ト音記号のような、不思議なジャケット写真は花火だろうか。引き続きハワイ・Surfside Recordsでのオータサン作品で、これが同レーベルからの二枚目。プロデューサーのDon McDiarmid,Jr.は、Hula Records(Surfisideの親会社)の社長であり、数多くのコンテンポラリー・ハワイ音楽作品を制作したハワイ音楽業界の大物。Hula Recordsの創業者は父親のDon McDiarmid,Sr.で、こちらも著名なハパ・ハオレ音楽の作曲家であり、楽団のリーダーだった。オータサンは60年代から70年代の長期にわたるSurfsideとの契約中に、(少なくとも)7枚のアルバムを発表している。その親会社であるHula Recordには、師匠であるエディ・カマエ(サンズ・オブ・ハワイ)も所属していた。
タイトルの通り、「弦楽オーケストラとオータサン」という趣向で制作されたアルバム。
まずは収録曲から見てみよう。
A1 The Girl From Ipanema
A2 Try To Remember
A3 Ma Belle
A4 Laras' Theme
A5 I Will Wait For You
A6 People
A2 Try To Remember
A3 Ma Belle
A4 Laras' Theme
A5 I Will Wait For You
A6 People
B1 Shadow Of Your Smile
B2 Yesterdays
B3 Days Of Wine And Roses
B4 Hawaii
B5 More
B6 Born Free
B2 Yesterdays
B3 Days Of Wine And Roses
B4 Hawaii
B5 More
B6 Born Free
一見してわかるように、前作が日本オリジナルの楽曲によるセレクションだったのに対し、ここでは60年代当時のポピュラー音楽の人気曲や映画音楽が選ばれた。なお「Yesterdays」は誤表記で、ビートルズのイエスタデイ(=sなしのほう)。「Ma Belle」は同じく「ミッシェル」。ただこうした誤表記は何故か盤面のレーベル上だけで、ジャケットには正しい曲名が載っており、まだおおらかな時代だった事が伺える。
選曲の変化に加えてこのアルバムで特筆すべきはアレンジャー、ディレクターとしてクレジットされるSeiji Hiraoka の参加で、ジャケット表面に大きく名前が表示されているところを見ても、本作の大きなセールスポイントでもあったに違いない。時代的に考えても、日本の著名ミュージシャン/作編曲家の平岡精二氏で間違いないだろうと思われるが、同氏とはその後も数枚のアルバムでコラボレーションが続く事になり、当時のハワイと日本の音楽業界の結びつきがどのようなものであったかも裏歴史がありそうで興味深い。なお録音はハワイで行われたとジャケット裏面にわざわざ表記されている。
日本の音楽業界から招いたプロのアレンジャー/ディレクター採用により、前作での素朴なウクレレ軽音楽/ラウンジ風コンボ演奏から、本作のサウンドは華麗なるストリングス・オーケストラを配したムード音楽へと大きく変化した。これがまた次作では大きくテイストが変わるところが面白い。時代の流行も柔軟に取り入れつつ、レコードを出すたびに次々と聞かせてくれる音楽的な新しい挑戦もまたオータサン作品の楽しみな聴きどころとなり、同時代のウクレレ奏者が誰も為しえなかったワン・アンド・オンリーの存在となった所以である。