エッセイ 地震
凄い揺れだ、地震、一瞬冗談でしょうと思った。
こんなに揺れる地震に遇った事がない。
教室の友達と顔を見合す。
椅子から立ち上がったが再度の揺れに机にしがみつく。
もう終わるかと思ったが、大きな揺れが際限なく続く。
隣の列の友達が机の下に身を屈めている。
見渡すと何人かがそうしている、初めて「地震の時は机の下に」と言うことを思い出した。
誰かが入り口のドアーを開けたが、直ぐに閉まってしまう。
「椅子をはさんで」と言おうとしたが言葉が出ない。
そうだ、逃げる時のことを考えなくてはいけない、上着に袖を通した。
事務所の女性が直ぐに来た。
「宮城県の方で大きな地震が起きました、こちらは震源地ではないので、慎重に」と言ったことで我に返る。
普段からこういう時の訓練をしているのだろうが、落ち着いた説明と対応に、慌てふためいた自分が恥ずかしい。
先生が「お家の方たちもご心配でしょう、今日はこれまでに」と言ったことで、解散になる。
8階に降りると、書店の本が沢山床に落ち、散らばっている。
床にうずくまっている人もいる。
大変な事が起きたのだ。
兎に角外に出たい、階段に行くと、前の方に、赤ちゃんを抱いたお母さんが、バギーを持っている。
「持ってあげるから貸して」と一緒に降り始めたが、がっちりしたバギーは重い。
自分の鞄を抱えながら後を追うが、足がもつれて弱音を吐きそうになる。
早足で降りる母親の肩で赤ちゃんの首が揺れる。
出口が見えた、追いついて、顔を見合わせた、若いお母さんだった。
「建物の中に居たほうがいいでしょうか」と言う。
「もうここまできたら表に出ちゃいましょう、食堂等で火が出れば、煙に巻かれたりすることもあるかもしれない」
何気ない日常に、こんな大きな地震に遇うとは思いもしなかった。
この後、被災地ではとんでもない事が起こっていた。
つつじのつぶやき ・・・ 5年前の3月11日金曜日午後、駅ビル9階でエッセイの講座
を受けていて地震にあいました。
その後の講座で、「このことをしっかり書いておきましょう」先生
からの提案があり、その時の作品です。
※ 2011年に一度発表しています)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます