ウクレレとSwing(スヰング)音盤

The Cool Touch Of Ohta-San (1968)


拙稿の記念すべき一枚目は、ハワイが誇るウクレレのバーチュオーゾ、オータサンのハワイ州Surfside Recordsからのファースト・アルバム。プロデュースはDon McDiarmid,Jr。

このSurfside Recordsというのは、ハワイのHula Recordsが「ウクレレの神様」オータサンのレコードをリリースするために、わざわざ立ち上げた別レーベル、という事らしい。

オータサンのレコードデビューは、師匠でもあるエディ・カマエの紹介で実現したというビクターによる日本吹き込み盤(のちに両者合わせてコンピレーションCD化された)が最初で、アメリカ本土のDeccaや、ここに紹介するハワイ州のSurfside、日本でもビクターに加えてポリドール向けの吹き込みが続いたが、本アルバムにも収録された「Sushi / Little Tree」の先行シングル盤はハワイ州内マーケット向けのSurfside盤だけではなく、アメリカ本土向けのワーナー盤も中古市場にて多く流通している模様。

何はともあれ、このアルバムで面白いのは収録曲!

A1 Sukiyaki    
A2 Sayonara
A3 Sakura
A4 Tropical Lights
A5 Little Tree
A6 There Will Be A Tomorrow     

B1 Sushi  
B2 Walk With Me
B3 Look Up At The Stars
B4 Sunset
B5 Heartless Dream
B6 Hi Baby

このようにスキヤキやらスシやら適当な日本語が並ぶが、要は日本オリジナルの楽曲をハワイの日系奏者であるオータサンが得意のウクレレで料理しました、という趣向のアルバム。坂本九の「上を向いて歩こう」がアメリカでは「スキヤキ」なのは有名な話だが、他にも「There Will Be A Tomorrow」は今やダウンタウンはじめ吉本芸人の歌でも知られる「明日があるさ」だし、「Hi Baby」は昭和の大ヒット「こんにちわ赤ちゃん」、和製ハワイアンの「鈴懸の径」は「スシ」、「Look Up At Stars」が「見上げてごらん夜の星を」で「Sunset」は「夕焼け小焼け」、 という具合。はっきり言って良い曲ばかりであるが、緩急自在のアレンジで飽きさせない。

コンガ入りのラウンジ風コンボ演奏を従え、ラテンありスイングありのアレンジも往時のハワイ音楽シーンを想像させてくれるようで楽しい。ライブ感のあるバックの演奏は他アルバムに比べるとまだ素朴なもので、レコーディング・キャリア最初期にあったオータサンの溌剌とした若々しいウクレレ演奏が堪能できる。もし本作以前のプライベートな音源(90年代になってCDでリリースされた)「レジェンダリー・ウクレレ」でのオータサンが好きなら、きっと本盤の演奏はお気に召すに違いない。

なおジャケットの写真はハワイにあるという「かの有名なパゴダ・レストラン」の池の鯉、という事らしいのだがこのレストラン、ネットによると現存するようだが今も当時と同じ場所かどうかは不明。



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