由として、桜井線が電化したのが1980年、橿原バイパス開通が1983年。(バイパスの事業化は1972年。)
以上。
情報ありがとうございます。
桜井線と紀勢本線のスラブ軌道についてはお盆休みに調査予定です。