寒い真冬の事だった
夜遅くに表玄関の戸を激しく叩く音で目が覚めた
幼かった私には真夜中と言う記憶がある
ドンドンと言う普通ではない異常なまでの音
父親が急いで玄関に行った
「おっちゃん開けて!」と小さな声が聞こえた
女性の声だ!
戸を開けると同時に転がり込んできたその人は
真冬なのにシミーズ(その頃はそんな名称だった)一枚で裸足だ!
恐る恐る障子の隙間から覗いていた私はびっくりした
あっ、このおばちゃん知ってる人や・・・
私からは、「おばちゃん」と言っても20代だと思われる
泣きながら父親に訴えるには
「あの人に殴られて蹴られて・・・髪の毛引っ張られて・・・」
と話しだした。
小さいながら彼女の状況は知っていた
彼女の言う「あの人」とは同棲中の彼氏である
彼氏・・・堂々たる893屋さん!
私が子供時代の昭和は暴力団ではなく任侠の世界???
彼氏と地元を(私はどこか知らないが)離れ
父親を頼って京都に逃避行だったようだ
単なる痴話喧嘩のようだが彼氏の対応は激しい
・・・怖い・・・
シミーズ一枚で逃げだすような恐怖だったのだろう
父親がどうして知り合ったのか???
893屋さんと知り合い???
波乱万丈の父親の人生では驚くことではなかったが